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若葉種もみ祭開催! ~パラ実分校学園祭~

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第5章 誇り高き戦士達

 パレードが終わると、再び両分校の出し物が活動を再開した。
 カンゾーは種もみ学院生と作った闘恐竜用闘技場で、ジャジラッド・ボゴル(じゃじらっど・ぼごる)が連れてきた数頭の恐竜を興奮した顔で見上げていた。
「Tレックスにトリケラトプス、翼竜からはプテラノドンだ。個より群の強さで敵を翻弄するディノニクス達もと思ったが、闘技場に収まりそうにないんでやめた」
「ボゴル、こいつはスゲェ戦いになるぞ……! なあ、加能。楽しみじゃねぇか」
「ええ。全力でいきましょう」
 静かに、だが熱い闘志のこもった目で加能 シズル(かのう・しずる)は頷いた。
 カンゾーはやる気満々の種もみ生達を見渡す。
 と、その中にアメリカ合衆国テキサス州からきた酪農家のマリが、のほほんとした笑顔で混じっていた。
 契約したとはいえ基本的には地球にいた頃とほとんど変わらない生活を送っている彼女。
 闘恐竜に出て大丈夫なのかと、カンゾーは心配になった。
「あら、私はこれでもカウボーイの妻よ。ロープもあるわ」
「いや、それ牛用のロープじゃ……」
「私はこれで充分よ。あなたこそ、そんな剣一本で大丈夫なの?」
 ひとまずカンゾーにわかるのは、この人に怪我をさせたらブチ切れた旦那のライフルに撃ち抜かれるということだけだった。
「フ……いいぜェ。じゃあ、お前は切り札だ。俺らが恐竜の気を引く。うまくやってくれよ。さて、俺らの相手はTレックスだ」
 カンゾーの視線を受けたジャジラッドが頷く。
「まともに当たったらお陀仏だな。ま、骨は拾ってやらなくもない」
「そいつはどーも」
 種もみ生の司会者が試合開始を告げた。
 観客席から戦いの様子を見るジャジラッド。
 ほとんど彼の思った通りの試合展開になっていた。
 まともに戦えるのはシズルとカンゾー。何とかマリがついていっている。
 しかし、種もみ生もしぶとかった。
 トリケラトプスの突進に吹っ飛ばされても、少しすれば復活して参戦している。
 タイ捨流剣術の使い手であるシズルをじっと見つめる。
「アイリスにマレーナ、そしてシズル……。まだ可能性はあるぞ、シズル」
「何の話だね?」
 ふと現れた隣の人物は、ジャジラッドがラスベガスから連れてきた元ディーラーの老紳士だった。
 祭りをやると聞いて見物に来たのだ。
「アイリスとマレーナを見たことはあるか? パラ実の校長の二人だ」
「写真だが見たぞ。なかなか魅力的な娘さん方だな。もう一人もチャーミングだった」
「そこにさらに一人加わるというのはどうだ?」
「あてがあるのか?」
「シズル……刀で戦っている女だ」
 Tレックスに果敢に挑む彼女を見とめ、老紳士は感心したような息を吐いた。
「美しく凛々しい娘だな」
「この勝負に勝ったら、恐竜騎士団に誘ってみようと思っている」
「恐竜騎士団?」
「その昔、入団の儀式として恐竜と戦い、勝った者だけが在籍を許された騎士団だ」
「ほう」
 老紳士はシズルを見つめる。
 ジャジラッドはヒンヌー教ではないがシズルがパラ実に来れば、アイリス、マレーナの胸とシズルの胸を交互に見比べながら、双方の良いところを再確認できるだろうと考えていた。
 この老紳士が同じことを望んでいるとは思えないが、キャバクラ喫茶で喜んでいたことから女性が増えるのに反対はないはずだ。
「だが、あの凶暴な恐竜相手に勝てるかね」
「勝つさ。負ければまあ、それまでだ」
 大勢の観衆が声援を送る中、カンゾー達が勝負に出た。
 カンゾー率いる種もみ生がTレックスに目潰しを喰らわせた。
 動きが鈍ったわずかな隙を突き、Tレックスの体を足場に飛んだシズルが上段から袈裟斬りにする。
 その際、刃が返されていたことにジャジラッドは苦笑した。
 最後にマリがロープを投げてTレックスの首を絞めて落とす──。
 はずだったが、ロープはTレックスの歯に絡まった。
「あ、あら、どうしましょう。えい……えいっ!」
 マリがロープを外そうと力いっぱい引いた結果、なんとTレックスの歯が抜けてしまった。
 あまりの痛みにTレックスは客席と観客を吹っ飛ばして逃げ去っていく。
「……勝ったな」
「……ああ」
 何とも言えない勝ち方だった。

 くたくたのボロボロになって闘技場を出てきたカンゾー達に、ジャジラッドはひとまず祝いの言葉をかけた。
 そして、老紳士と話した通りにシズルを恐竜騎士団へ勧誘してみた。
「お誘いは光栄だけれど、私は恐竜騎士団でうまくやっていく自信がないわ」
 そう言うかな、とジャジラッドも予測していた。
「お前がさらなる強さを求めるなら、恐竜騎士団でもまれるのは良い経験だと思うが?」
「強さ──たぶん、私が求める強さとあなたの言う強さは違うと思うの。でも、この勝負が本当に良い経験だったのは確かよ。あの恐竜、歯が抜けてしまったけれど大丈夫かしら」
「クッ……負かした相手を気遣うか。あの程度、どうということはない」
「それならいいけど」
「ところでシズル。話は変わるが、恐竜の卵や肉は栄養価が高い。まだ成長は可能性はあると思うぞ」
 囁くように言ったジャジラッドの視線は、シズルの胸元を向いている。
 パッと頬を赤くしたシズルが、刀の柄頭でジャジラッドの顎を突き上げた。