校長室
賑やかな秋の祭り
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夜。 「すっかり夜も更けてるけど、お祭りはまだまだ賑わってるようだ」 「そうね。オレンジ色の明かりが秋らしくて素敵」 待ち合わせ場所に集合したフェイ・カーライズ(ふぇい・かーらいど)とシェリエ・ディオニウス(しぇりえ・でぃおにうす)はオレンジ色の光に包まれた通りを賑やかに騒ぐ人々の姿を見ていた。 「……シェリエ」 フェイはそっと隣に立つ恋人の手を握った。 「……フェイ?」 突然の大好きな人の感触に思わずシェリエは顔を上げ、フェイを見た。 「……ちょっと人も多いし、はぐれないようにしないといけないから」 フェイはシェリエの手を握る手を強くして言った。 「えぇ。でも……もしはぐれても……フェイは捜して見付けてくれるでしょ?」 シェリエはちらりと自分の手を握るフェイの手を見てから少しだけ悪戯な事を口にした。 「それは当然だ。シェリエだって捜してくれるだろう」 フェイは即答と共にお返しとばかりに聞き返した。 当然シェリエの答えも決まっている。 「えぇ、もちろん」 この答えただ一つ。 会って早々、いちゃいちゃを楽しんだ恋人は仲良く手を繋いで祭りを楽しむため歩き出した。 祭り楽しみ中。 「……フェイ、あれ美味しそうよ」 「あぁ、食べてみよう」 シェリエの言葉でフェイは一緒にたこ焼き屋に訪問する事に。 たこ焼き屋。 「よく来た」 店主であるイングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)は快く客を迎えた。 「たこ焼きを二つ頼む」 フェイが代表となって二人分を注文した後 「二つでありますな。すぐに作るので待つでありますよ」 葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)は客の相手をしつつ作り出したイングラハムの手伝いとして具材を渡したりと行動を開始した。 大量の触手を持つイングラハムは客をそれ程待たさずにたこ焼きを作り上げ 「……触手などは入れていないから安心して食べてくれ」 そう言葉を添えてたこ焼きをフェイとシェリエに手渡した。 「……そうか」 「美味しく貰うね」 フェイとシェリエはありがたく受け取り食べ歩きを始めた。 たこ焼き購入後。 「……美味しい」 「そうね」 フェイとシェリエは仲良くたこ焼きを美味しく食べ歩いた。 丁度、たこ焼きを食べ終わった所で 「美味しい料理、沢山あるよ〜、民族料理からみんなに馴染み深い料理まで色々あるよ〜、パーティーだよ〜、料理と花火を楽しもう」 大勢を呼び込もうとするセレンスの呼び声に多くの人が足を止めて屋外に設置された椅子に腰を下ろしていた。 「折角だから行ってみる?」 興味を引かれたシェリエに 「あぁ、シェリエが行きたいのなら付き合う」 フェイは反対しなかった。恋人が望むのならと。二人はパーティーに参加する事に。 「わぁ、いらっしゃい! 沢山食べて行ってね」 セレンスは嬉しそうにフェイ達を迎えた。 参加早々 「これ美味しそうね。民族料理かな」 シェリエは目に付いた民族料理を選んだ。 そこに 「それはレーヴァン族の料理でお兄ちゃんが作った料理」 ブランチェがちらりと近くにいるウッドを見ながら料理の作り手を教えた。 「なら私はこの料理にしよう」 フェイはその隣の民族料理をチョイス。 すると 「それか、是非味わってくれ、俺の自慢の妹が作った物だ」 すかさずウッドが妹の料理の腕自慢をする。朝からずっとブランチェの料理を選ぶ人が現れる度に口にしていた事だ。 「……それは早速、食べよう」 フェイは早速と一口頬張り 「民族料理独特の味悪くない……むしろ癖になる」 口内に広がる独特の味に言葉通り手が止まらない。 「この料理も美味しいです。それにとても時間と心を込めて作られた事が分かります。ワタシもカフェをしているから」 シェリエもフェイ同様満足。カフェを経営する者としていかに大変かも理解していたり。 料理を楽しむ中。 「……みんな踊ってるね。こんなに賑やかな音楽だからかな」 シェリエはふと賑やかな音楽に合わせて客達が踊っている事に気付き、楽しそうに目で追い始めた。 「そうかもしれない。ただ、シェリエには悪いが、ダンスには付き合えない……だって……」 フェイはシェリエが踊りたいと思ったのか申し訳無さそうに口ごもる。 