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リアクション
地下。
地下特有の冷たい空気に包まれた廊下を少し行った先に実験室は存在していた。
「もしかしたら隠し部屋にあるかもだな。特別なレシピへかなりの執着と警戒を持つ奴が他人の目がすぐ向く場所にあるとは思えねぇから」
「確かにね。当然重要なレシピを放置するはずはないけど、どこかに実験した形跡や参考に計算したり整理する際に使ったメモが落ちている可能性はある。それが発見出来れば何かが分かるかもしれない」
白銀と北都は見える実験室には目は向けず、隠し部屋を探していた。先頭を『肉体の完成』を有する白銀が『殺気看破』で周囲を警戒しつつ『超感覚』で不自然な気流や風の抜け道を探り歩いた末、不自然な場所を見付けると同時に目的を同じくする者達に出会った。
「どこかに隠し部屋のような部屋があるやも知れませぬ。そこに重要な物が……」
フレンディスは廊下の先にある目に見える実験室ではなく壁に視線を注いだ。
「隠し部屋の探索ならこの僕に任せるのですよ!」
ポチの助は侵入前に『防衛計画』でこの建物の構造を頭に入れ、有する『超感覚』で異常を探りつつ進んでいた。
頑張る先頭達の後ろ姿を見つつ
「そう言えば、魔法中毒者は旅団の奴らと接触した事があったな」
ベルクは取り壊された遺跡での出来事を思い出すと同時にある事に気付いた。
「では、マスター、魔法中毒者さんを何とかすれば何か分かるという事ですか」
フレンディスはくるりとベルクに振り返った。またまた役に立てるかもと期待に目が輝いていた。
「そうかもしれねぇが、まずは目の前の事だ」
ベルクはフレンディスを落ち着かせ、前を向かせた。
隠し部屋を捜索して少し後。
「ご主人様、ここが怪しいですよ!」
怪しげな場所を発見したポチの助は足を止めた。
「……ここですか」
フレンディスは手で触れ、確認を始めた。
その時、
「間違い無い部屋があるな。風の流れが違う」
同じく隠し部屋を求めて『超感覚』で風の流れを探り歩いていた白銀が合流。
「次は部屋の中を確認をする必要があるけど気を付けた方がいいね。何があるか分からないし」
「そうですね。開ける前に確認ですね」
北都の言葉にフレンディスは力強くうなずいたかと思ったら『壁抜け』で向こう側の確認を始めた。ドアを使わなくと壁を抜けて向こうにいったら同じだというのに。
「ちょっ、フレイ」
天然フレンディスの動向にベルクの止める声は当然届かなかった。
少しした後、
「……真っ暗でした」
確認を終えたフレンディスはにこやかに報告。『ダークビジョン』を有しているため暗闇は障害にはならなかった模様。
「フレちゃん、大丈夫さね?」
「大丈夫です」
マリナレーゼの気遣いにフレンディスは笑顔で答えた。
「んじゃ、開けてみるか」
対策をしている白銀が代表して部屋を開放し安全を確認した後、皆侵入し照明を点けた所で北都に解除薬の話が舞い込んできた。
侵入後。
「……あの効果なら」
『博識』を有する北都は並ぶ薬品の中からレシピを考え、『イノベーション』で材料を集め、マリナレーゼが呼んだヨシノとウララにも手を貸して貰い無事に解除薬を作り上げ引き渡した。その後、北都は『サイコメトリ』で実験器具や実験台の調査を始めた。
「結構、メモとかあるな」
「これはレシピさね」
白銀が発見したメモを『博識』を有するマリナレーゼが覗き込み、レシピと判断した。
「何のレシピか分かるか?」
「……分からないさね。だけど見た事はあるさよ」
訊ねる白銀にマリナレーゼは有する『薬学』をフル活用するが見当は付かないが見た事はある内容に気付いた。
「もしかして特別なレシピか?」
「そうさね」
察した白銀にマリナレーゼはうなずいた。
「フレイ、持って危なさそうな物があったら俺が運ぶから言うんだぞ?」
ベルクは皆の安全を守るためにフレンディスに注意をする。
「はい。早速ですが、マスターあの本見覚えがありませんか」
うなずいた後、早速フレンディスは危険そうな薬品のそばに転がる本を指さした。
「……ん、あぁ確かに……とりあえず確認してみるか」
ベルクはある予感がしながらもまずは確認と危険な薬品に触れないようにと『サイコキネシス』で手元に引き寄せた。
そして、
「白表紙に護衛士のザビスとあるな。フレイ、頼む」
ベルクが表紙を確認しフレンディスに託す。
「マスター、お任せ下さい!」
頼りにされたフレンディスはウキウキと『サイコメトリ』での調査を始めた。
時間経過後、調査に一区切りついた所で報告会が行われた。
