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リアクション
魔法中毒者の家、一階。
薬品や書物は転がり、特に日光を必要とする植物がおり、椅子やテーブルの乱れから来客があった事が見て取れた。
「おおっ、早速お宝発見でありますよ!!」
侵入するやいなや吹雪は転がる小瓶を発見し、躊躇いなく手に取った。
「随分慌てて家を出たみたいね。しかも来客があったみたいだけど」
コルセアは荒れている室内を確認しテーブルや椅子から少しの異変を感じ取っていた。
「もしかしたらその来客は探求会の誰かかもしれないね。あの子達に聞いて確認してみるよ」
エースは春先のためスノードロップやクロッカスが咲いた鉢植えや薬草などに優しい眼差しを注ぎながら提案。
「そうね。ここにいる植物なら何か聞いているはずよね」
コルセアは並ぶ植物に気付き、エースの提案に賛成した。
「早速、始めるよ。この子達の手入れも一緒にね」
エースは『人の心、草の心』での聞き込みだけでなく剪定や水やりなどの植物達の世話まで始めた。
「エース、あまり長話しないで下さいね。僕は近くの食器や家具を調査してみるよ」
エオリアは届いていないと知りながらもエースに注意喚起をしてから近くの食器や家具を『サイコメトリ』による捜査の対象にした。
「ここは比較的安全みたいだな……これは、動物の毛?」
陽一は念入りに安全確認を終えた窓辺にわずかな液体と黒い動物の毛を発見。
「動物? どこにも動物がいる気配はしないけど、どういう事かな? 中毒者と何か関係があるのかな」
美羽は動物の毛に小首を傾げつつも『トレジャーセンス』で貴重品は無いかと捜索し、薬品棚の奥に眠る薬品が気になり『サイコメトリ』で読み取り始めた。
調査が進む中、
「んんん〜、この蓋、異常に硬いでありますよ!」
吹雪は異常に硬い蓋を必死に開けようと奮闘していた。
「吹雪、諦めたらどう?」
聞き入れられないと知りながらも一応言ってみるコルセア。
「諦めない……であります……よ!!」
吹雪は聞き入れずに必死に格闘を続けるのだった。
その間、
「……この毛の主は黒猫? 慌ててこの窓から逃げて行ったみたいだが」
『サイコメトリ』によって毛の正体を突き止めた陽一は推理を始めようとするが、
「その黒猫の特徴を教えてくれませんか?」
付近で捜査をしていたエオリアが聞きつけ、会話に加わった。
「特徴は……」
陽一は読み取った記憶を振り返りつつ黒猫の特徴を事細かに話した。
「それは探求会の者です。以前会った事がありますから間違いありません」
聞き終えたエオリアは通り雨の時に出会った黒猫の獣人ヴラキを思い出し彼であると確信した。
その時、
「開いたでありますよ!!!」
吹雪が長く格闘していた小瓶の蓋を開け放った。
途端、中身の液体がなぜか膨張し、今にも爆発しそうな様子を呈していた。
「危ないっ!」
美羽が真っ先に爆発間近であると気付き、吹雪の手にある小瓶を宙に蹴り上げた。同時に小瓶は爆発した。
美羽のおかげで直撃は免れるもこの場にいる者達は粉末の雨を浴びる事となった。
しかし、
「何の魔法薬でしょうか」
『T・アクティベーション』で助かったエオリアは息を吐き、薬品で粉まみれになった床を見た。
「……危なかった」
『肉体の完成』で無事であった陽一は深紅のマフラーを盾にして付近にいたエースとコルセアを守っていた。
「……危なかった」
美羽は予め装着してたマスクによって粉末を吸引せずに済み無事であった。
ただ一人
「へぶっくしゅん」
吹雪は粉末を吸い込み、激しくくしゃみをするなりぶるりと体を震わせた。
すぐさま
「……この魔法薬は」
陽一が『顕微眼(ナノサイト)』で粉末に含まれる毒物を注視した後、見たものをありのままに皆に伝えた。
「それなら……」