そんな様子に 「フェイ?」 何も分からぬシェリエは小首を傾げながら訊ねた。 「……ダンスは、苦手だ……」 フェイはぽつりと洩らした。シェリエにがっかりされるかもと懸念しながら。 「ふふふ、いいのよ。別に踊りたい訳じゃ無いし……それにワタシはダンスが苦手なフェイが好きだから」 シェリエはフェイの勘違いの気遣いに気付くなりクスクスと笑う。ついでにフェイを照れさせるとっておきの言葉を口にもする。 「…………シェリエ」 フェイは頬染めてどもりながら恋人の名前を口にした。 と思いきや急にフェイは黙って椅子から立ち上がり、むんずと掴んだ。 「フェイ?」 訳の分からぬシェリエはまた小首を傾げると 「……花火を見よう」 フェイは照れながらも一言誘った。 「えぇ」 シェリエは頷き、椅子から立ち上がり、フェイに導かれるまま人気が無く見晴らしの良い場所に移動した。途中で食べ物を買ってから。 見晴らしの良い場所。 「……綺麗だな。オレンジ色で包まれてる街の様子は、こうして眺めているだけでもいいものだ」 フェイはシェリエに寄り添い眼下に広がる美しいオレンジ色に染まった町を見下ろしていた。 「あっ、フェイ」 シェリエがふと夜空に秋にぴったりの色合いをした光の花が次々と開き始めた事に気付き、指し示しフェイに知らせた。 「花火が始まったな」 フェイはつられて花火に目を向けた。 花火が夜空を飾る間。 「……綺麗」 シェリエはすっかり花火に夢中に。 一方。 「……(今回はちゃんと花火の方も楽しもう。何せ夏はそれどころじゃなかったからな……とは言え)」 フェイも花火に目を向けるも夏最後のホテルで見た花火を思い出し 「……(やっぱり、花火なんかよりもシェリエの方がずっと……いや今回こそは頑張って見るんだ)」 思わずシェリエの横顔に目が行ってしまう。夏最後のあの日の二の舞にはすまいと頑張るがフェイにとっての綺麗な物はシェリエでそれ以上の物は存在しないから気が抜けない。 ともかく二人はお菓子を食べながら花火を存分に楽しみ、無事に終了を迎える事が出来た。 花火終了後。 「よし、花火を見終わった所で感想を言い合おう、大丈夫、今回は頑張ってしっかり見たから」 フェイが自信満々な様子で前とは違うと宣言。 その様子に思わず 「頑張ってなんて、フェイったら」 シェリエはクスクスと吹き出した。まるで仕事や戦闘でもしてたかのような様子に。 「花火よりも綺麗なシェリエが隣にいるから頑張らないとそっちにばかり目がいっちゃうんだ」 フェイは心外だと言うようにさらりと惚気た上に 「そう言えば、ちょっと前にみた夏の時は花火の後のシェリエが本当に綺麗で……今でも目に浮かぶ」 からかう。まぜまぜと勇気を出し一歩を踏み出したあの時を思い出して。あの時と違って今は余裕があったり。 「……フェイ……」 シェリエは夏最後の花火の後の事を思い出してか恥ずかしそうに頬だけでなく耳まで真っ赤に染め、フェイをにらんだ。 「からかっただけだよ。でもシェリエがどんな時でも一番綺麗っていうのは本当だよ」 恋人の変わりようにフェイはますます愛おしくなる。なぜならそれほどまで自分を愛してくれているという事だから。 ここで 「……あの時からあっという間に時が過ぎて今は秋。この後もあっという間に冬に……そう思うと寂しくもあるけど、同時に楽しくもある」 急にフェイは真面目な表情で語り始めた。最愛の人と共にいる幸福について。 「……」 シェリエの様子もつられて紅潮が収まり真剣なものに変化していた。 「だって、その季節ごとのシェリエの魅力があって、それを一番近くで楽しめるんだもの。今だって、オレンジ色の街明かりに照らされる姿がすごく魅力的で……」 自分を見つめる青い瞳に虜となっているフェイは吸い寄せられるようにシェリエの唇にキスをしながら強く抱きしめた。 フェイは拒まず受け入れ、 「……シェリエ」 「……フェイ」 互いに触れ合っている瞬間、いやこの先ずっと離したくない感触を感じていた。 そして 「花火も終わったから、今度はシェリエを存分に堪能してもいいよね?」 フェイはそっと甘くシェリエの耳元で囁いた。 「……フェイ」 シェリエはそっとフェイに口付けをする事で答えた。 シェリエの唇が離れると 「……」 言葉はいらぬとばかりにフェイは口元をゆるめ、そのまま恋人達は秋の深みへ。