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調薬探求会と魔法中毒者の取引後

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調薬探求会と魔法中毒者の取引後

リアクション

 地下実験室。
 様々な薬品や書類、書物などが所狭しと床や棚に溢れ、実験台には実験器具などが置かれていた。

「これ、何なのよ……あれもこれもヤバい薬品ばっかり! さっさと簡易分析用のキットでサンプル採って分析して処理するわよ」
 セレンフィリティは室内の様子に声高になるもキットで薬品分類を開始した。
「そうね。中には危険な物があるはずだから慎重に……」
 セレアナはセレンフィリティに注意をする。何せセレンフィリティは大雑把な上に気分屋なので何かやらかされてはまずいので。
「分かってるわよ」
 セレンフィリティはこつこつと丁寧にサンプル採取をしてデリケートな物や危険物はセレアナに回し、『氷術』で氷結させ持参したクーラーボックスに入れて後ほど安全な場所での分析に回す。
「やっぱり、重要な物は無さそうだけど書類は回収するべきね。書物も結構あるから時間が掛かりそうね」
 セレアナは処理作業をしながら書類回収も始めた。
 その時、
「書物回収は私達が手伝うよ。薬品関連として見ると結構貴重そうな物がありそうだし」
「二人いればすぐに終わるだろうから薬品と書類の方を頼むよ」
 ローズと学人が手伝いに登場。
「助かるわ」
 セレアナが協力者を歓迎していた中、
「うわっ!!」
 セレンフィリティの叫び声が上がった。
「セレン!?」
 急いでセレンフィリティの無事を確認するセレアナ。
「何か触った途端、瓶ごと溶けたんだけど。もう面倒だからセレン、全部凍らせちゃってよ」
 右手にはどろりと溶けた液体がこびりついていた。防護服のおかげで被害は無い模様。
「……面倒って中には氷結がまずい物もあるんだから」
 想定内の発言にセレアナは溜息を吐いた。
「……量が半端無いわよ」
 先程まで丁寧に作業をしていたはずがもう飽きていた。さすが気分屋である。
 その時、
「薬品の分類という事なら俺も手伝おう」
「ルカはこの実験器具を調べるよ。後は外の聞き込みもするよ」
 ダリルとルカルカが登場。
「助かるわ。早速、お願い」
「氷結処理が必要なら私の方に回して」
 セレンフィリティとセレアナはさらなる協力者達を歓迎した。
「あぁ、しかし放置したままにするには危険な物が結構あるな」
 『薬学』を有するダリルは早速薬品の処理に回り、手早く片付け
「……廃棄器具と薬品の凍結も頼む。ついでにこのケージに入っている生物も頼む」
 破棄器具の確認をした後、危険と判断したダリルはセレアナに処理を回した。
「……妙な生物ね」
 セレアナはケージの中身を確認して一言。
「何か変なものでも見付けたの?」
 気になったセレンフィリティがやって来てケージの中を覗き見た。
 そして
「うわっ、何なのよ、それ、生物!?」
 顔を歪めた。ケージの中には変なスライムとクリーチャーが仲良く入っていた。
「……確かに気持ち悪いわね。このまま放置してもしケージが開くような事があったら逃亡する可能性もあって問題だわ。よくこんなものを放置して出て行ったわ」
 セレアナはこの家の主に呆れていた。いくら特別なレシピにご執心でも危険な物を残していくのはいかがなものかと。
「そうよ。しかも廃棄物も放置なんでしょ」
 セレンフィリティは廃棄器具が入ったゴミ箱を覗き見ながら不満を口にした。
「えぇ、何もかも放り出すという事はよほどの事があったのよ。例えば特別なレシピとか」
 セレアナはケージの中の変なスライムとクリーチャーや破棄器具を『氷術』で凍結しながら言った。
「そうだろうな。特別なレシピとはそれほどの物なんだろう。薬品の消え具合から随分前にここを去ったようだ。もう少し背景を知るために二階を調べて来る」
 ダリルはそう言うなり二階に向かった。
「私達はここで処理を続けるわ」
 セレアナはそう言ってダリルを見送った。
 言葉通りセレンフィリティ達は書類や薬品のサンプル採取兼処理を続けた。
 そして、
「ようやく終わったわね。後は薬品と書類の分析ね。薬品は後で安全な場所でするとして」
「書類を先にするという事ね」
 セレアナとセレンフィリティは作業の一段階目を終え、二段階目の分析に移る。すぐに分析出来る書類から作業を始める事に。セレアナが有する『博識』を使用して。
 そこへ
「特別なレシピの素材を揃えるのに随分手間が掛かっているようだったよ。ここで試行錯誤していたけど、ここでの作業は主に素材を揃えたり作ったりする事だったみたい。本格的な調合は別の所かも……ただ、ここの主の行方が分からないのが」
 ルカルカが『サイコメトリ』で実験器具の記憶を読み取った記憶を『ソートグラフィー』でシャンバラ電機のノートパソコンに映して画像として保存した物を見せながら報告した。
「そうね。今の状況だと特別なレシピしか明らかにならないわね」
 セレアナは同意とばかりにうなずいた。
「少しでも手掛かりを得るために外で聞き込みをしてくるよ」
 ルカルカは外へと聞き込みに行った。