『薬学』を有するエースがすぐさま解除に必要な素材を提案した。いつの間にか植物とのお喋りを終わらせていた。
「必要素材が分かった所で準備を始めようか」
陽一は必要素材の情報を得るなりペンギンアヴァターラ・ヘルムのペンタとポータラカマスクをつけた特戦隊の一人に命じて薬品棚に解除薬になりそうな物を探させた。
その間、
「片付けますね」
エオリアが素速く床に飛び散った粉末とついでに部屋の掃除を始めた。
「助かるわ。それにしても明らかに怪しいのになぜ自分から地雷を踏みに行くのかしら」
コルセアは皆に礼を言うと共に体を震わせている吹雪に呆れていた。
『清掃』を有するエオリアの力によって何とか掃除は終わるも
「……ここにある物だけじゃ足りないみたいだ。実験室の方に行ってみるよ」
陽一はシャンバラ軍用犬を周囲の警戒役として先頭を歩いて貰いながら地下へ向かった。
「妙に寒いでありますよ! しかし、負けないであります」
吹雪が震えながらも負けずに物色を始めようとした時、
「何か植物が大変な事になってるよ。さっきまであんな事なかったのに」
美羽は粉末が降った場所にあった植物を指さすなり、足を構えた。
「ここは俺が大人しくさせるよ」
植物ならば関わらない訳がないエースが参戦。
『エバーグリーン』でお喋り相手だった植物を生長させ暴れる植物に絡ませて動きを止めた。
「人と植物では反応が違うという事かしら」
コルセアは冷静に状況を分析していた。
凶暴化した植物を大人しくさせた後。
「そうそう彼女達に聞いて分かったんだけど、最近起きた新しい出来事の中に探求会のシンリとこの家の主吸血鬼の女性が交渉があったんだよ。シンリが全てのレシピと引き替えに貴重な素材を貰ったそうだ。邪魔者は来るとも言っていたよ。ちなみその時彼女は何も持っていなかったそうだ」
エースは改めて情報収集の結果を話した。
「探求会が言う邪魔者って友愛会の事だよね」
美羽はすぐさま見当がついた。
「この家の主がする事は調薬だけだったらしいよ。それ以外に外に出る事は無かったそうだ。彼女の生活は調薬だけだったと。ただ、彼女の名前は知らないみたいだった」
エースは家主の事も明かした。
「名前が分からないのは残念だけど調薬だけというのは確かだよ。薬棚に熱心に調薬する姿があったから。後、奥にある薬を取引の時に渡していたよ。特別なレシピに使うのかも」
美羽が読み取った事を報告。
続いて
「家具には今回の取引の様子がありましたが、食器棚で読み取れたのは食器を初めてここに並べた時の記憶ですね。恐らく使用しなかったのでしょう。埃で汚れていましたから」
エオリアは先程の清掃で綺麗に埃を除いた食器を手に持ちながら報告した。
「彼女がレシピを保管していたのは別の場所という事なのね……別の場所という事は、実験室が怪しいわね。実験室に行っている人達が何か見付けてくれればいいけど」
コルセアは皆の話からレシピについて推測しつつ地下室への入り口がある方に視線を向けた。
皆の報告が一段落したところで
「しかし、家が無人になるとこの子達の世話が……ん? 無人ならこの子達を連れ帰ってもいいはずだ。ねぇ、君達、ウチの子になりなよ。もっと綺麗にしてあげるよ?」
エースは植物達の世話人がいなくなった事に思い当たるなり口説き始めた。
「……エース」
いつもの展開にエオリアは溜息を吐きつつ植物愛の背中を見つめていた。
エースの交渉の結果、植物達は優しいエースに厄介になる事にした。
しばらくして解除薬が届き、吹雪と植物は元に戻った。
元気になるなり吹雪は
「次は地下に行くでありますよ!」
新たな冒険へと足を向けた。
「……まだ続けるのね」
コルセアは呆れながら付いて行った。
収集された情報については、エオリアが銃型HC弐式・Nで皆に拡散した。
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