リアクション
第三十五章:ロケットの発射とか見送ってみよう……?
その日、パラミタで画期的な実験が行われていた。
【リニアカタパルト】で、人はどこまで飛ぶことが出来るのか?
上空に謎の機動要塞がこっそりと姿を現していた。巨大な浮遊イコン、伊勢だ。
メインパイロットのコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)は諦観を漂わせながら、その試みを見ていた。何を言っても無駄なことはわかりきっていたからだ。
「先を越されるわけにはいかないであります!」
教導団員でありながら、時折フリーテロリストに変貌する葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)は、生身で宇宙まで飛ぼうとしていた。
目的はただ一つ。写楽斎の飛ばした人工衛星に搭載されている、核のような機晶石を手に入れること。そう、彼女は宇宙へ行くが、解体作戦に参加するつもりはなかったのだ。解体するとしても、それは核を手に入れるため分解するかもしれないと言う程度。
新たなテロのために、吹雪は禁断の兵器を手に入れようと考えていたのだ。世界のリア充共をまとめて消し飛ばすために。
目的が目的だけに他の契約者たちと行動を共にすることは出来なかった。ロケットを借りることも難しそうだったので、吹雪は伊勢の装備している【リニアカタパルト】での大気圏外脱出を計画したのだ。
「ふおおおお……!」
よくわからないままに鼻息を荒くしているのはパートナーのイングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)だった。今回、無理やり連れて行かれることになった。しかし、彼なら吹雪と運命をともに出来るだろう。
「行ってくるであります!」
吹雪は、リニアカタパルトに装填されていた。本来爆弾を投擲できる他、イコンの発進も出来る装置である。イングラハムとともに準備を済ませると、ためらいもなく発射を要求した。
「ぽちっ」
コルセアは無表情でスイッチを押す。
ゴォォォォォ!
吹雪とイングラムは目にも留まらぬ速さで発射され、あっという間に空の彼方へと消えていった。
「相変わらず無茶するわね。逝ってきなさい」
コルセアが見送ってくれていた。