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リアクション
■
「唯斗さん、エクスさん」
マレーナは玄関に向かって、呼び掛ける。
「やあ、マレーナ」
「マレーナ!」
「管理人さん、こんにちは!」
紫月 唯斗(しづき・ゆいと)、エクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)、紫月 睡蓮(しづき・すいれん)が片手を上げる。
かれらは、今は買い物に出かけているプラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)と共に下宿の雑用係の連中だ。
キリのいい所で、休憩に入ったらしい。
「あれ? 下宿生ですかね?」
睡蓮は腰を上げた。
荒野の果てに、砂埃が見える。
「荷物手伝いに行ってきますね!」
そのまま外へ飛び出して行った。
「気をつけるのですよ!
カツアゲ隊の噂もあります事ですし」
マレーナは注意を促すと、唯斗達の傍に腰かける。
湯呑みを配る。
「アリスらしく出来るものだから、はしゃいでいるみたいだな」
申し訳ない、と唯斗は首を垂れる。
マレーナは彼の生真面目さに苦笑した。
「唯斗、ここは殺伐とした『受験の園』。
マスコットの1人くらい居ても、よろしくてよ」
「そう言ってくれると、助かる」
唯斗は湯呑みを受け取ると、ところで、と思いつくままにマレーナに疑問を投げかけた。
「ドージェの事なんだが…死んだと思うか?」
マレーナは一瞬硬直する。
だが、ゆっくりと頭を振ると。
「けれど今生で再びまみえる事がなければ、それは同じことですわ……」
「なら、ドージェが帰ってきたら、どうする?」
「それは……」
マレーナは言いよどんだ。
実際、彼女は今ドージェがいない、という事実を受け入れることだけで、手いっぱいなのだろう。
(考えることも出来ない、か……)
本当はマレーナの力を借りたいと頼みたい、と望む唯斗であったが、まだ時期尚早のようだ。
「お主自身は、どうなのだ?」
エクスは私も同じ剣の花嫁なのだ、と告げる。
「わらわはまだ戦い続けねばならん。
だが、お主にまだ戦う意思はあるか?
運命に抗い、自らの道を掴み取る意志はあるか?」
「管理人として、余生を送ること。
どれが、私の選んだ道ですわ」
マレーナは毅然と告げる。
「そうか……ならば、ブライドオブシリーズはいらん、と言うことだな?」
あえて挑発するようにエクスは言った。
次は小声で。
「ならば、わらわに貸してもらえぬか?
頼む。今のままでは唯斗を守りきれんのだ……」
「……お貸ししたくとも、手元には無いのですわ」
マレーナは視線を落とす。
「ですが、きっと正しい持ち主の元にあつまるでしょう。
あなたであれば、あなたの下へ」
エクスはそうではない、と頭を振った。
「気が変わったら、ゆっくり考えると良い。
……と、この話は内密にな?」
「プラチナ姉さんが、帰って来ましたよ!」
玄関から睡蓮の声が流れてくる。
3人はそれを合図に分かれた。
「プラチナム!」
「プラチナムさぁん!!」
下宿がにわかに騒がしくなった。
それもそのはず、幾年も浪人生活を送っている下宿の学生達にとって、プラチナムは憧れの的だ。
その冷たい美貌は、「高根の花」以外の何物でもない。
プラチナムは軍用バイクを玄関前に止める。
「あなた達!
窓を閉めて、下がっているのです!」
下宿生達に指示を出す。
唯斗達に対しては、地の果てを指さした。
「カツアゲ隊の偵察隊です!
間もなく、来ます!」
「偵察隊?」
唯斗達は顔を見合わせた。
プラチナムは彼等が偵察隊とはいえ武装していることを述べたうえで。
「今は、親睦会のただ中。
幸い、敵の数は少ないです。
マスター、私達だけで何とかしましょう!」
提案する。
「巧く行けば、『襲撃』の噂の真意を確かめられるかもしれません」
そして、戦闘は始まった。
「マスター、ご自愛を」
プラチナムは魔鎧化して、唯斗に装着する。
「一気に潰すぞ!」
唯斗は封印解凍で、捨て身の攻撃に出る。
「唯斗、頑張るのだ!」
エクスは唯斗の補佐を買って出る。
「これで、どうです!」
睡蓮は火天魔弓ガーンデーヴァで援護で援護を行う。
女風呂と下宿の見取り図目当てに来た偵察隊だったが、そう数が多い訳ではない。
「くっ、これでは拉致が明かねぇ。
退却だ!!」
タッタと逃げ去った。
唯斗は下宿を顧みた。
オンボロ二階家は平穏の中にある。
自分達が盾になったせいで、建物に被害はないようだ。
「まずはよかった」
唯斗は胸をなでおろす。
だが、と続けて。
「『襲撃』の噂は本物らしいな。
ひとまず、マレーナさんに報告しておくか?」
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