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リアクション
七
三番目の橋は、やや様子が違った。
練が、「灯篭がついてない」と呟く。言われてみれば、橋の両側にある灯篭は、どちらも灯が消えている。
「ってことは、忍者はいねーってことか?」
エヴァ・ヴォルテール(えう゛ぁ・う゛ぉるてーる)が不満そうに鼻を鳴らす。
「そういうわけでも、なさそうです」
桐ヶ谷 真琴(きりがや・まこと)の【ディテクトエビル】に反応があった。
橋の中央、社祠の傍に陣取っているのは、三道 六黒(みどう・むくろ)とドライア・ヴァンドレッド(どらいあ・ばんどれっど)だった。灯篭の代わりに、松明があちこちに置かれている。
「よくぞ来た」
「梟雄剣ヴァルザドーン」を肩に乗せ座る六黒は、オウェンに目をやった。
「用があるのは、貴様だけよ」
オウェンの眉が、怪訝そうに寄る。
六黒は、“女”からカタルとオウェンの話を聞いた。気に食わない。若造に命を懸けさせ、己は安全圏にいる、というこの男が。それに無論、封印されている怪物にも興味がある。
そのために六黒は、“女”の送り込んだ男たちと共に、この洞窟へやってきた。傀儡の忍者たちは、侵入者を全員敵と見なすらしく、已む無く灯篭の灯を消し、カタルたちがやってくるまでは暗がりで待ち続けた。
「その男を置いていけば、後は用もない。おぬしらは通してやろう」
「そうはいかない」
桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)が「薔薇の細剣」をすらり、と抜く。
「先へ行け。ここは引き受けた」
「分っかんねぇなあ。おまえら、どうしてそこまでそいつらを信じられるわけ?」
ドライアが頭をぼりぼり掻きながら尋ねた。煉の眉が寄る。
「俺は師匠を信じてるから、こうしておまえらとやり合うのも命懸けなのも分かるけど、お前らは何なわけ? そいつら、ひょっとして悪党かもしれないだろ?」
「簡単よ」
答えたのは、エリス・クロフォード(えりす・くろふぉーど)だ。「地上では多くの人々が襲われている。そして彼らの仲間が、救おうと駆けずり回っている。私たちはそれを信じた」
「命懸けの行動は、信頼に値する」
と、煉。
「上等」
ドライアがにやりと笑う。
六黒が、とん、と鞘で地面を突いた。
それを合図に、ドライアが【毒虫の群れ】を展開する。
「スキルサポートデバイス」「黒檀の砂時計」「彗星のアンクレット」「勇士の薬」を使った六黒が、間合いを詰めてオウェンに斬りかかる。
オウェンの棒が、真っ二つに折れ、脳天に「梟雄剣ヴァルザドーン」が振り下ろされる。が、その背後に煉の姿があった。アルティマレガースをつけた脛が、六黒の後頭部を直撃した。
「残念だったな。俺、足癖が悪くてよ……!」
六黒が膝をつく。更に斬りかかろうとするが、ドライアの体当たりで煉は吹っ飛ばされた。
ドライアは煉に襲い掛かるが、今度はエリスの【ディフェンスシフト】がそれを遮る。
エヴァが【弾幕掩護】を張った。
「行け!」
カタルとオウェンは、その隙にすり抜ける。オウェンは、六黒にちらりと目をやった。
六黒は頭を振り、眩暈を取り除こうとする。器は分からなかったが、あの瞬間、オウェンは視線を逸らさなかった。
――肝は座っているらしい。
六黒は思わず笑みを漏らし、やおら立ち上がった。まだ、ふらついている。
それをチャンスと見て取ったエヴァが、アクセルギアで一気に近づき、パイルバンカーで【真空波】をお見舞いした。
が、その時、六黒は文字通り、鬼と化していた。【鬼神力】だ。鎧に傷はついたが、六黒自身は無傷。大きく開いた口で、エヴァに襲い掛かる。
真琴のタクティカルアームズが六黒のこめかみを撃つ。僅かに体が揺れ、六黒はゆっくりとそちらに顔を向けた。
エリスがエヴァの腕を掴んで引き戻す。
「何やってるの! 私がいなかったら、死んでたわよ!」
「うるせー! いきなり変身したあいつが悪い!」
六黒は、のしり、のしりと真琴へ近づいていく。
吹っ飛ばされた煉が、ドライアを相手に【ウェポンマスタリー】で華麗な剣捌きを見せていた。ドライアは次第に端へ追い詰められていく。しかしその時、煉はパートナーたちに迫る六黒に気づいた。
「くそ!」
クラウ・ソラスを抜き、引き金を引く。
六黒の背中に、大きな衝撃があった。
「よそ見してんじゃねぇ!!」
ドライアが地面を蹴り、社祠に足をかけ、大きく飛び上がった。そのまま、煉目掛けて【龍飛翔突】を繰り出した。
轟音と共に橋に大きな穴が開いた。蟲が煉たちに襲い掛かる。
「しまった!」
真琴が【凍てつく炎】で蟲たちを消し去ったとき、六黒もドライアの姿もそこにはなかった。
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