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若葉種もみ祭開催! ~パラ実分校学園祭~

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第4章 我らの荒野を練り歩け!

 種もみの塔の前、パレード用に仮装した面々が集まっていた。
「トリック・オア・トリート!」
「お菓子をくれないと悪戯しちゃうよ!」
 おそろいのミニスカ魔女に仮装した小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)高原 瀬蓮(たかはら・せれん)が、はしゃきながらコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)アイリス・ブルーエアリアル(あいりす・ぶるーえありある)にまとわりつく。
 自分の周りをくるくると回る二人に、コハクとアイリスの目も回りそうだ。
「わ、わかったから、止まってくれ。目が回る」
 降参するように両手をあげるアイリス。
「パレードで騒ぎ過ぎて転ばないようにね」
 二人を心配しつつも、コハクは用意してきた棒付きキャンディを手渡した。
 そこへ、ギラギラと眩しいトラックが盛大にクラクションを鳴らしてやって来た。
 運転席から、本家B級四天王のカンゾーが顔を出す。
「準備できてるか?」
「後はブラヌのデコ農耕車だけだな」
 答えたのはカンゾーと同じくB級四天王のチョウコだ。
 チョウコは眩しそうにトラックを見上げた。
「すげー眩しいんだけど。目潰し?」
「昼間に電飾つけても目立たねぇだろ。よく反射するシルバーとゴールドの金属玉をつけたのさ」
「荷台に乗ってる巨大な風船人形はドージェか?」
「へへっ」
 おしゃべりしていると、重いエンジン音を響かせながら待っていたデコ農耕車がやって来た。
 ブラヌ・ラスダーが手を振っている。
「待たせたなー!」
 使い込まれた農耕車のいたるところに、ハロウィン仕立てにくり抜いたカボチャがくっついていた。弾力のある細い金属棒の先にはコウモリのおもちゃが括りつけられ、ぷるぷるとユーモラスに揺れている。
「全員そろったな。よーし、行くぞー! 熾月!」
「あいよ!」
 楽隊を率いる熾月 瑛菜(しづき・えいな)が合図すると、ヴィナ・アーダベルト(びな・あーだべると)がカボチャと髑髏の大きな旗を掲げた。有志で作ったものだ。
 若葉分校生、種もみ学院生らがどこからか持ってきた大太鼓や小太鼓、トランペットの音が響く。中には法螺貝を持ってきた者もいた。
 瑛菜の隣ではアテナ・リネア(あてな・りねあ)がサックスを吹いている。
 目が合い、二人は笑みを交わした。
 時折、デコトラのクラクションが参加した。
 花火が上がり、パレードが出発した。
 種もみの塔を訪れていた客達が歓声をあげて彼らを送り出し、子供達が後をついて来る。
 楽隊の後ろにはダンサーが続いた。
 これをまとめているのは吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)だ。
 サンバカーニバルのダンサーのように、頭部や背中に派手な羽飾りをびっしりつけて、音楽に合わせてノリノリで踊っている。
 彼の格好を見て、ダンサーとして参加を決めた両分校生は似たような格好で好き勝手に踊っている。
 その中に、黒崎 天音(くろさき・あまね)ジークリンデ・ウェルザング(じーくりんで・うぇるざんぐ)がいた。
 シャンバラ女王のような豪奢な衣装を身に纏ったジークリンデと、吸血鬼の仮装をした天音の踊りは優雅だ。
「ヒャッハー! 吸血鬼が女王様をさらったぜ〜! その血はうまいか、うまいか!?」
 と、ダンサー達が囃し立てる。
 天音は付け牙も装備していた。
「楽しいわね!」
 綺麗に笑うジークリンデに、天音も楽しそうに微笑んだ。
 そして、いよいよノッてきた竜司は歌った。
 楽隊の音量と張り合うように、クラクションに喧嘩を売るように!
