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リアクション
ページ6
6−1
地図の通りの場所にコントロールルームはあった。
出入口や周辺の通路に警備する者の姿もない。
あなたと蒼也は
コントロールルームに入る→7−8
6−2
急に仙 桃(しゃん・たお)が歩速をはやめた。
「こっちだな」
「だから、まだきみには僕がどこへ行きたいのか言っていないだろう」
「俺も聞いていないしな」
「だよ」
「ついたぞ。これがクロ子だ」
仙 桃(しゃん・たお)は足を止め、廊下の突き当りの壁にむかい、しゃがみ込んでいる少女をあなたに紹介する。
少女は一人で泣いていたらしい。
「く、クロ子と呼ぶなといっているであろう!
仙 桃(しゃん・たお)。
探したぞっ。
去年の八月くらいに家をでてから、もうそろそろ一年になろうとしているのに、こんなところでいつまでもなにをしているのだ」
少女は立ち上がると、同時に手の甲で涙を払い、仙 桃(しゃん・たお)を怒鳴りつけた。
「仙 桃(しゃん・たお)の隣にいるおまえは誰なのだ。
自分は、クロシェット・レーゲンボーゲン(くろしぇっと・れーげんぼーげん)。
仙 桃(しゃん・たお)とベスのパートナーなのだ。二人には発信機をつけてあるので、ここに探しくるのは、ラクショーでまったく苦労しなかったのだよ」
腰に手をあて、クロシェットは誇らしげなポーズをとる。
(この子、つい、さっきまでしゃがんで泣いていたはずだよな)
「じゃぁ、クロ子が泣いていたのは、俺やベスになかなか会えないからでなく、各ブロックが不規則に入れ替わるコリィベルの構造やどこからか聞こえてくる奇怪な声や足音が怖かったからなんだねぇ。
俺がクロ子を見つけられたのは、パートナーの危機を本能的に感じたからだな、きっと。
うん。
俺はすでに熟知してるんだけど、ここにはクロ子が大好きなコワーイ話が虚実ともにたくさんある。
見るか聞くかしてどれか体験したのなら、俺にも教えておくれよ」
「じゃかましいぃィィィ。
うるさいのだ。
自分は変な物音も、消える人影も知らないのだ。
関係ないのだッ。
疲れたから、座って休憩してただけなのだよッ」
仙 桃(しゃん・たお)とクロシェットのやりとりは見ていてつまらなくはないが、自分の置かれている状況が仙 桃(しゃん・たお)と会う前となにも変わっていないのを自覚したあなたは、わざと大げさに息を吐いた。
「どうした。心配事か。
俺もクロ子に会って改めて時の流れを感じたところさ。
HDに撮りためているアニメも気になるな。
氷○はどんな出来だろう。
なぁ、西尾○新の新シリーズが始まったというのは、本当かい。
そろそろ家に帰りたいな」
「まったくなのだ。
ジャ○プどころか、マ○ジンもサ○デーもたまっているのだ。
仙 桃(しゃん・たお)が読んでなくても廃品回収にださないと、もはや置く場所がなくなるのだよ」
「それは困る」
「自分も二人がいなくて色々、困っているのだよ。
だ、断じてさびしいわけではないからなッ。
そこをカン違いするんじゃないぞ。いいなッ」
「ですからねぇ」
あなたは人の話を聞く気のない少女たちに苦笑し、頭をかく。
二人を残しあなたは物音のする方へ足をすすめた 6−6
6−3
「話はあとよ。戦闘準備をしなさい」
青いドレス、金髪の少女は、あなたに険しい表情をむけた。
「戦闘になるのかい」
「その可能性は十分あるわね。
戦には、将はもちろん必要だけど、歩がたくさんあった方がいいにきまってるし。
王将は私として、ウチにはジョセフィンっていう飛び道具もいるし、司も得体の知れないところがあって、あの二人は飛車角よね」
王将。飛車角。
ジャパニーズチェスの棋で使うの駒の名前だ。
「きみは、とても日本人にはみえないけれど、異国の文化にくわしいんだね」
「当たり前でしょ。
めい探偵は、古今東西の文化に通じているの。私の下で働く以上、それくらいおぼえておきなさい」
いつから彼女の下で働くことになったんだろう、とあなたは首をひねる。
「下僕A。
最初の命令よ。このビニール袋を司に渡して、ついでに、あんたは司たちと一緒に行動して、わかったわね。
期待してるわよ」
