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リアクション
集まったダークサイズ幹部たちは、後からやってくるであろうエリュシオン兵を警戒して外での待機組と、牢に乗り込むダイソウ救出組に分かれる。
もちろん牢獄内にも警備兵が詰めている。
クロス・クロノス(くろす・くろのす)は、全ての兵をいちいち倒して騒ぎを大きくするのはよしとせず、看守たちを後ろから一撃のもとに気絶させる。
トマス達のダイソウへの面会、中でも子敬の下調べによって、彼らはスムーズにダイソウの元へ到着する。
「うおおー! みんなよく来てくれたー!!」
救出を待ちながらも、ミカエラのスプーンでカリカリと脱出口を掘っていた超人ハッチャン。
思った通り、穴は全然掘り進んでいない。
さらに、クマチャンはトマスの差し入れたお菓子を食べ、ダイソウは総司の差し入れを堪能している。
まず、クロスのお小言が始まる。
「まったくダイソウトウ。何故そんな恰好で街中を歩きますか。しかも何もせずジョンプを読みながらラジカセを聞いているだけなんて。これは問題ですよ。それに超人ハッチャンにクマチャン。あなたがたは中枢の幹部でしょう。何故ダイソウトウだけでも逃がそうとしなかったんですか、まったくもう……」
「あれよあれよと言う間でどうしようもなかったのだ」
「リーダーが言い訳などしてどうしますか。はぁ……まだ小一時間ほど問い詰めたいところですが、まずは出ることを優先しましょう」
「ところでクロスよ。何故急に皆で救出にやってきたのだ」
突然幹部たちがチームを組んで実力行使で救出にやってきたことに、疑問を感じるダイソウ。
彼は、美羽がピッキングで牢の扉を開けるのを見ながら、クロスに聞く。
クロスは、
「時間がないので結果だけ言います。エリュシオンがダークサイズの敵になりました」
と、こともなげに言う。
当然驚くダイソウ。
「私のいぬ間に何があったのだ。浮遊要塞を買いに来ただけだと言うのに」
「私もよく分かりませんが、あなたはシャンバラのスパイだと。おそらくその尋問は龍騎士団から受けることになります。龍騎士団に拘束されれば、私たちではとても救出できません。ですから急いでやってきたのです」
「ますます訳が分からん。何故私がスパイだと言うのか」
「さーさー、急いで出るよ〜。龍騎士団に包囲されないうちにね」
師王 アスカ(しおう・あすか)が牢からダイソウを引っ張り出す。
「ここからは私たちがしっかり護衛するよぉ。DS幹部・大総統の館3Fガーディアン(自称)としてね!」
大総統の館3階のガーディアンの座を、今回も狙うアスカ。
ここでダイソウを護衛して、しっかりポイントを稼いでおきたい。
「まったく情けない恰好ね。ダイちゃん、あなた軍服が着たいんですって? ほら、買ってきてあげたわよ」
オルベール・ルシフェリア(おるべーる・るしふぇりあ)が、ぽいっとユグドラシルのコスチューム屋さんで買ってきた、軍服を投げ渡す。
ダイソウはそれを見て、
「おお、軍服か。ご苦労だった……なぜピンク色なのだ……」
受け取ったそばからオルベールに不満を言う。
「だってデザインが近いのがそれしかなかったんだもの」
「だからと言って、なぜピンクなのだ……」
確かにデザインは似ているが、やたらファンシーな色遣いの新ダイソウ服。
ダイソウがためらっていると、イシュタンが先ほどの服を持ってくる。
「ダイソウトウさん! だったらこっちの服着てよ! ちゃーんと用意してきたよっ」
「Tシャツとジーンズ……カジュアルすぎないか」
「もう! 文句言ってないで早く逃げようよ」
「うーむ……」
ここにきて二者択一の究極の選択。
ダイソウは軍服とカジュアルを二つ並べて、どちらを着るべきか考え込んでしまう。
そんななか、ルーツ・アトマイス(るーつ・あとまいす)は超人ハッチャンに、
「無事だったみたいだな、ハッチャン」
「ああっ、君はルーツじゃないか! 助けにきてくれたのかー」
総帥であるハッチャンが超人化したことに同情してくれる幹部は数人いるが、中でもルーツは、自ら超人ハッチャンを元に戻すため、色々調べたり実験したりしてくれている。
ルーツは錠剤の入った瓶を取り出して、超人ハッチャンに渡す。
「こういうことをのんびり話せる場合じゃないんだが、脱出の混乱で話せなくなっても困るので、今のうちに渡しておく。こないだもらったサンプルをもとに調べたが、この急激な肉体変化をすぐに元に戻すのは難しい」
「え、あー、うん。やっぱそうだよね……」
