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リアクション
【5】GURDIAN【5】
「マジカル、変身!」
シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)は契約書にサインし、ポーズを決めて魔法少女に変身する。
きらきらと魔法少女的演出が光る中、乙女チックなフリフリコスチューム(&巨大リボン付き)に身を包む。
「……狭いし邪魔だからちょっと静かに変身してくれない?」
前部座席メイン操縦を担当するサビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)は呻いた。
「バカ、こーいうのはやりきるのが大事なんだよ。中途半端にしてみろ、そっちのが恥ずかしいってんだよ」
「……別にコクピットなんだから誰も見てないと思うけど」
「うるせーなー、気分だよ気分。まぁいいや、ほら、お前の分もアイリから契約書貰ってきたぞ」
「ああ、うん」
サビクは契約書を見て、眉を寄せた。
「……なんかもう既にマスコットに丸がしてあるんだけど」
「ああ、アイリにいらないのでいいから一枚くれって言ったら、書き損じの奴くれたんだよ。エコだよな」
「なんでボクのはそんな雑な扱いなの!?」
ところどころ腑に落ちない点があるが、サビクも変身。美しい銀鱗のヘビに姿を変えた。
「……ヘビって。うわあああっ、どうやって操縦するんだよ」
「狭いし邪魔だからちょっと静かに変身しろよな。手足が無いぐらいで焦るんじゃねぇ。落ち着いてやりぁ出来る」
「そう言うの無茶って言うんだよ」
長い身体を上手く使ってスロットルを締め付けると、シュヴェルト13は一気に加速した。
「……な、なんとか、本当になんとかだけど、いけそう」
「よし、撃墜する気で行くぜ。ここは半端に偵察や防御重視で行く方が撃墜されかねない。攻撃こそ最大の防御だ!」
「作戦了解」
レーザーマシンガンを牽制に撃ちながら、間合いを一定に保つ。近過ぎず遠過ぎず、中距離維持。
G3はシュヴェルト13を目視すると、腕を伸縮させ襲いかかってきた。片腕は魂剛が落としているため、腕一本なら回避するのはそう難しくない。回避の間隙を縫って、マシンガンをG3に叩き込む。
「着弾率55.4%、目標各部に爆発を確認……と、連中には十分こっちの武器は通用するようだな」
「親切設計だね。これで装甲まで熱線砲レベルの精度だったら、誰も手を付けられなくなるよ」
「まったくだ。よし、次は実弾兵器を試してみようぜ」
マシンガンを破棄して、主武装をバスターライフルに変更する。
サビクはターゲットマーカーをじっと見つめトリガーを引いた。発射された弾丸はG3の頭部寸前のところで逸れ、左の翼に直撃。G3は絶叫をあげながら、風穴の空いた翼をばさばさとはためかせた。
「着弾位置にずれ。修正を頼むよ」
「ああ、任せとけ。第一射から着弾までの軌道を割り出す……よし、標準の誤差補正OK。第二射準備」
「了解。第二射準備」
再びバスターライフルの銃口を向ける。ところが、今度はG3も負けずに撃ち返してきた。
「!?」
メギドファイアはこちらの弾丸を消し去ると、真っ直ぐにシュヴェルト13を指向する。
「喰らう訳には……!」
スラスターを急速噴射、薄皮一枚で直撃を回避した。
「ターゲット見つけました。分析を開始します」
ヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)はコンソールパネルに指先を滑らせた。
「各機との情報連結。ガーディアンとの交戦データを取得。本機のシステムに戦闘記録を反映させていきます」
「ガーディアンだか知らないが、これ以上施設を破壊させるわけにはいかない……」
メインパイロットの柊 真司(ひいらぎ・しんじ)はスロットルを握りしめた。
「真司、本機はあと30秒で接敵します。以降は精神感応でやり取りしましょう」
「精神感応……?」
真司は振り返り、ヴェルリアを見た。魔法少女となった彼女は、コクピットにはミスマッチな赤と黒を基調としたゴシックドレスを着ていた。短いフリルスカートから白く伸びた脚が覗いている。
「……その、そんなに見ないでください。私だってこの格好、恥ずかしいんですから……」
「あ……ああ、悪い。精神感応だったか?」
「そうです。口頭のやり取りよりも早く連携が取れます。少しでも連携速度をあげていきましょう」
「なるほど。了解だ」
「ふにゃ〜〜、そろそろ戦闘かのぅ?」
猫のマスコットに変身したアレーティア・クレイス(あれーてぃあ・くれいす)は、ヴェルリアの膝元で丸くなっている。
「ああ、そこから落ちないようしっかり捕まってろ」
ゼノガイストのエネルギーウイングを全開に。速度を上げて戦場に乗り込む。
「まずは手の内を暴かせて貰う」
ガトリングシールドによる牽制射撃。反撃に繰り出される伸縮する腕を躱しながら、攻撃パターンを収集する。
とその時、G3は大口を開け、凄まじい量のエネルギーを集束させた。
「……来る!」
ヴェルリアが発射軌道を予測するより早く、真司は直感を信じ回避行動に入った。エネルギーウイングと脚部大型ブースターによる急速回避。真司が回避に入ったのは、メギドファイアが発射されるのとほぼ同時だった。傍を高熱の本流がほとばしるのを横目に、ゼノガイストは次のアクションに移っていた。
(新式ビームサーベル以外の武装を全てパージ!)
(!?)
精神感応を通して真司の出した指示に、ヴェルリアは目を丸くした。
(早くしろ!)
(は、はい……)
武装を全てパージしたゼノガイストは、両肩のビームシールドを展開して防御を固めた。
「仕留める……!」
それからエナジーバーストでG3に突撃を仕掛ける。
G3は腕を伸ばして攻撃してきた。真司はあえてビームシールドで攻撃を受ける。弾かれた腕にビームサーベルの一閃。断ち切られたG3の腕は宙をくるくる舞った。
(もうその軌道は見切った……)
(目標に再び高エネルギー反応……!!)
(!?)
G3は残された武器であるメギドファイアを撃つため、大口を開けて発射の構えをとった。
「あれはビームシールドじゃ防ぎきれんぞ」
アレーティアは言った。
(発射予測時間と発射速度をこれまでのデータから計算……駄目です。接触するより2秒向こうのほうが速いです)
(く……っ!)
それでも真司はスロットルを倒し、加速させ続ける。刺し違えても、少しでも切っ先が届けばいい。
その刹那、急加速したシュヴェルト13が、G3の背後に迫った。エナジーウイングを纏い、光り輝いている。
『貰ったぁ!!』
渾身の体当たり”エナジーブレイク”。直撃を喰らったG3は天を仰ぎ、その拍子にメギドファイアが上空に放たれた。
(2秒稼いだ……!)
(リミッター解除します……!)
『うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!』
ゼノガイストの”ファイナルイコンソード”が、脳天からG3を一刀両断に斬り捨てる。
『グガガガガガアアアアアアァァァァァッッッ!!!!』
G3は爆散した。
残るガーディアンはG1ただ一体。しかしG1も満身創痍。片腕を失い、至る所から紫のガスが上がっている。
『……グガ、しかし我等の任務は達成出来た……ガ、ガガ……』
ラボを見回す。研究棟は壊滅し、研究用のイコンを収めていた倉庫ももはや骨組みだけしか残っていない。
『……結局、あれはここには無かったか。まぁいい。いずれ我等の誰かが辿り着くだろう……』
巨大な口だけの顔で不気味に微笑み、G1は自ら爆散した。