ブリジットに黒いビニール袋(ゴミ袋)を手渡され、あなたは
司と呼ばれた青年のところへゆく→4−3
なにか言いたそうにあなたをみている白衣の女のところへゆく→2−5
6−4
とっさにアリーの手からバックを奪い取って、走り去ろうとしたあなたは、つまずいて倒れ込んだ。
ラヴィニア足をひっかけたのだ。
「フレデリカ。ルイーザ。こいつの顔をよーく見てごらんよ。こいつは、あいつさ。
こんなところにまで、きてたんだ。
アリーのクスリの製法を奪おうとするなんて、ほんと、油断も隙もないやつだよね。
簡単にトドメがさせるとは思わないけど、とりあえず、ここでボクはやっちゃうよ」
ラヴィニアがアーミーショットガンの銃口をあなたの頭にあてる。
「く。罠か」
「今日のところは、ボクの勝ち、っと」
あなたにしゃべる余裕を与えず、ラヴィニアが引き金を引く。
響き渡る銃声が、あなたのゆりかごでの最後の記憶となった。
END
6−5
あなたは、コリィベル1の食堂を訪れた。
非常時だからか、広い食堂内には、スタッフや受刑者たちの姿はなく、閑散としている。
唯一、人がいるのは、中央に置かれた大テーブルで、そこでは数人の男女が食事会でもしているようだ。
自由そうな雰囲気から考えて、見学にきた契約者たちだろうか。
あなたは
厨房に人はいるのかたしかめにいく→4−6
食事会中の男女に近づく→2−3
6−6
クレアを残し、部屋をでたあなたは、あるアイディアを思いついた。
この状況で鍵を握っている人物らしいヨン・ウェズリーの居場所をはっきりさせる作戦を。
「僕はヨンがどこにいるか知ってる。
大石さんのところへ連れってくれ。
彼に直接、伝えたいんだ」
看守っぽい制服姿の二人連れの男に、あなたは声をかけた。
各部屋をくまなく調べながら歩いている、いかにもクレアを探しているらしい様子の男たちだ。
「あんたたちは、大石さんの仲間だろ。
彼に協力したい。そうしたら、僕を殺さないよな。
ヨンの隠れ場所をみつけたんだ」
「ヨンはどこにいる」
「俺たちをそこへ案内しろ」
男たちは罠に食いついてきた。
「なぁ、でも、僕が見つけたヨンは本物かな。大石さんは、さっきの放送で」
「おまえはバカか。あんなものは、国軍の女をはめるためのハッタリだ。
大石はヨンを探している。だから、俺たちもこうして」
(やはり、大石はヨンを見つけていない。これをクレアに伝えてやろう)
「てててててて、て」
会話の途中で男は、突然、顔を引きつらせ、白目をむき、倒れた。
もう一人も、折り重なるように彼の上に。
二人は、体を痙攣させている。
毒物か。
気づいた時には遅く、あなたもすでに体の自由がきかなくなっていた。
頭が、体の芯がしびれている感じだ。
壁に寄りかかり、片膝をつく。
もうろうとする意識の中、あなたは少女の声を聞いた。
「セシリア・モラン(せしりあ・もらん)です。
私の一族、それにお嬢様とも縁深いあなた様をここでお見かけするとは、思いませんでした」
「ぼ、ぼ、ぼ、ぼ」
舌がまともに動かない。
「パートナーの霧雪 六花(きりゆき・りっか)がエアダクトからしびれ粉を散布したのです」
「シャルのためにも、キミを自由にしておくわけにはいかないわ」
耳元で小さな小さな声がした。
「身柄を確保させていただきます。
今後については、お嬢様と相談したうえで決めさせていただくことになるでしょう。失礼」
セシリアがあなたの体を硬く細いワイヤのようなもので縛り上げる。
(僕は誰だ。なぜこんな仕打ちを受ける)
疑問ばかりがわきあがってきた。
やがて、あなたの意識は闇に閉ざされた。
END
6−7
びしっ。
青いドレスの少女は、いきなりあなたを指さした。
「私は百合園女学院推理研究会代表ブリジット・パウエル(ぶりじっと・ぱうえる)。
このグループの指揮官よ。
いい。二者択一ね。
ここで私の指示に従うか、おとなしくなにもせずこの場を去るか。
さぁ、ぐずぐずしているヒマはないわ。早く決めなさい」
いかにもお嬢様然とした高飛車な態度と、有無を言わせぬオーラ。
たしかに彼女は、ただものではないのかもしれない。
迫力におされてブリジットに従う→6−3
食堂を離れ厨房へゆく→4−6
6−8
あなたはコリィベル2にいる。
