リアクション
ようやく話が出来る姿勢が出来る。
「ねぇ、なんでライラがここに居るか気になるんだよね?」
「あぁ……。ライラはみんなを裏切って蛮族の方についたんじゃ」
「えっとね……」
芭柘美はチラリとライラを見るが、ライラは口を開かない。
なにも話せないライラに変わり、芭柘美は先ほど聞いたライラの事情を説明した。足りない言葉は北都や昶が付け足していく。
◇ ◇ ◇
大まかに説明をし終える芭柘美。
「だからね、ライラは本当に蛮族の方へついた訳じゃなかったんだよ」
「そう、なのか?」
フェリクスは縋るようにライラを見る。
「彼女たちが言った事は事実よ。私はフェリクスに外の世界を見せたかったの。……ごめんなさい、彼方に深い傷を与えてしまって」
「なら、なぜそれを俺に言ってくれなかったんだ」
「叶わない事を言う程、悲しくて、虚しいことはないわよ」
伏し目がちになるライラ。
「……フェリクス」
「なんだ?」
「もうここに縛られることはないのよ? これから好きな所へ好きなだけ行くことが出来るの」
「……俺が滅ぼしてしまったからな」
「違うわ。私が崩落の引き金を引いてしまったの」
お互いに後悔し、自分が悪いのだと言い合う二人。
「裏切られて悲しい気持ちがあるのも本当。それで暴れてたくさんの人を巻き込むのは良くない事。でも、ライラさんだって相手を思っての事でも傷つけるのはいけない事」
薫が話す言葉に耳を傾ける二人。
「いけない事はいけない事だってわかるよねぇ?」
「あぁ」
「えぇ」
「それを後悔する気持ちは大事だよ? でもね、それをずっと引きずったままでもダメだと我は思うなぁ」
「そうだね。お互いに傷つけあってしまったけど、今はそれを理解し合えたんじゃない?」
薫の言葉を引き継いで芭柘美がそう聞く。
「そうだな……あのままじゃ俺はずっと悲しみと混乱の最中にいることだっただろう」
「私はあなたたちに逢わなければ、ずっと裏切り者としてフェリクスを守っていたわね」
「もう二人とも苦しまなくていんだよ。一緒に外へ出よう?」
芭柘美たちは洞窟の入り口で二人を誘う。
「……フェリクス」
「なんだ?」
「本当の事が言えて良かったわ。……あなたたちもきっかけをくれてありがとう」
ライラは満足げに微笑みながら消えていく。ライラがいた場所には一輪の椿が落ちていた。
―――フェリクスをよろしくね。
「ライラ?」
「なんで……一緒に外を見ようって言ってたのに」
「たぶん、封印が解かれた事で、守る必要が無くなったから……」
「まさか、消えるのを分かっていて封印を解いたのか?」
「うん……。アニスは誤解されながら一生生きているよりも幸せだったと思うな」
アニスと和輝のやり取りを静かに聞く面々。
辺りはしんみりとした空気に包まれる。
「あの……」
「クエスティーナ、どうしたの?」
「ライラさんや集落のみんなのお墓を立てましょうよ」
「お墓?」
「えぇ。私、これからを生きる彼の為にも……集落のみんなの為にも鎮魂歌を捧げたいの」
クエスティーナの発案で芭柘美たちはお墓を立てることにした。
フェリクスの案内で集落があった場所へ向かう為、洞窟を後にする面々。