 たまたま近くにいた、軽い素材の白い布をすっぽり被ってゴーストの仮装をしていたレナリィ・クエーサー(れなりぃ・くえーさー)が直撃を受け、あらぬ方向へフラフラと漂っていく。本物のゴーストのようだった。
「レナリィ、そっちには何もありませんよー!」
 佐々布 牡丹(さそう・ぼたん)が呼びかけるが、聞こえているのかいないのか。
 ひとまず捕まえるために後を追う。
 黒猫の仮装にと腰にくっつけた黒い尻尾がひらりと揺れた。
「レナリィ」
「はにゃ〜☆」
「番長……恐ろしい人!」
 竜司はたまにトロールと間違われるが、若葉分校名誉番長という地位にいる。
「%※◆○&ァ×#▽〜!」
 声と音程が凄すぎて、まともに聞くことを耳が拒否していた。
「はははっ。相変わらずだな」
 ジャック・オ・ランタンの被り物をした大谷地 康之(おおやち・やすゆき)が苦笑する。
 その横で、アマガエルの着ぐるみを着た風馬 弾(ふうま・だん)がピョーンと跳ねた。
「あれって武器に数えていいよね。精神攻撃的な」
「すでにダメージ負ってる人にはとどめみたいな」
 聞こえていないと思って言いたい放題である。
 着ぐるみの奥で弾はクスクスと笑う。
「ふだんの励ましは元気でるのにね。ま、この勢いでみんなが飛躍できるといいな!」
 そう言って、弾はまたピョーンと跳んだ。
「蛙はなかなか淡泊な味でな」
 ぬっと現れたのは、アメリカのホラー映画に出てくる案山子男に仮装した如月 和馬(きさらぎ・かずま)
 あまりによくできていたので、弾も康之もビクッとしてしまった。
 それを見て和馬は笑う。
 後ろから来るデコ農耕車が妙な迫力を演出していた。
 その農耕車の後ろからついて来るのは、リーア・エルレン(りーあ・えるれん)
 ふわふわの白いネコミミと尻尾を付け、手には鞭を持っている。
 周りには猫や犬がたくさんいた。
「ふふふ。みんな、はぐれないようにね」
 かわいい動物達に囲まれて楽しそうだ。
 もちろん、この動物達は……。
「ピー、ピピピピピー!」
 首に緑のリボンを巻いた小鳥(詩穂)が低空を飛び回っている。
「わん、わわわん、わーん!」
 藍色の首輪をし、三角帽子をかぶった柴犬(彼方)が、小鳥を追い掛け回していた。
「にゃーん、にゃん」
 かぼちゃの服を着たふわふわな栗色の子猫(テティス)が、柴犬を止めるように回り込んで、にゃあにゃあと何かを訴えている。
「くぅーん、わんわん」
「にゃん、にゃー」
 そして、柴犬の手に子猫がすり寄ると、柴犬は大人しくなった。
「止まってないで歩く♪ お客様が見てるわよ〜!」
 リーアが鞭を振るうと、キラキラ光る虹が生まれた。
「ピーピピピー!」
 小鳥はリーアの頭にとまって歌いだす。
「にゃーん」
 子猫が走ってリーアに近づき、猫達と一緒に行進しだすと。
「わん、わわん」
 柴犬は殿の様に、動物たちの後に続いた。
 リーア一行と一緒に歩くのは、シアル
 白雪姫に仮装している。
「姫さん達、疲れたら俺の隣に座っていいんだぜ」
 デコ農耕車を運転するブラヌが顔を出して言う。
 彼は原色を使ったド派手な王子の格好をしていた。何を参考にしたのかはわからない。
「曲がってる、曲がってるよ!」
 ブラヌがよそ見をした農耕車はパレードの列から外れていっていた。
 シアルの指摘にブラヌは慌てて進路を正した。
 二人の後ろにはチョウコがいたのだが、彼女は契約の泉の聖獣となった金色のアルミラージと、乙王朝から遊びに来て馬車の馬として働くはめになった虹キリンを連れていた。
 チョウコがアルミラージの背に乗る御神楽 舞花(みかぐら・まいか)を見上げて言った。
「乗り心地はどうだ?」
「とっても良い眺めです! でも、鞍があったほうが安定感はあったと思います」