大石鍬次郎(おおいし・くわじろう)による館内放送があったせいか廊下に人気はない。
とりあえず、誰かに会えれば、今後の行動の指針もたてられるのだが、このままでは、どうすればいいのか、本当にわからない。
途方にくれかけたあなたの視界の隅を赤いコートをはおった男が横切った。
あなたは、駆けてゆく彼を追いかける。
彼の姿は消え、足をとめて周囲を見回すあなたのこめかみに、ひんやりとした金属が押しつけられた。
あなたはすぐに気づく。
これは、銃口だ。
「俺になんの用だ」
意外に年配の男の声。
「僕は、あのう」
「時間がない。説明は手短に」
「僕は、記憶を失っている。
自分がどうしてここにいるのかわからない。
あなたを見かけたので、話を聞きたくて、つい、追いかけてしまった。
僕は、どうすればいいんだ。困ってるんだ」
「俺はレン・オズワルド(れん・おずわるど)。
冒険屋ギルドに所属している。
ようするに、なんでも屋のようなものさ。
おまえを助けてやりたいところだが、いまはムリだ。
ここで迷子を続けるよりも、俺といた方がまだ安全かもな。
すまない。命の保証はできないが、ついてきたいなら、ついてこい」
「レンさんはどこへ」
「大石鍬次郎(おおいし・くわじろう)に借りを返す。行くぞ」
動きだすレンを眺め、あなたがためらっていると横から肩を叩かれた。
「偶然、話は聞かせてもらった。
私は、ロイヤルガードのクレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)。
不躾で失礼するが、あなたが、もし、ここで保護を求めるのなら、私が力になってもいい」
軍服を着たクレアは、整った顔立ちの女性であること以上に、軍人を感じさせる人物だった。
あなたは
レンについて行く→2―8
クレアと話す→5―7
6−9
(さて、教祖様とお友達を足止めして、ここを彼女たちの人生最期の場所にしてあげようかな)
あなたの脳裏をそんな思いがよぎる。
(おそらく、さっきの戦いの原因をつくったのであろうアリーという少女は、仲間たちが戦っている以上、彼女自身が血を流し、傷ついても自業自得だ。誰も彼女を傷つけないというなら、代わりに僕がやってやろう)
あなたはフレデリカと抱き合っているアリーの背後にまわった。
懐に隠し持ったナイフの柄を握る。
ピンクの髪の生え際をみつめた。
(殺すなら首だが、とどめはささずに顔に傷をつけたり、目をつぶしてやった方がいいのかもしれない)
「やぁ。アリー。なにしてんの。逃げ場がないなら、手助けしてあげてもいいよ。だって、ラムズはきみの先生だし。
それに、危ないやつも一緒いるみたいだから、ボクらがついていてあげた方がよさそうな状況だよね」
「アリーさん。大丈夫ですか。
あなたのお仲間さんたちが暴動を起こしているという話を聞いて、あなたを探していたんですよ。
ラヴェニアが言うように、私は一応、あなたの先生ですしね。
頼りにならないかもしれませんが、子供を護るのは、大人の義務ですから」
あなたがまさに凶行を行おうとした時、少女と青年の二人連れがこちらへやってきた。
「みなさん。こんにちは。
以前にお会いした経験があるかどうか、私にはわかりませんので、簡単に挨拶させていただきますね。
私は、ラムズ・シュリュズベリィ(らむず・しゅりゅずべりぃ)。
アリーさんの学校、イルミンスールの講師をしているものです。
今日は、彼女に月に一度の面会にきたのですが、ティーパーティーでの殺人事件といい、トラブルが相次いで、帰るタイミングを見失ってしまって」
人のよさそうな青年、ラムズは愛想よく笑いながら頭をかく。
一方、彼の隣にいる少女は、どこか人をバカにしたような表情浮かべている。
「ボクは、ラヴィニア・ウェイトリー(らびにあ・うぇいとりー)。みんな、ボクのこと知ってるよね。
ボクもここにいる人は全員、知ってるかな。だから、まぁ、今回もよろしくって感じで」
彼女は投げだすような仕草で開いた両手を前にだす。
あなたは、ラヴィニアの無機質な青い目をみつめて、
「きみは、僕も知っているのかい」
「当然さ。忘れるわけないでしょ。冗談はやめにしようよ。キミの相手はまた今度。