「あの訳の分からん薬で、ハッチャンの体内で強制的な変質が起こったのだ。暴走を経て、今無事で済んでいるのも奇跡と言っていい。なので、肉体変化を逆行させるのも、同じかそれ以上の危険を孕んでいると言える。まだ効くかどうか分からないが、これを朝夕二回で一錠ずつ飲んでみるといい。我の計算通りなら、とりあえず肌の色は人間らしくなるはずだ」
「おおおおー! そ、そんなもの作ってくれたのか、君は!」
超人ハッチャンは、感激してルーツの手を掴む。
「長い治療になるかもしれない。まあひとつずつゆっくり元に戻していこう」
「うわああああん! ありがとうルーツ!」
「……気にするな。友達じゃないか」
「と、友達!」
ダークサイズには仲間がたくさんいる。しかし、超人ハッチャンに大して『友達』という言葉をくれたのはルーツが初めて。
超人ハッチャンは、目から汗が止まらない。
「よぉ、内面わいせつクマ野郎。ちっ、無事みてえだな」
クマチャンからいじられ続けながらも、彼に声をかける蒼灯 鴉(そうひ・からす)。
鴉は髪をかき上げながら、初めてクマチャンを上の立場から言えることに、気持ち良さそうに恩を売る。
「まさかおまえのわいせつさが、オーラとしてにじみ出てるとはな。いや〜、全く恐れ入ったぜ」
「う、うっさいなぁ」
今回ばかりは、クマチャンも鴉に強く出れないようだ。
「ともあれ、さっさと姉妹に合流しようぜ。言っとくがクマ野郎、これで一つ貸しだからな」
「むー、わ、わかったよ。こればっかりは仕方ない……よし! どうにかして君とアスカが二人きりになれるようにセッティングしようじゃないか!」
「だー! てめえクマ野郎! そんなことでけえ声で言ってんじゃねえ!」
「え? 嫌なの?」
「嫌とかそういうことじゃなくてな」
「だーいじょうぶだって。恋路は徹底的に協力するさ! それが友達ってもんだろ!」
「おまえと友達になった覚えなんかねえ!」
「さ、じゃあ早速君とアスカ二人きりで、道に迷ってみようか」
「アホかおまえは! そ、そうだ。このジジイも一緒に連れていくんだよな」
アスカにこの会話に気づかれてはまずい鴉は、慌ててダイダル卿を指さして話を逸らす。
「え? なんでこのじいさんも?」
クマチャンは、ダークサイズ幹部たちが何故かダイダル卿を知っていて、さらに連れ出そうとしているのを、鴉に問い詰める。
ダイダル卿は、この監獄を自分の屋敷だと思い込んでいる。
「何を言うとる。ここはわしの館。なぜ出なければならんのじゃ」
かたくなに拒否するダイダル卿の連れ出しに成功するのは、茅野瀬 衿栖(ちのせ・えりす)とレオン・カシミール(れおん・かしみーる)。
衿栖はダイダル卿に向かい、
「どうも初めましてダイダルさん! 私はダイソウトウさんの忠実にして有能な影武者担当! 茅野瀬衿栖でっす! 今日はダイソウトウさんのご親友であられるダイダルさんに、お土産を手配してきたのです!」
「ん? わしとダイソウトウは親友だったかのう」
「そんなダイソウトウさんとダイダルさんの親友記念に、ワインの本場のフランス人に、とっておきの友情ワインを用意しましたっ」
まるで刷りこみのようにダイソウとダイダル卿の友人関係を強調する衿栖。
そこにレオンが、
「『フォルジュ・セギ・キュヴェ・プレスティージュ 1976年』というのはどうだい? ダイダル卿にダイソウトウ。完熟ブドウを原料に、樽香と凝縮感は豊かに。カベルネ・ソーヴィニヨンらしく力強いボディの逸品だ。ただ、これはなかなか持ち運びできないものだからね」
と、フランス語っぽく抑揚をつけながら、ワインの魅力を増幅させる。
「ほう、それはよさそうじゃ」
ダイダル卿も興味を示し、鴉が鬼神力を使って彼の巨体をおぶり、素早く外へ連れ出す。
「さあ、ダイソウトウも、ってまだ迷ってるのぉ〜?」
アスカは、いまだに服を見比べて唸っているダイソウを見て、とにかく外へ出そうと手を引っ張る。
「おおい! 待つけん! オレも助けてくれんかのう!」
と、ダイソウのはす向かいの牢で叫ぶ長門。
彼は、ルーツが手に入れた合いカギで無事抜け出すことができた。
「まだ新手も来てないみたいだよ! 早く行こう!」
美羽が先導して、ダイソウやダイダル卿たちを外へと連れていく。
それと入れ違いに鼎がダイソウ、超人ハッチャン、クマチャン、ダイダル卿のクローン人形を持ちこむ。
「やれやれ、やっとできましたよ」
「ご苦労様です鼎さん!」
衿栖がダイソウ達のすり替え人形として牢に入れ、レオンが時限装置の機晶石を埋め込む。
「鼎さん、この人形の中身は……」
「もちろん、いつものように火薬を詰めてあるよ」
「これに誰かが触れば機晶石のスイッチが入る。そしてこの牢獄は……」
『ふふふふふ……』
三人は黒い笑いを浮かべて、ダイソウ達を追って去っていく。
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