 魔女の仮装をした舞花の返事にアルミラージが返す。
「オレ様を乗り物にするたァな〜」
「今日は祭りだ、いいじゃないか」
 チョウコがとりなすと、アルミラージはフンと鼻を鳴らした。
「小娘、落ちないようにしっかり乗ってろよ」
「はーい!」
 いつも落ち着いた舞花には珍しく、はしゃいだ声が返ってきた。
 虹キリンの右側には、十面カボチャ鬼の仮装をした国頭 武尊(くにがみ・たける)がいた。
 下半身を覆う巨大なジャック・オ・ランタンは光を発し、武尊の頭にすっぽり被っているカボチャの被り物は目が赤く光っていた。
「お前……カボチャ怪人か?」
「カボチャ鬼だ」
 虹キリンの疑問に答える武尊。
 納得した虹キリンは、今度は左側を見る。
「お菓子をくれないと大暴れしちまうぞ〜! お菓子は山吹色のお菓子に限るぞ〜!」
 欲望丸出しの要求をしている猫井 又吉(ねこい・またきち)が、ついて来る子供達にガオーッとおどけていた。
「怪獣に食われた猫か?」
「いや、大怪獣だ」
 又吉は怪獣の着ぐるみを着ている。
 フード部分が怪獣の口にあたるため、丸飲みにされているように見えた。
 その姿が子供達に人気だったのだ。
 もう一組、子供に人気の二人がいた。
 ハロウィン風に和服をアレンジした衣装の遠野 歌菜(とおの・かな)月崎 羽純(つきざき・はすみ)だ。
 お菓子を持ってきたためか、子供達から『トリック・オア・トリート!』の猛攻を受けていた。
「あっ。お菓子なくなっちゃった。どうしよう」
 歌菜の声を聞きつけた子供達が、
「悪戯だ〜!」
「罰ゲームだ〜!」
 と、騒ぐ。
 羽純も最後のお菓子を渡し、近くにいた子供の頭を撫でた。
「デコトラのにーちゃんがいっぱいお菓子を持ってるぞ」
 羽純は何気ない顔でカンゾーに丸投げしたのだった。
 その後、カンゾーはお菓子がない代わりに子供達をトラックの荷台に乗せて、喫茶店まで運ぶことになる。
「荒野はいっつも暑いから、泳ぎたくなるよね!」
 ビート版を掲げて元気に言うのはレオーナ・ニムラヴス(れおーな・にむらゔす)
 隣ではおそろいのスクール水着姿のクレア・ラントレット(くれあ・らんとれっと)が歩いている。
「途中で泉でもあればいいですわね」
「ずーっと荒野だったと思うよ」
 と答えたのは、二人と同じ百合園生の鳥丘 ヨル(とりおか・よる)だ。
 彼女は大正時代の女学生の格好をしていた。
「もう半分以上は過ぎたんじゃないかな」
「ヨル様、レオーナ様、喫茶店に着いたらシアル様のお店でお茶をいただくのも良いと思いませんか?」
 クレアの提案に、二人はすぐに賛成した。
 女の子が集まるとたちまち絶え間ないおしゃべりが始まるものだ。
 楽しげな少女達の様子を、ねっとりと見つめる視線があった。
 全身金ぴかの土偶……いや、魔鎧のブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)
 これは、童話『幸福の王子』の仮装である。
「いい眺めだけど、ボクが満足するおっぱいには程遠いかな……グフフッ」
 と言いながらも、見ていて一番好みの位置をキープする。
 中身はどこまでいってもブルタだった。
 それからしばらくして。
「見えてきたな」
 フランケンシュタインの仮装をしたジャジラッド・ボゴル(じゃじらっど・ぼごる)が、若葉分校である喫茶店を見とめた。
 若葉分校生や大勢の客が手を振ったり楽器を鳴らしたりして、パレードの到着を待っている。
「終点まで競争だー!」
 と、言い出したのは誰だったか。
 仮装した一団がワッと駆けだす。
 ジャジラッドもフランケンシュタインの雰囲気を出して、前の者達を襲うように追いかけた。
 パレードを迎えた若葉分校生が盛大に爆竹を鳴らし、パレードは大騒ぎの中終わりを告げた。