「ここの主が持っていたレシピは三枚だったよ。そのレシピの内容までは分からなかったけど他の中毒者から奪い取った物らしい。そして、逃亡先は不明だけどレシピを持ってどこかに逃げようと考えている様子だったよ。他にこっそり黒猫が盗み見る姿があった。しかも何かの魔法薬で追い出されていた……毛が抜けていたから脱毛かもしれない」
北都は読み取った内容を報告。
「もしかしてその黒猫は特別なレシピを見ていたのかもしれないさね。そうなるとただの猫ではなく探求会の人さね」
マリナレーゼは北都の報告からさらりと推理を披露。北都の読み取った記憶により一階で読み取られた記憶と繋がった。
「おそらく間違い無いでしょう。黒猫というのはヴラキです」
「どうして盗み見るような事をしたのかな。何か嫌な感じ」
ヨシノとウララがマリナレーゼの推理の補完をする。
「まぁな。で、そっちはどうなんだ……って、その本は例のか?」
白銀はフレンディス達に報告を促そうとした時、フレンディスの手に見覚えのある本がある事に気付いた。白銀達もまた名も無き旅団とは関わった事があるためすぐさま本の正体に見当が付いた。
「あぁ、そうだ」
白銀が何を考えているのか察したベルクは言葉少なにうなずいた。
ここからフレンディスの報告が始まった。
「魔法中毒者さんが旅団さんの手記に特別なレシピがあるのではと思って手に入れたようですが、無かったようです。他にはこれを書いた方はとても綺麗な女性で剣を使う方でした」
フレンディスは読み取った事を洩らさず全て話した。
「……結局、レシピの全容は分からないままですね」
ヨシノは溜息を吐いた。特別なレシピや魔法中毒者について肝心な事が分からず表情は曇っていた。
「それは心配ないさね。探求会に接近している人から何か情報が来るはずさねよ」
マリナレーゼはヨシノの肩を叩き励ました。
「ありがとうございます」
ヨシノはマリナレーゼの励ましに丁寧に礼を言った。
そして
「……嗅覚は薬品関連の物ばかりのこの部屋じゃ当てにならないが今後のためにこの家の主の臭いは覚えておくか」
白銀は今後の事を考えて家主の臭いをしっかりと鼻の奥に刻み込んだ。
この後もフレンディス達と北都達は調査を続け、結果は全てポチの助がまとめて拡散した。ヨシノは調査の途中連絡を受け、ウララを残して別の場所に行った。名も無き旅団の手記については後ほどイルミンスール魔法学校に託した。
途中、グラキエスから重要な連絡がポチの助の首輪型HC犬式に入り、対応はポチの助がした。
連絡を終えた後、
「……」
ポチの助の表情には明るさはなく少しの心配があった。
「ポチ?」
「大丈夫なのですよ」
自分を心配するフレンディスにポチの助はいつもの元気な顔に戻してから答えた。
「それでポチちゃん、内容は? グラちゃん達からさね?」
マリナレーゼが柔らかめの口調で促した。
「その通りなのですよ。交渉が成功したそうなのですよ。シンリさんの用事が終わり次第、特別なレシピの実作に付き合うそうです。それに……」
ポチの助は地面を見つめながら心無しか声量を落として内容を話し始めた。
「それに? まだ何かあるのか?」
「……魔力を消す薬があと仕上げをして完成なのですよ」
先を促すベルクにポチの助はグラキエス達が求めるもう一つのレシピについて明かした。
「それは本当ですか!! その魔法薬があればグラキエスさんの体も」
フレンディスは素直に魔力を消す魔法薬の案配について喜んだ。
「いや、奴らは言っていただろう。効果があるかどうかは保証出来ないと」
フレンディスとは違いベルクは危惧を口にした。
「確かにそうだけど、調薬に誇りを持つシンちゃん達が下手な事はしないはずだし、グラちゃんは一人じゃないから何か起きても心配ないさ」
マリナレーゼもベルク同様心配を口にするもこれまで見てきた調薬探求会の様子とグラキエスが一人ではないという事から多少心配は払拭している模様。
「あぁ。しかし、本当にあいつら無茶をしやがって」
マリナレーゼの言葉にうなずきながらベルクは心配の溜息を吐いた。
「…………(事件が解決した時皆無事で解決に貢献した僕は皆に褒められて沢山のご褒美に囲まれて)」
ポチの助は首輪型HC犬式に軽く触れ、心中では事件解決とグラキエス達の身を案じながらも事件解決に貢献した事を褒められ撫でられて沢山のご褒美に囲まれる事を想像していた。邪な考えかもしれないが犬らしく可愛らしい考えでもあった。
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