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十字架立てる少女と透明人間

 リブロとアルビダを見送り、1時間経った頃レノアとエーリカがカードを貰って館へ入って行った。

「これ以上、人を入れてもしゃーないよな」

 裕輝は手持ちの無線機でお化け役の人たちに最後の人が入ったと伝える。

「さーて、出口に待機してる子ぉのとこにでも行くかな」

 受付の一式を片付けていると、中での悲鳴が外にいても聴こえてきた。

「おーおーやっとるな。それにしても、屋外まで届く程の悲鳴とかなんやねん。ダサすぎやろ」

 喉の奥で笑い、あらかた片付けを終えた裕輝は出口の方へ向かいだす。

「こっからじゃ分からへんけど、オレが仕組んだ小細工に何人引っかかるやろーなぁ。くっくっく……」

 にやにやしながら歩く祐輝は館の不気味さと合わさり、どこかこの館の住人のように思わせる雰囲気を醸し出していた。



◇          ◇          ◇




 中庭にあるお墓は冷気で霧が発生している。
 ザックザックと穴を掘るのはスコップを持ったレキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)
 その近くでは光学迷彩で姿を消したチムチム・リー(ちむちむ・りー)も土を掘り返している。
 それは姿の見えない何者かが土を掘り返しており、土の上に大きな足跡を作っているように見えた。
 二人はお化け役ではなく、噂にあった『実験に失敗した生物が墓場から出てきて人を襲っている』のを確かめ、必要なら供養してあげようとここを訪れていた。

「……よかった。ここには誰もいない」

 レキはほっとした表情で土を戻すと、木の棒をそこに立てる。
 チムチムも同じように掘り返した場所に何もなかった場所には木の棒を立てていた。

―――ガツンッ

「ここは固いなー。チムチム!」

 レキが呼ぶと、足跡がこちらにやってくる。

「ここ、岩があるみたいなんだ」
「わかったアル」

 レキが示す場所をアルティマ・トゥーレで凍らせて、脆くして破壊する。
 それによりさらに気温が下がり、霧が濃くなる。
 掘り返しては木の棒を立てていくのをチムチムの従者ピーが黙って見つめていた。

「ここにスタンプはあるのかな?」

 黙々と作業しているレキとチムチムの所へお墓を詮索しにきたルカルカとダリルがやってくる。

「どうだろうな。ここには土台の様なモノが置いてないみたいだし、ハズレじゃないか?」
「あ、あそこにいる人がもしかしたらスタンプを持ってるかも! ねーそこのキミ!!」

 がさごそ動いてるレキに向かってルカルカは駆け寄って行く。

「ここにもいない、と」
「……え?」

 そこでは、レキが空っぽの場所に土を盛って木の棒を突き刺していた。
 また、そう離れていない場所では誰居ないハズなのに土が動いたりしている。
 誰も居ない場所から視線の様なものも感じるようだった。
 ルカルカの足音が聴こえ、レキは掘り返してた作業を中断したレキは真っ青な顔で相手を見やる。

「見ぃ〜た〜な〜」

 内心見つかってしまった事で焦ってそう言ってしまうレキ。
 怒られると思ってびくびくしてると、悲鳴をあげたルカルカが中庭を去って行ってしまう。
 ダリルはルカルカを追って中庭を後にする。

「アレ……?」
「どうしたアルか?」
「てっきり怒られると思ったんだけど……まぁ、いっか。これで作業を再開できるし」

 レキとチムチムはまだ掘り返していない土を掘り返していく。
 と、今まで掘っていた音ととは全く違う音がレキのスコップを鳴らす。

「チムチム!」

 レキはチムチムを呼んで一緒に掘り返していた場所を慎重に掘って行く。

「これは……」

 掘り返したそこには木箱にすら入れられず、ただ穴を掘った場所に首の長いトカゲのような生物が埋められていた。

「噂の元はこれみたいアルね」
「動き層には見えないけど……まだほかにもこの子のように埋められている子がいるかも知んないし、早く見つけないとね」
「もちろんアル」

 二人は先ほどよりも慎重に土を掘り返していくのだった。