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幕間:空回り幽霊活動 〜ホリイの災難〜

「本当にこれで良かったんでしょうか?」
 久瀬たちを視界におさめてホリイが呟いた。
 彼女の隣にはブリジットの姿がある。
「貴重な体験、ということでしょうか」
「だいたい合ってるよ」
 彼女は言うと久瀬たちの背中を追いながら思う。
「さらなるトラウマになりそうな気がするんですけど……」
 ホリイの心配をよそにブリジットは予定通りに行動を始めた。
「行きます」
「頑張ってね」
 彼女は暗がりの中、迷彩塗装を用いて久瀬たちに近づいて行く。
 空中移動をしているせいか足音はない。これなら少し離れていれば見つかる可能性は低いだろう。
 スッとブリジットは久瀬たちの横を通り抜けた。
 だいぶ距離は空いていたが、予定通り風を起こすことはできたようだ。
 久瀬たちは訝しんで足を止めている。
 続けてブリジットがまた同じように久瀬たちに近づく。
「そろそろですね」
 ホリイは言うとタッタッタ……と駆けるように久瀬たちに近づいて行く。
「でも楽しそうに駆け抜けるってどうすればいいんでしょう?」
「ワタシノヨウニ……エガオデイレバ」
「なるほど、笑顔大事です……ね?」
 自分は誰と話しているんだろうと声のした方を向いてみると、暗闇の中から白い顔……面だけが浮かび上がっていた。アドハムだ。暗がりということもあってか面だけが映えて見える。ホリイからすれば面が話しかけてきたように見えただろう。
「ひっ……」
 思わず足が止まる。
 こちらを覗き込むように近づいてくる面に思わず――
「わひゃあうっ!?」
 素っ頓狂な悲鳴をあげてしまった。

「なんだあれは……」
 久瀬たちの後を隠れながらついてきていたサイアスは廊下の角から様子を眺めていた。宿直室で見かけなかった女の子がアドハムの姿に驚くという、何とも表現し難い場面である。
「それにあっちはあっちで何やってるんだ」
 サイアスの視線の先にはクエスティーナの姿があった。
 怖いことでもあったのだろう。久瀬の腕を掴んでいるようだ。
「近づきすぎだ……っと、忘れるところだった」
 彼は手にしていた小石を悲鳴をあげている女の子に向けて投げる。
 思っていたよりも力が入っていたようで勢いよく飛んで行った。
「やりすぎたな」
 思うと同時に女の子の泣き声が廊下に響く。
 悪いことをした、と内心で謝るが起きてしまったことは仕方がない。久瀬たちを驚かそうとしている輩を何とかするのが目的だったし、結果的には成功と言えた。
「さて……このままここにいるのは良くないな」
 サイアスは久瀬たちに見つからないよう隠れる場所を変えていく。

「作戦失敗」
 ブリジットは状況を判断すると素早く反転し、ホリイの元へ向かう。
 どこかにぶつけたのか、頭をさすっているホリイを抱き上げたままその場を離脱する。
「ご、ごめんなさい」
「失敗は誰にでもある」
「甚五郎は?」
「クウが伝えに行ってる」
 すでに失敗の話は伝わっているようであった。
 二人は甚五郎だちと合流するべく、そのまま夜の闇に紛れて姿を消した。