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リアクション
★ ★ ★
「終わったようだな」
綺麗に白い灰となった着ぐるみたちを見て、緋桜ケイが言った。
本来なら、いろいろと燃えかすが残りそうだが、なぜか綺麗に全部燃え尽きている。この灰も、やがて風が全てさらっていってしまうのだろう。
「あれ? 何か綺麗になってません?」
ソア・ウェンボリスが、どこかしらつやつや新品になったような気がする雪国ベアにむかって訊ねた。確か、雪国ベアの着ぐるみはそれなりに年季が入っていた気がしたのだが。
「ふっ、気のせいだ。気にするな、御主人」
雪国ベアが、そう答えた。
他にも、ここに来ていたマティエ・エニュールや熊猫福やチムチム・リーやキャンディス・ブルーバーグの着ぐるみがつやつやになっているような気がする。他の者たちの着ぐるみは変化していないのにだ。
「やはり、しきたりを知らないか、何かが混じっていたのでは……」
それを見た墓守のシーツお化けがつぶやいたとき……。
「隙あり。中の人を見せるのだ!」
ずっと隙をうかがっていた尼伏賢志郎が、一瞬の早業でシーツをめくりあげた。
あわや、ついに中の人の正体がと思われたのも束の間。シーツの中には何もいなかった。ただ、舞い上げられたシーツだけが、宙を舞ってポトンと地面に落ちた。
「どういうことなのだ?」
犬の着ぐるみの中で、狐につままれたような顔で、尼伏賢志郎がつぶやいた。
『さあ、しばらくその姿で考えてみるといいかもしれないね。世の中には、触れてはいけないこともあるのよ』
ふわりと、風が吹き、巫女の玉串の擦れあうような音が聞こえた。
この日からしばらく、尼伏賢志郎の着ぐるみは呪われて脱げなかったそうである。
後日譚
後日、国頭武尊の撮ったドキュメンタリービデオが国頭書院から販売されたが、売れたわりにはやはりモキュメンタリーとしてしか人々に認識されなかった。特に、唐突に画像が乱れて終わるエンドシーンは、演出か撮影ミスかで物議をかもすことになる。
この映像で興味を持ったり、追跡調査でゆる族の墓場のあった場所を訊ねた者も少なくはなかったのだが、誰もその場所に辿り着くことはできなかった。いや、確かにその座標には行くことができたのだが、琥珀の森も、お焚き上げの跡も、そんな物はどこにもなかったのである。
ゆる族の墓場は、忽然とその位置を変えてしまったのだ。
再びゆる族の墓場が人々の前に現れるのはいつのことだろうか。ゆる族たちは、黙してそのことは語らなかった……。
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担当マスターより
▼担当マスター
篠崎砂美
▼マスターコメント
無事、古い着ぐるみたちは供養されて天へと還っていったようです。それとも、ナラカへと帰っていったのでしょうか。
なんだか、参加してゆる族たちの着ぐるみはリフレッシュしてつやつやになったようですが、何かあったのでしょうか。もっとも、何も知らないゆる族たちの着ぐるみは以前のままだったようですが。
いろいろと、変な着ぐるみが出て来たり、変なところで被ったりして、面白いことになりました。なんだか、着ぐるみが癖になりそうな人もいそうですが。
ちなみに、奈落人が着ぐるみに憑依できたのは、今回だけのイレギュラーですから、本来は生き物以外には憑依できないので御注意を。