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リアクション
六
「死んだフリ?」
騎沙良 詩穂(きさら・しほ)が尋ねるが、服装からして、忍者のようには見えない。その傍らには大量の土が盛ってある。
清風 青白磁(せいふう・せいびゃくじ)が銃型HC弐式で体温を調べた。反応がない。
「死体のようじゃの。――そうじゃ。のう、カタルとオウェンよ、ここは無数の社祠があるが、あの化け物の封印を施せることが可能な社祠がこの中のどれかと違うか? わしの【トレジャーセンス】と【野生の勘】で、封印を施すための社祠を見つけたるわい、安心せい」
青白磁は、はっはっはと笑ったが、
「一番下の社祠だというのは、分かっています」
と、カタルがあっさり答えたので、がっかりした。
フレンディスがに近づくと、突然、忍者たちが現れた。
青磁白が再び銃型HC弐式を使った。――体温がない。この忍者たちは、生きていない。
「おそらく、傀儡だろう」
オウェンが言った。
「この洞窟を守るため、要所要所に配置されているのだ。意思も意識もない、ただの人形だ」
「だったら、遠慮はいらないよね♪」
詩穂がにんまりとし、続けて青磁白が鎧となって彼女を包み込む。
「参ります」
フレンディスが「忍刀・封龍刀」を抜き、千里走りの術を使った。すれ違いざま、胴を一刀両断にする。
忍者が崩れ落ちる。――が、しばらくすると、再び立ち上がる。全くダメージがない。
「人形、かよ……」
ベルクが顔をしかめて、舌打ちした。彼は生命や意識のない物に効く術を持っていない。
「じゃ、そこで見学してなよ!」
立ち上がった忍者がフレンディスに切りかかる。が、突然、燃え上がった。フレンディスもベルクも何もしていない。ただ、詩穂だけが笑っている。
セルフィーナ・クロスフィールド(せるふぃーな・くろすふぃーるど)は、ここまでマッピングしてきたデータを、他の契約者に渡した。そして、「優しの弓」に矢を番えた。
フレンディスが左右に素早く動き回り、忍者を切り捨てていく。動きが止まる忍者を、何かが燃やす。
詩穂は【疾風迅雷】で忍者に近づき、拳を叩き込んだ。忍者は体をくの字に折り曲げたが、すぐに詩穂の首筋へとクナイを突きつけた。
それをセルフィーナの【神威の矢】が襲う。
その間に忍者たちをすり抜け、カタルたちは橋の反対側へ渡り、階段を降りていった。
ただ一人、戦う術を持たぬベルクは考えていた。
この不死身の忍者たちは、どうやって動いている? 動力源は?
その答えが見つからなければ、この戦いは永遠に続くかもしれなかった。
地下二階へと階段を駆け下りながら、一ノ宮 総司(いちのみや・そうじ)はカタルに話しかけた。
「カタルさん、貴方がたは一体何者で、何が目的なのですか? 教えて下さい、僕らは今起きてる事件から、葦原を守りたいんです! お手伝いできることがあれば、是非協力させて下さい!」
「私たちは、『梟』です」
カタルはそう言ったきり、口を噤んでしまった。何をどう話していいか、分からないようで、唇を噛んでいる。
代わりにオウェンが話してくれたのは、ヤハルが語ったこととほぼ同じ内容だった。
「『ミシャグジ』、ですか」
友人の鍵屋璃音にも話してやろう、と総司は思った。
そんなオウェンを、土方 歳三(ひじかた・としぞう)はじっと見つめていた。
「何か言いたいことがあるのか?」
「お前の目に映るカタルは何に見えてんだ? お前は何なんだ?」
「……俺は、監視役だ」
やはりそうか、と歳三は納得した。オウェンのカタルを見る目は冷たい。総司の守役を自認している歳三としては、実に気に入らなかった。
二番目の橋にも、やはり死体が転がっていた。四体。
樹月 刀真(きづき・とうま)は地下一階の橋を見上げた。戦いがまだ続いている。死体は、地上にはなかった。あれだけの忍者がいたのに、犠牲者が出なかったとは思えない。
再び死体を見る。四人の中に、年寄りとまだ幼さを残す少年がいる。
「――落とした、か」
そう考えれば、納得がいく。それにしても、死体に共通点がないのが気になる。
調べるために近づくと、案の定、オウェンが傀儡と呼ぶ忍者たちが現れた。
「なるほど、灯篭に灯がつくと、現れる。――灯篭を壊すと、どうなる?」
だが、明かりが消えて困るのは当の自分たちだ。刀真は試すことを諦めた。
「まいったわね……」
嘆息したのは、漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)だ。忍者を捕えて情報を得るつもりだったが、作り物ではどうしようもない。
「諦めるのはまだ早い。石化してしまえばよい」
玉藻 前(たまもの・まえ)が言うが、月夜はかぶりを振った。
「【ペトリファイ】は生物にしか効かないわ」
「そうか、それは困ったな。では倒すしかあるまい!」
月夜が【バニッシュ】を放った。と同時に、前は【地獄の天使】を使ったが、何らかの力が働いているらしく、飛ぶことはできなかった。
「忍びの方々、お二人には手出し無用でお願いします。この僕、一ノ宮総司が相手だ!」
総司が声高に名乗った。が、当然、効果はない。しかし、最前線に出た総司を、忍者は敵と認識した。総司に忍者が集まったところで、歳三が【実力行使】をかける。
忍者が橋から吹っ飛ぶ。そして、消えた。正確には、土くれとなった。
「土で出来ているのか――まさに傀儡」
刀真は呟いた。消えた人数分の忍者が、再び現れる。
「少ぉし頭にきた。月夜、時間を稼げ。我がこ奴らを「大魔弾『コキュートス』」で滅ぼしてくれる」
「それは駄目だ。下手をすると、橋が崩れる」
言いながら、そういうことかと刀真は納得した。この奇妙な造りと傀儡の忍者は、二つ一緒のセキュリティシステムなのだ。忍者を撃ち滅ぼすほどの力を使えば、橋も階段も壊れる。空が飛べない以上、脱出は出来ない。
忍者の動力源を見つけなければ、どうしようもないのだ。考えた人間は、よほど性格が悪いと見える。
結局のところ、今出来るのは他の契約者と同じこと。
「――先へ、行け」
左手に白の剣を、右手にワイヤークローを。
刀真は地面を蹴った。忍者がクナイを突き出す。それを白の剣で受け流し、するりと死角へ回り込むと、【金剛力】を使ってレガースを叩き込んだ。次の忍者は懐に入り込み、首を掴むと無理矢理に引き寄せた。白の剣が、心臓部を貫く。
出来ることはただ一つ。
カタルのための、時間稼ぎだ。
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