まずは、アリーの身の安全だ。そうだろ。
ねぇ、ボクは秘密の脱出ルートを知ってる。それを使ってみないか」
ラヴィニアの意見に、フレデリカ、ルイーザ、ラムズが頷く。
「ボクはこれまでに何回かラムズとここにきた時に探検してさ。それで知ったんだけどね。
ゆりかごには、非常用の出入り口が意外にたくさんあるんだ。
ここは危険な人間が大勢いるうえに建物自体も合体、変形が可能なヤバイ代物でしょ。
のっている人たちにしてみれば非常口がいくらあっても足りない感じなんだろうね。
ほら、これ」
ラヴィニアは、アリーの前で手帳をひろげ、自分で書いたらしいコリィベルの地図をみせた。
「コリィベルはブロックが組み変わったりして複雑怪奇な内部構造をしてる。
でも、それでも、人のつくった機械というか乗り物なんで、やっぱり、変化にもある程度の法則性があるんだ。
ボクはどのパターンの時にはこれって感じで、パターン別に地図を書いてて。
ボクは、そんなに強くはないけど、キミの力になるよアリー」
アリーも、ヒルダもルイーザも感心したように、ラヴィニアの言葉をきいている。
あなたは、ラヴィニアが地図を書いていた理由を考えた。
(彼女は、正規の出入り口以外から逃げなければならなくなるような事態に遭遇するのを予測していたのか。それとも、いつか、機をみて自分でそんな事態を引き起こすつもりだったのだろうか)
「こんなに詳細な地図をなんパターンも書いていたなんて、緊急時の非常口把握のためには、大がかりすぎませんか。
いったい、どんな目的があったんです」
ラムズが、あなたが抱いたのと似た疑問を口にする。
「ラムズ。また忘れてるね。ボクにこれを書けっていったのは、キミなんだよ。
もしもの時の備えだって、言ってさ」
「そうでしたっけ。たしかに、いま、役に立っていますから、ムダな労力ではなかった思いますが」
「ムダどころか、感謝してよね」
記憶力に自信のないらしいラムズは、ラヴィニアに簡単に言いくるめられてしまう。
彼女の言動にいまひとつ納得できないあなたは、ラムズに確認をした。
「ラムズさんは、そんなに物覚えが悪いのですか」
「はい。私は、後天的解離性健忘をわずらっていまして」
「わざわざ説明しなくても、この人は知ってるよ。だよね」
ラヴィニアがあなたをかるくにらむ。
「知ってる、とはどういう意味だい。
僕には、僕に対してきみの態度がさっきからまるで理解できないんだ。
僕は、いま、自分の過去も、名前も、それこそすべての記憶を失っている。
だから、僕が誰なのか、知っているなら教えて欲しい」
「ボクとラムズ相手にそんなことを言うなんて、しらじらしいにもほどがあると思うんだけど。
人が嫌がる行為をするのがきみの生きがいだからね。しようがないか。
もし、一億分の一以下の確率で、きみが本当に記憶をなくしているなら、それなりの過程と理由があって、そうなったのだろうから、ボクは助けてあげないよ。
今日は、きみのダークな物語に付き合っている余裕はないんだ」
さっぱりわけのわからない説明だった。
ラヴィニアはそこから後は、あなたに話しかけてこず、一行はいくつもの角を曲がり、階段やはしごをおりたりのぼったりして、緊急避難用の小型飛行艇のおかれた格納庫についた。
誰もおらず、がらんとしている。
「お疲れ様、到着しましたぁ。六人乗りだからちょうど全員乗れるんだけど」
「どうしたんです。ラヴィニア。急に黙ってしまって。
みなさんが心配しますよ。さぁ、早く脱出しましょう」
飛行艇のハッチを開け、みんなを中へと導こうとするラムズに、ラヴィニアは首を横に振った。
「ここを去る前にきみはケジメをつけなきゃいけないんじゃないかな。アリー」
「ケジメってなによっ」
名指しされたアリーではなく、彼女の横にいるフレデリカが声を高める。
「ケジメはケジメだよ。
キミはここから外に持ち出してはいけないものを持ち出そうとしているんじゃないか、とボクは思うんだ。
ボクは、知っているよ。
セレマ団がコリィベル内で流していたクスリの製法とかね。
教団にあった資料はすべてキミが処分してきて、後はキミの頭とキミのバックの中にあるバックアップ用のメモリにしか残ってないんだろ。
秘密を外にだしちゃ、ダメなんじゃないかな。