 一方。
 本棚の前。

「とりあえず、本棚に来たけど、後はどうするの?」
「まずは本のコンディションを確認だよ。本ってのは読んだ回数が多ければ多いほど汚くくたびれていく物だから。そこから特別なレシピを探れるんじゃないかな」
 指示を仰ぐ学人にローズは適当な本を一冊抜いて探し物の目星の付け方を説明した。
「確かに、ここの主の目的は特別なレシピだからね」
 学人はうなずいた。
 早速、本探し開始。
「予想通り結構くたびれているね。いくら急いでいるからと言ってもこれだけの情報を残していくなんて。きちんとした人なら本のメンテナンスも怠らないし、他の人に見られないように処理はずだからここの主はマメな人じゃなかったみたいだね」
 ローズは端から順々に手に取る本を選んでいく。時間は無限には無いので最も傷んでいる本から攻めていく。
「……ロゼ、この本、びっしりと付箋が貼ってあるよ。ノートも見つかったんだけど」
 『資料検索』を有する学人は実験室にある書物という事で慎重に重要そうな書物を二冊発見した。
「……どれどれ……」
 受け取ったローズは中身を確認するもすぐに顔を上げた。
「どう? ノートは随分薬品がこびりついているみたいだけど」
「うん。全て素材についてだね。本は素材の図鑑みたいだけど、ノートは素材の作り方みたいなんだけど、専門用語やこの人独特の表現とかあって解読するのに手間が掛かるかも」
 訊ねる学人にローズは肩をすくめた。『医学』と『薬学』の知識を有するローズは読み解くのに時間が掛かると読み取った。
「となるとこれを調べたら特別なレシピについて何か分かるという事かな」
 学人は手に入れた物に改めて視線を落とした。傷んだ本ではなく重要な証拠として。
「かもね。別のレシピでも構わないけどね。私にとってお宝に違いないし」
 ローズにとって薬品関連である時点で価値あるものなので何も問題無い。
「……はいはい。やるよ、ロゼ」
 お宝に目を輝かせるローズを急かし、学人は付箋のページを開いた。

