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リアクション
【5】GURDIAN【2】
『近い順に、G(ガーディアン)1、G2、G3と仮称。各機、情報連結をお願いします』
睡蓮は登録したデータを各機に送信した。
『情報連結完了。敵の力が未知数な以上、集中攻撃による各個撃破だ。まずはG1を抑えるぞ』
モニターに開いたウィンドウに恭也が映る。
ラーズグリーズと厳島三鬼はG1に火力を集中させる。ラーズグリーズのツインレーザーライフルと、厳島三鬼の20ミリレーザーバルカンによる怒濤の弾幕が張られる。しかしG1の速度は思ったよりも速く、すぐに射線から脱した。
『射撃中止! 目標がラボの後ろに入りました! あ……!』
刹那、ラボの裏側から伸びたG1の腕が、厳島三鬼に叩き付けられた。咄嗟にスラスターを噴かせて、態勢を変え、致命的なダメージは避けられたものの、コントロールを衝撃に奪われ、後方のラボの一棟に叩き付けられた。
『く……っ!』
『おい、厳島三鬼、大丈夫か……って、こっちも人の心配してる場合じゃねぇな』
ラーズグリーズは機動性の高さを活かし攻撃を回避。
「……G1による攻撃の軌道計算終了。画面にガイドを表示します」
「伸縮自在の腕か、厄介だな……。だが、このラーズグリーズを舐めてもらっちゃ困る。エグゼリカ、加速に備えろ」
「は、はいっ」
画面に表示される赤いライン(攻撃予測ガイド)をかいくぐり、G1の側面に回り込む。
『喰らえっ!!』
銃口から発射された一条の閃光がG1を貫く。
『グガアアアアアアアアァァァッッ!!』
『まだまだまだまだァ!!』
トリガーを何度も引き、反撃の余地を与えないよう、G1を一方的に攻撃する。
そこに七瀬 灯(ななせ・あかり)の駆るミネルバも攻撃に加わった。ところが、ロングレンジライフルによる援護射撃は弾丸は目標を大きく逸れ、後方のラボに被害を与えてしまっている。
「……駄目です。FCSの精度が著しく低下しています。精度補正……く、時間がかかり過ぎます。間に合いません」
「出力もまったく上がらねぇ……」
灯の右腕に移植されたラトス・アトランティス(らとす・あとらんてぃす)は呻いた。
そればかりか、コクピットを空間の浸食が襲う。身体にのしかかる疲労と重圧が、操縦をより困難なものにしている。
「アイリさんの言っていた”シャドウレイヤー”、本当に存在したんですね……」
「自称未来人の話か。そんなもの存在するわけない……いや、存在して欲しくないと思っていたが、目の前に突き付けられる羽目になるとはな……」
「……どうしますか?」
「この出力で戦闘じゃ自殺行為だ。一旦ここから離れよう。態勢を立て直してから、もう一度打って出る……!」
「了解!」
G1は弾幕から抜け出した。
機動性ではややラーズグリーズに劣るものの、近接戦になってしまえば、それは微々たる差だ。
一気に間合いを詰めたG1は、その拳でラーズグリーズを殴りつけた。衝撃に機体が大きく後方に弾かれる。
『ぐ……っ!』
パワーではG1に軍配が上がった。しかも近接戦での精密動作(反応速度)も、向こうの方が上だ。
『いけません……!』
復帰した巌島三鬼はカットアウトグレネードをG1に叩き込んだ。
『カットアウトグレネードによる機晶石干渉……皆無! ガーディアンの動力は機晶エネルギーではありません!』
『ガアアアアアアアアアッ!!』
『ならば……!』
巌島三鬼の発射した超電磁ネットにG1は捕らえられた。
『今です!』
『うおおおおおおおおおっ!!』
再び巌島三鬼とラーズグリーズが集中砲火を浴びせると、G1の各部から爆発が起こった。
『G1の体温が急速上昇……』
動力部爆発の前兆か、一瞬そう思った睡蓮だったが、サーモグラフィの上昇値が異常な事にすぐに気付いた。
プラント調査隊からの報告を思い出す。
『プラントの壁は強力な熱線によって融解していた……いけない。すぐに離れてくださいっ!』
『……!? わかった!』
二機が左右に避けたその瞬間、強烈な閃光が一直線に発射された。後方にあった施設が一瞬で蒸発する。
『な、なんだあの威力……!? 直撃を喰らってたらオダブツだったぞ……!』
『グガガ……神より賜りし聖なる火”メギドファイア”、我等が敵に浄化の炎を……!』
『メギドファイア……?』
脅威の一撃に戦慄する二機の上を、G3が飛び越えた。敵はミネルバを指向している。
『まずい。援護に……!』
しかし、電磁ネットから解放されたG1は再び長い腕を振り回し、攻撃を仕掛けてくる。
『く……!』
『こっちを放って行くわけにもいかねぇか。閃崎の奴は……?』
『G2と交戦中の模様です!』
『ダメか。おい、ミネルバ聞こえるか! 下がれ!』
『そうしたいのは山々ですが、この出力では振り切れそうもありません……!』
ミネルバは接近したG3にライフルを向ける、がその瞬間、長い腕がライフルを叩き折った。
「!?」
「気を付けろ、灯! 来る!」
回避しようとスロットルを握りしめた途端、今度はG3の巨大な口がミネルバの左腕を食いちぎる。
「きゃああああああああ!!!」
「……ちっ、左腕部ロスト。なんとか出来ないのか!」
「出力が上がりません! 剥がせません……!」
G3に掴まれた右腕をミネルバは振りほどけずにいた。G3は大きく口を開け、ミネルバの頭を狙う。
とその時、魂剛がG3の顔面を張り飛ばした。大口を開けていたG3は空を噛む。
『目標捕捉……! これより目標を駆逐する!』
操縦者の紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は間髪入れず、鬼刀を一閃させ、ミネルバを捕らえていたG3の腕を斬り落とした。
『グアアアアアアアッッ!!』
『無事ですか、ミネルバ?』
操縦する唯斗はマスコット化し、忍犬の縫いぐるみ姿になっている。
『す、すみません……! 助かりました……!』
魂剛はアンチビームソードも抜き払い、二刀流。魂剛は速度に難はあるが、絶大なパワーを持つ。
『はああああああ!!』
左右から繰り出す連撃。G3は残った腕を盾に振り下ろされる刃を防ぐ。
不意打ちでは切断出来たガーディアンの肉体も、こちらを捕捉されてからは通りづらくなった。伸縮性と弾性を併せ持つゴムのような素材のガーディアンの肉体だが、動物が力を込めればその部位を硬くする事が出来る……攻撃に備える事が出来るように、ガーディアンの肉体も力を込めた筋肉繊維の如く硬く、強度が上がった。
『通りませんか……いや、そもそも魂剛の出力にも問題がありますか……!』
G3は鞭のように腕をしならせ、魂剛を薙ぎ払った。咄嗟に防御態勢をとったものの吹き飛ばされた。
『ぐうううう……!』
単独搭乗している分、真っ向勝負では押され気味だ。
『さて、どうしたものか……!』