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リアクション
第三幕:夜の見回り 〜魔女ルーノの冒険〜
ルーノを中心とした幽霊捜索隊は久瀬たちよりも一足先に校内を巡りまわっていた。先頭を歩くルーノの隣、騎沙良 詩穂(きさら・しほ)が持ち前の技術で周囲を警戒している。
「なんか楽しいですね」
夜目を利かせながら騎沙良が言った。
夜の学校というシチュエーションで皆で活動するというのは、たしかにオリエンテーリング的な何かに近い印象がある。そこにルーノが楽しそうに先頭を進むものだから、触発されるのもしかたがない。
「ワタシたちも楽しいけどね」
「じゃのう……」
答えたのは笠置 生駒(かさぎ・いこま)とジョージ・ピテクス(じょーじ・ぴてくす)だ。
「そういえば前の事件の主犯格、捕まってないらしいね」
「姿が見えないんじゃったか。今回の件と関係がありそうじゃのう」
「それは俺も気になってるんだよね。他の人もそうだと思うけど」
エースが会話に加わる。
「昼間に聞いた話だとうさぎのぬいぐるみを見たらしいし、きっとゆる族だろうね。もちろんパートナーの存在もあるかもしれない」
「そうなるとやっかいじゃのう」
「殺気を感じられるなら対処のしようもあるけど、逃げる相手でしかも見えないんじゃあ厳しいかな」
現状、これといった打開策が見いだせないようである。
ただ一つを除いては。
「人数が多いという利点がありますけどね」
御凪が横から口を出した。
それは的を得た発言である。
「人海戦術かあ。そうなると途中で別れるべきかな」
「今のような大所帯では迅速な行動は難しいからのう」
「しばらくしたら別れることにしましょうか」
笠置たちが犯人捕獲を考えている後ろでは、また別の話が行われていた。
「おい、ねえ、どうして私はこんなところにいるんだよ」
「お友達のルーノちゃんに楽しいことがあるからって誘われたじゃない」
アルクラントの疑問にシルフィアが答えた。
「いや、待て、この雰囲気……いかにも、出そうじゃないの」
「幽霊探しですからそうでないと困ります」
「なんで楽しそうなんだよ……」
「気のせいでしょう」
意地悪くアルクラントをいじるシルフィア嬢。
普段から思うところでもあるのかもしれない。心の底から楽しんでいるように見受けられた。
「お父さんも相変わらずですねえ」
「他人事だと思って」
「他人事ですから」
にこにこと楽しそうにサズウェルが口をはさんだ。
三人は見知った仲らしく、他に比べてより親密に感じられる。
そんな彼らが楽しく映ったのだろう。ルーノたちが会話に混ざってきた。
「たのしそーだな!」
「まったくね」
「いやいや、人の話をよく聞いてくれよ。私はお化け屋敷的なのは苦手なんだ」
「あれね。嫌よ嫌よも好きのうち」
「いわゆるどMってやつね」
セレンフィリティとセレアナが横から茶々を入れる。
勘弁してくれというようにアルクラントは両手をあげた。
周りで笑いが起こる。各々、今回のイベントを楽しんでいる様子であった。
「さあそろそろ分かれて行動しようか」
しばらくして御凪が予定通りに行動するべく皆に指示を出した。
「私たちは御凪さんとご一緒ね」
川村 詩亜(かわむら・しあ)が川村 玲亜(かわむら・れあ)の手を取り御凪の前に躍り出た。脇には及川 翠(おいかわ・みどり)の姿もあった。
「詩亜ちゃんに玲亜ちゃんがいるなら私たちもなの!」
「はいはい。わかってるわよ」
川村姉妹と面識があるのだろう。ミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)が二人に手を振りながら近づいた。彼女の後ろには徳永 瑠璃(とくなが・るり)とスノゥ・ホワイトノート(すのぅ・ほわいとのーと)の姿がある。
「二人は会ったことなかったよね」
及川が徳永とスノゥを二人に紹介する。
「仲良くしてほしいの」
「よろしくです」
「ですぅ〜」
「よろしくね!」
「これなら幽霊が出ても恐くないね。よかったー」
どうやら互いに好意的な関係が構築できている様子であった。
他の者も順次チーム分けをしていく。
「あたしたちはこの五人で行くわ」
セレンフィリティがセレアナ、騎沙良、笠置、ジョージを捕まえて言った。
「さ、攫われてしまいました♪」
「嬉しそうに見えるのう」
「ワタシは別にいいけどね」
こちらも概ね問題がないようだ。
一方ルーノたちといえば――
「ルーノさんのことは僕たちがエスコートします」
ルーノの隣、執事のように付き添っているのは清泉 北都(いずみ・ほくと)だ。近くにはモーベット・ヴァイナス(もーべっと・う゛ぁいなす)の姿もある。どちらも執事のような洋装をしているためか本職にしか見えない。
「俺たちも付き添いますよ」
エースが清泉たちとは反対側に付き添う。
端正な顔をしている男四人に囲まれているルーノの姿は女王様か何かに見えなくもいない。
「私、しってるぞ。両手にはなだ!」
「間違ってはいないな」
モーベットがルーノの言葉を肯定する。
こちらはこちらでおそらく問題はないのだろう。
各々が分かれて行動し始めた頃。
アルクラントがシルフィアに話しかけた。
「私たちも行くとしようか」
「ワタシは準備できてるよ」
「サズウェルも一緒に……って」
辺りを見回すがそこにサズウェルの姿はない。
いや、誰の姿もなかった。
「お、おやぁ?」
アルクラントの顔が徐々に青ざめていく。
置いて行かれたという現実を理解できたようだ。
「それじゃあ行くわね」
「おい、ちょっと待ってくれよ」
先行するシルフィアを追いかける。
先ほどの喧騒が嘘のようにその場が静かになった。
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