 本とノートの解読が始まってからしばらく。
 学人とローズが互いの知識を出し合いながらホントノートを解読する中、
「……ここは多分……って学人、何変な顔してるの?」
 ノートを解読するローズは学人が妙な顔で自分を見ている事に気付いた。
「いや、何か妙な感覚がしてさ」
 学人は軽く肩をすくめながら言った。
「はあ? どういう意味?」
 学人の意味不明な言動にローズの顔が妙になってしまう。
「ほら、ロゼはパラミタに来た当初はさ、お世辞にも頭が良いとは言えなくて……」
 学人は回顧を始めるも失礼な発言をするが、言葉はそこで終わりではないが
「はいはい。確かに医者目指す前は勉強なんて大嫌いだったからね。良いことじゃないの、進歩したってことじゃん」
 頭悪い発言にローズが不満顔で遮った。
「別に貶めているんじゃなくて、何というか感慨深いなと思っているだけで、それに少し嬉しいというか(……それだけじゃなくて寂しさもあるけど)」
 そう言いつつ学人は昔のローズを今のローズを重ねて嬉しさだけでなくじんわりと寂しさも感じていた。時間の流れというものは歩いている時はそれほど感じないのに立ち止まり振り返ると強く感じるものだ。
「まぁ、ありがとう。さっさと仕事するよ、学人」
 少々照れながら礼を言うなりローズは慌てながら仕事に戻った。
「はいはい」
 学人はローズの様子に笑みをこぼしながら、仕事に戻った。
 二人の力によって本とノートは無事に解読された。
 解読が一段落したローズ達の所に
「本で何か分かった?」
 案配を訊ねるセレンフィリティがやって来た。
「この本の付箋は特別なレシピに使用される素材でノートは特別なレシピも含んだ素材の作り方だった」
 ローズは解読した本やノートを手に報告した。
「書類の方は?」
 次は学人がセレンフィリティ達の案配を訊ねた。
「こちらも似たような物ね。全て素材に関する物。オリジナル素材や貴重な物の調達先や仕方素材についてよ。どのような薬品類を調薬していたのかは分かったから特別なレシピについて少しでも迫って薬が使われるまでに具体的な対応や対策を立てるのに少しでも役に立てばいいけど」
 セレアナは報告と共に自分の思惑を明かした。
「時間も経っているから今はどこかで薬を完成させてるかもね」
 セレンフィリティがここにいる皆が思っている事を口にした。
「その可能性はあるね」
 学人はうなずいた。うなずく事しか出来なかった。
「そうなるとさっさと特別なレシピに対抗する魔法薬や手段を用意する必要があるかも。犠牲者を出さないために」
 ローズはこの先の対策について少々提案を口にすると同時に表情を引き締めた。医療に携わる者として犠牲者が出る事だけは何とかしたいのだろう。
「……そうね。とりあえず報告をしておかないと」
 セレアナが代表として皆に情報を拡散した。
 この後、四人は作業に戻った。少しでもこの先に待つ騒ぎの対策が出来ればと。
 セレンフィリティ達が回収した薬品を分析にかけたのは後ほど安全な場所に移動してからであった。結果は、特別なレシピに使用される物やそれ以外の物であった。

 外、隣家の前。

「あのお隣さんがどこに行ったか知らないかな?」
 ルカルカは聞き込み相手として隣人を選んだ。
「お隣さん? あぁ、あの吸血鬼の女か。家からあんまり出ないみたいで会う事はそれほどなかったな。愛想もあんまり良くないし……どこかねぇ、そう言えば、買い物途中、ゴンドラでどこかに向かっているのを見たな。何か荷物を抱えていた」
 隣人である青年は頭を掻きながら頼りない記憶をたぐり寄せつつ答えた。
 そして、ルカルカは礼を言って青年と別れた。
 別れた後。
「……ゴンドラに荷物なら、もうヴァイシャリーにはいないかな(とりあえず、ヨシノに教えなきゃ。車だったら良かったけど。ヴァイシャリーらしい逃走手段ね)」
 ルカルカは推理をするもその結果は残念な事だがすぐさま魔法中毒者の家に戻りヨシノに報告した。

 二階、書斎。

「……日記かノートか何かあればいいが」
 ダリルは机や棚などを隅々まで丁寧に物色していた。
 その結果
「……ん、引き出しの裏に何かあるな」
 机の一番上の引き出し裏に挟まれている紙切れ二枚を発見した。
 取り出して広げると
「人の名前が書かれている物と地名か。どうもリストのようだが……何のためだ?」
 人名が書かれた紙と地名が書かれた紙であった。リスト名は一切記載無くダリルは確認するため『サイコメトリ』を使用した。
 そして、
「……特別なレシピがあると思われる場所と中毒者の名前か。地名は消されていない場所があるが、中毒者リストは真っ黒だな。となれば、中毒者の方は終わったという事か」
 特別なレシピに関連する物だと判明した。捜索し終わった場所・人名を黒く塗り潰した物だ。塗り潰す姿もダリルは見ていた。女性の狂った執念の形相を。
「……他の中毒者から奪ったという事はここの主以外にも中毒者がいるという事か。ならば、そこから攻めるのもありか。読み取った情報だけでは生存は不明だな。とりあえず知らせる必要はあるか」
 ダリルは魔法中毒者を追う新たな手段を思いつくも頼りない方法だと追加の思考はやめて捜索に戻った。後ほどヨシノに提案も含めて報告した。