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「あ!」
 少し離れたところでシャーロット・モリアーティ(しゃーろっと・もりあーてぃ)は、本を探していた。
 そして、その探していた本をたった今見つけたところだった。
「シャルまだか?」
 呂布 奉先(りょふ・ほうせん)アキレウスを前に困惑しているアゾート達の元へと走りよろうとしている最中だった。
「ありました! アキレウスについて書かれた本」
 シャーロットは本を音を立てながら急いでめくった。
「えっと……母手ティスは息子の――」
「まて、シャル。弱点だけを要約してくれ」
 呂布は小さくため息をつきながらシャーロットに頼んだ。
 シャーロットは、素早く本の中身を読むと、理解した。
「弱点はかかとです!」
 それを聞いた呂布は強く頷くと、アキレウスへと走り去っていった。
「白雪姫は、遠くから兵士達を頼めますか?」
「わかりました」
 身長10cm程度しかない、グリム童話 『白雪姫』(ぐりむどうわ・しらゆきひめ)は深く頷くと、
 ブリザードを兵士達に向けて放った。次々と兵士達が凍り付いていくのを見届けて、シャーロットは飛び込んだ。
「なんだ小娘達よ?」
 シャーロットと呂布を見ながらアキレウスは吐き捨てるように聞いてきた。
 シャーロットの周りでは、白雪姫の兵士達が、アキレウスの兵士達と闘っていた。
「ふん、お前の弱点はわかってんだ」
 呂布は少しの隙も見せないように、アキレウスのかかとに向かって則天去私で襲いかかった。
 だが、アキレウスはかすりもせず、あっという間に本棚の上へと逃げていた。
「なっなんだ!?」
 同時に、アキレウスの周りを白く強い光りが包み込み、視界を遮った。白雪姫の光術だった。
 シャーロットにとって、ここまで計画通りだった。
「これも、どうぞ!」
 準備していたファイナルレジェンドを本棚の上に向けて放つ。
 激しい音と共に光が消えたその後、そこにあったはずの本棚は綺麗に消えていた。
「倒せました!?」
「……まだのようだ」
 呂布は頭をかきながら、図書館の奥を見た。
「ええ……あれでもだめなんですか……」
「はーっはっは!! そんなのじゃ相手にならんな」
「なら、これはどうでしょう?」
 リュース・ティアーレ(りゅーす・てぃあーれ)は勇士の剣技を使い、アキレウスに斬りかかった。
「くっ! こざかしい!」
 三回連続による剣攻撃にアキレウスは一瞬ひるみながらも素早い足でよけきった。
(……レイ、あんなところに)
 アキレウスの後ろに一人の女の子、レイ・パグリアルーロ(れい・ぱぐりあるーろ)が顔に笑みを浮かべながらメモを取っていた。
 だが、リュースはそれが目に入らないようにアキレウスだけを見た。
「いきますよっ!」
 今度はバーストダッシュで踏み込み、勇士の剣技を再び当てようとするが、かかとには当たらなかった、
「ちっ」
「きゃああ、受けなのに攻めなんてやってますわ!」
 遠くからレイの声が聞こえる。
「んー、でもせっかくなら、受けは受けらしくやられてほしいわね。ねえ、リュース〜!」
 のんきな呼びかけが聞こえてくるが、無視することにする。
 答えればろくな事を言われるに違いない。
「あの人に、ホモ同人誌書かれても良いんですか、アキレウスさん?」
「なにを言ってるんだ、ホモ同人誌どころか同姓愛なんて昔から普通だっただろう?」
 アキレウスにとっては、何も問題がないようだった。
 しかし、リュースにとっては死活問題だった。
「このまま、本気で負けるともれなく、レイのハードな同人誌のネタに……それだけは嫌ですね」
 しかし、もう少し戦力が欲しいと、リュースは感じていた。
「アキレウスに押し倒されて、あんなこと、そんなこと――」
「レイ、妄想は口に出さず、静かにしていてください!」
 思わずリュースは叫んでしまったのだった。