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早川 呼雪(はやかわ・こゆき)



屋根裏部屋の中にある隠し扉が開く。

「ごめんなさい。あなたをダマすようなことをしてしまって」

俺は首を横に振る。何度も振り続けた。
知らないうちに息をとめて、まっすぐに、全力で、彼女を見つめていたんだ。

「薔薇学舎の早川呼雪だ。
この館で3日間、悩みごと相談のまねをしていたら、ある人にキャロルの身柄を任された。
話はキャロルから聞いている。
自分は死んだことにして、一時的に身を隠した彼女の判断は、俺は正しかったと思う。
オリバーにとってはつらかっただろうがな。
ともかく、真相はあきらかになり、危機は去った。
今後は、キャロルを守るのは、オリバー、おまえの仕事だ」

キャロルの横にいる、聖職者のような雰囲気の青年、呼雪がゆっくりと静かに語りかけてきた。
穏やかな表情でこちらにむき、しばらく俺を見つめた後、優しげに目を細める。
呼雪に背中をおされ、キャロルが俺のほうへと1歩、1歩、歩いてきた。

「待ってるだけじゃ、ダメなんじゃない」

つまらなそうにつぶやき、ヘルが平手で、俺の尻を叩く。
いままでとは違う、ダウタウンの平民の家の娘のみたいな、地味なブラウスとスカートを着たキャロルが、すこし泣きながら、でも、笑いながら、俺のところへくる。

「キャロル」

俺は叫んで、彼女へ抱きついて、体を抱えあげた。
「オリバー。オリバー」

「この指輪はきみにあげたんだ。きみのだ。俺は、もう絶対にきみを離したりはしない」

「オリバー!」