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リアクション
幕間:教室会議 〜女装と怪人と空飛ぶ鎧〜
「すみませんです」
「そう気を落とすな。失敗は誰にでもある」
気落ちしているホリイを夜刀神がなだめる。
「ブリジットに同じこと言われました」
「そうか。まあ伏兵がいたのは想定外だった。失敗もやむなしだろう」
「これがムダになった」
クウは穴の空いた布きれを手にしながら呟いた。
「諦めることはない。まだ機会はあるかもしれないからな」
彼らは次はどう攻めていくかを話し合いながら廊下を歩いていく。
しばらくすると廊下の先から喧騒が聞こえてきた。なにやら近くで騒いでいる連中がいるようである。
「行ってみる?」
クウが物怖じせずに言う。素通りするのも難しい状況だったこともあったのだろう。夜刀神たちも声のする方に向かうことにした。
ガラッと引いた扉の先にはアルクラントとシルフィアの姿があった。彼らの近くには見たことのないゴスロリ風の女の子と怪人風の男の姿もあった。
クウが片手をあげて挨拶をする。
「おっす」
「おっす。ってどこでそんな挨拶覚えたんだ?」
「ルーちゃんがクゼから借りたマンガで」
「悪影響だわ」
アルクラントとシルフィアがクウの発言に一抹の不安を覚えていると、クウが彼らの後ろにいる人物らに興味を示した。
「ダレ?」
視線の先にはゴスロリの女の子の姿。
「私マリーちゃん、今あなたの前に居るんだ」
「そのネタ、まだ続けるのかよ」
くすくすと笑う女の子。
よく見ればどことなく見覚えのある相貌であった。
「サズウェル・フェズタ(さずうぇる・ふぇずた)?」
「正解だよ。よくわかったね」
ゴスロリの正体は女装したサズウェルだった。
「こっちは?」
「あぁ、彼は――」
アルクラントに促されるように怪人が一歩前へ出た。
「玖純 飛都(くすみ・ひさと)だ。よろしく」
「四人はどうしてこんなところに?」
「いやあ幽霊の正体を探っていたらいきなり襲われて思わず逃げまくったら、いつの間にかここにいた」
とはアルクラントの弁である。
「あ、襲ったのは僕だよ。お父さんを噂の不審者と勘違いしちゃって」
「オレはサズウェルを不審者だと間違えてな。一緒に行動してた」
「これはヒドイ」
不審者の連鎖。幽霊探しの結果がこれとは理解に苦しむ展開でした。
「わしらは久瀬を驚かせようとしてたんだが失敗してな」
「私たちの言えた義理じゃないが、そちらも何やってんだって感じだな」
「メンボクない」
これからどうしたものかと話す彼らの背後、教室の窓に不審な影が映った。
長い棒状の影が二つ、頭部から縦にピンと立っているように見える。
「うさぎ?」
シルフィアの言葉通りたしかにうさぎのように見えた。
こちらに気付いたのだろう。うさぎはその場から逃げるように駆け出した。
「ホリイ! ブリジット!! 行くぞ」
言うが早いか。魔鎧となったホリイを着込んだ夜刀神を背負い、ブリジットがウサギを追って飛び出した。
「連携早いな。私たちも行こうか……って」
言うアルクラントの隣、サズウェルと玖純の姿がいなくなっていた。
「遅いよお父さん」
「先に行ってるぞ」
見れば扉を出ていく二人の姿があった。
「クウちゃんももういないわ」
「え……」
見れば教室にはシルフィアとアルクラント以外、誰の姿もなくなっていた。
すでにウサギを追いかけて行ってしまったようだ。
呆然とするアルクラントに彼女は言った。
「……このまま一人きりになっちゃったりして」
暗い教室。照明のない暗がりに一人残される。
その想像は当人の恐怖心を煽るには十分すぎるほどでした。
「あの……シルフィアさん、お願いだから先行かないで」
「うんうん。じゃあね」
「ねえちょっと……人の話を聞いてくださいよ」
置いて行かれないようにアルクラントは先を進むシルフィアを追って教室を後にした。
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