なーんてね」
いたずらっぽくラヴィニアは舌をだす。
「冗談だよ。キミはそんな悪い子じゃないよね。あれ? どうしたの。アリー。顔色が悪いよ。
え。もしかしてもしかして、いまのボクのたわ言があたっちゃってる、とか。
いやー。まさか、そんな、びっくりだなぁ。
じゃ、アリーは本当にクスリの製法の入ったメモリとかを持ってるわけ。
ヤバイよね。
キミは持ちだして、どうするつもり。外の世界でもまた信者を集めるのかな」
(どこで情報を手に入れたのかはわからないが、この女はすべてを知っていて、見え透いた芝居をして、アリーを追い込んで楽しんでいる)
あなたは、ラヴィニアのタチの悪さに好感をおぼえて、頬をゆるめた。
と、ラヴィニアが一瞬、あなたに目配せをした。
(こいつ、僕にアリーのバックを盗めと言っているのか)
「あなたはアリーさんを責めるために、ここまで連れてきたのですか」
うつむいたアリーの肩をやさしく抱えながら、ルイーザがラヴィニアを非難する。
「アリーさんは、これから外の世界で生きていく決心をしたんです。
水をさすようなことを言うのは、やめてくれませんか」
「甘すぎるんじゃないかな。お姉さんみたいな人は、かえってこの子のためにならないよね。
締めるとこはしめないと。うまくいかないと思うな。なにごともね」
「私は、自分の手でこの世界から消してしまおうと思って、それで」
力のなくアリーがつぶやく。
「キミに本当にできるのかい。
キミも横にいるお友達たちも、はっきり言って、きれいな世界に住むお嬢さんたちだよね。
クスリの中毒者のこわさなんて知らないだろ。
ボクは知ってるよ。
クスリとそれに群がる人間たちのこわさ、醜さをさ。
ボクならこいつを確実に葬りさることができる。アリー。それをボクに頂戴よ」
手をのばし、ラヴィニアはアリーのバックを求める。
あなたは、またラヴィニアがこちらに目で合図を送ったのに気づいた。
アリーのバックを奪う→6−4
バックには手をださない→8−4
6−10
あなたが声をかけると、少年は、イルミンスールの七尾 蒼也(ななお・そうや)だと名乗った。
あなたは、彼の名前に心当たりがある。
「きみのことは知っているよ。
パラミタでの事件簿をネットで読んだことがあるんだ。
百合園推理研究会だね。ここでも犯罪事件を追ってるのかい」
「ああ。
それはそうなんだが」
こちらの真意をはかるように、蒼也は赤い瞳をあなたにむけた。
蒼也に協力的な態度で接するなら→5−5
やはり警備員服の青年に話しかける→4−8
6−11
重圧で精神が壊れそうな人間が、セーフティとして発する言葉から、あなたは離れられない。
「ワタシは兵器ではなくなった。
春美と契約して生まれ変わった。つもり、だった。
だが、ワタシの半身は、兵器のままだった。
シュリンプを殺したのは、ワタシの仕事かもしれない。
ここで、ワタシの知らないうちにワタシはまだ別の仕事をしているのかもしれない。
ワタシは、ワタシから逃げただけで、決着をつけなかったから、いまも、ワタシは殺し続けている」
「それのどこが悪い。なにを嘆く。
兵隊も、ギャングも、マフィアも、すべて職業だ。
マジシャンとどこが違う。
生きるために自分に会った仕事を選ぶ自由が人にはある」
ついあなたは口をはさんでしまった。
マジシャンの独白がとまる。
「ワタシは、ピクシコラ・ドロセラ(ぴくしこら・どろせら)。あなたはここでなにをしている」
「ピクシコの話を聞いていたのさ。悪いが僕は、名無しだ」
ピクシコラはあなたをにらみつけた。
「金 仙姫(きむ・そに)。こいつがいつからここにいたか、わかる?」
仙姫と呼ばれた東洋人の少女は、歌と踊りをやめ、きょとんとした顔つきであなたを眺める。
「いつの間にこんなところに。
わらわとピクシコのファンであろう。こんなに近くてわらわたちと会えて、話せて、得をしたのう。
今夜は、特別じゃぞ。ん」
まじまじと仙姫はあなたの顔をみつめた。
「そなたは」
「ええ。ワタシもなんとなく見おぼえがあるの」
ピクシコと仙姫の態度に薄気味悪さを感じて、あなたは慌ててその場から逃げだした。
幸い二人は追ってこなかったので、あなたはパーティの他の出席者たちにまぎれて、ふらふらと会場をさまようことにする。
(悪い予感がした。
あいつらは何者なんだ。
特にあのマジシャンの女。もともとは殺し屋らしいが僕には、そんな職業の知り合いがいるのか。
僕はいったい)
「ねぇ。こんなとこにいたんだね」
服の袖を引かれて振り返ると、右が赤、左が青のオッドアイ少年、緋桜 霞憐が立っていた。
「遙遠と晃は仲直りしたんだよ。
僕らここにいる人質さんたちが気になって、きてみたんだけど」
霞憐の後ろには、廊下で死闘を行っていた緋桜遙遠(ひざくら・ようえん)と縷々 晃が並んで立っている。
一見、どちらもたいしたケガはしてなさそうだ。
「どうかしたのですか」
口ごもっている霞憐に遙遠が尋ねた。
「えっ。僕は元気だよ。ただ、僕はもう帰ってもいい気がするな。さっき、僕らが忍び込めたみたいに、人質のみんなは、きっと、自分の力でなんとかここから脱出できるよ」
「目の前で困っている人を見捨ててもいいような言い方をするなんて、霞憐にしては珍しいですね」
「見捨てるとかじゃないよ。晃さんはケガしてるし、遙遠も疲れてるだろうから、僕は、ただ、だから、それに、あと、うーんと、なんだか、ここはすごく雰囲気が悪いよ。
占拠されてるからだけじゃなくて、ここにいると僕は悪い予感みたいなのがするんだ」
「オレも同意見だ。
遙遠。これ以上の厄介事にかかわる前に、ゆりかごを降りないか」
霞憐、遙遠、 晃、三人の会話は、あなたも共感できた。
「なるほど。二人の言う意味が遙遠にもわかりました」
遙遠はあなたに身を寄せ、耳元でささやいた。
「いまそこで会った百合園女学院推理研究会のみなさんに教えられて、確信しました。
遙遠も血のにおいだけでなく、あなたのにおいもおぼえていたようです。
フライシャー教授」
(フライシャー教授?)
首を傾げたあなたは、遙遠の放ったブリザードの直撃を受けて、世界から消え去ったのだった。
END
6−12
「そちらの方、私たちの考えた作戦にのってみないか。
私は、レオン・カシミール(れおん・かしみーる)。人形師。人形使い。芸能プロでマネージャーもしている」
みるからに繊細、神経質そうな赤紫のスーツの青年レオンは、あなたに名刺を渡した。
たしかに名刺には、いま言った職業がすべてと記されている。
「きみらの作戦というのは」
「人質が人質をとるという、イレブンさんにしてみれば、ミイラとりがミイラみたいな作戦でごじゃりますよ」
こたえたのはレオンの隣にいる執事服の青年で、彼はまじめそのもの表情で、ユーモラスな話し方をした。
「申し遅れました。わたくし、ハル・オールストローム(はる・おーるすとろーむ)というしがない芸能マネージャーでございまする。
落語家のマネージメントをしておりますです。
日本の伝統的な笑いが必要になった時には、ぜひ、ご一報を。
は。名刺をお渡しして、営業トークをしている場合ではごじゃりませぬね。
わたくしたちの作戦とは、わたくしたち人質が、イレブンさんを逆に人質にしてしまうというですね。
わたくしが心のこもった紅茶を用意いたしますので、イレブンさんに飲んでいただいて、気のゆるみをついて」
「似たような作戦を他の誰かも考えてるんじゃないのか。これだけ人数がいるんだし」
あなたの指摘にハルは大げさに驚いてみせた。
「まったく、一本とられてしまいましたです」
(なんだ。こいつは)
口調はそれなりにおもしろいのに、顔はまじめくさったままなので、みているこちらとしては、奇妙な感じなのだ。
「ハルの作戦はおいておくとして、きみの知恵もかりたうえで新たな作戦を立案していこう。
まず、私たちの側のメリットなのだが」
「うぬ。それはもっともでございますよ」
レオンはクールに次々と作戦のアイディアをだし、ハルはそれに合いの手を入れるように賞賛する。
あなたは、二人のトークがおもしろくて、しばらく眺めていたが、やがて、さっきまで「なんだってぇ!?」と叫んでいた少女たちがステージにあがり、イレブンを殴り倒したのを境に、二人から離れて、壊されたドアから講堂をでた。
(肩すかしをくらった気分だな)
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