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リアクション
十倉 朱華(とくら・はねず)とパートナーのウィスタリア・メドウ(うぃすたりあ・めどう)は、それぞれの鍛錬を兼ねて、参加していた。
目標は優勝ではなく、完泳だ。
朱華の鍛錬がメインであるからと、スタートから十数分、朱華が泳ぎ続けている。
けれど、交代しなければならない旨の放送が流れれば、ウィスタリアが海へと入った。
交代の際に疲れた様子にある朱華に、ヒールを施したいウィスタリアであったが、それでは朱華の鍛錬にならない。
限界ギリギリまでは我慢しようと己に言い聞かせ、泳ぎ始めた。
「理子ちゃん、何時もは仲良しだけど、今日は真剣勝負だよ!」
「受けて立つよ、その勝負!」
スタート前に理子へとそう宣言したあーる華野 筐子(あーるはなの・こばこ)は、アイリス・ウォーカー(あいりす・うぉーかー)と共に、スタート直後、先頭集団より横方向へと外れた。
その様子を見ていた理子は、コースを間違えたのかと思うけれど、それは筐子の作戦の1つであった。
スタート直後、先頭集団の間で起こる足の引っ張り合いなどを避けるためだったのだ。
先頭集団の中でもその足の引っ張り合いなどに勝って上位に残る者、負けて徐々に距離を開けていく者が決まる頃、筐子は中央の方へと戻ってくる。
パートナーのアイリスが泳ぐ距離は大してとらず、メインは筐子が泳いだ。
樹月 刀真(きづき・とうま)は己の身体を鍛えるため、パートナーの漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)はダイエットのために参加していた。
互いに体力を温存しながら、適度なところで交代して泳いでいたのだが、アクシデントが起こったのは、中間地点を過ぎた頃であった。
「ッ!?」
泳いでいた月夜が足をつってしまい、その場でもがき始めたのだ。
「月夜!?」
そろそろ交代しようかと、飛空挺に乗っている間は羽織っていたパーカーを脱ぎかけていた刀真は、そのパーカーを捨てるように脱ぎ、慌てて海へと飛び込む。
海へと入ってきた刀真に月夜はしがみつくように助けを求めた。
「もう大丈夫だから」
落ち着かせるように優しく声をかけながら、刀真は月夜を抱え、飛空挺に上がる。そこでふと気がついた。
「月夜、君の着ていた水着は何処かな?」
黒のビキニを着ていた月夜であったが、そのトップスがない。
「……流された」
月夜の言葉に、刀真は辺りを見回すが、既に流された後か沈んだ後か、辺りにそれらしきものは浮いていない。
「買ったばかりだったのに」
今回の参加する直前に新調したおニューの水着だったのだ。月夜のショックは地味に大きいらしく、落ち込んでしまう。
「そのままでは風邪引くし……他の人に見られても困るからね」
落ち込む月夜にかける声も見つからず、ただ刀真は体調の方を心配して、脱ぎ捨てたパーカーを手に取るとそれを彼女に羽織らせた。
「刀真には見せていいの?」
「え、いや……えっと」
月夜の質問に、刀真は思わず答えに詰まり、「泳がないとね!」と逃げるように海へと入るのであった。
「泳ぎにはあまり自信がありませんし、正直水着は恥かしいです……」
神楽坂 有栖(かぐらざか・ありす)はパートナーのミルフィ・ガレット(みるふぃ・がれっと)が選んだ、胸にリボンの付いたワンピース水着を着こなしつつ、ぽつりと呟いた。対するミルフィはその大きな胸を更に目立たせるようなワイヤービキニを着ている。
実は男性である有栖にとって本来ならパレオも着用すべきなのだろうが、ミルフィ曰く泳ぎにくいからと今回は外されていた。そのため、更に恥ずかしさを感じている有栖なのだ。
泳ぎの自信のない有栖がスタート開始からある程度泳いだ後、すぐにミルフィと交代した。
「うふふっ、可愛い水着をお召しになったお嬢様が傍で応援して下さってるのですから、幾らでも頑張れますわ……!!」
そう告げて泳ぎ出したミルフィは、波しぶきを起こしつつ猛進していく。
「ミルフィ……凄い……」
ただでさえ慣れない飛空挺の操縦なのに、有栖はその操縦すら忘れてしまいそうになるほど、ミルフィの猛進はすごかったのだ。
「この程度、爺さんの修行に比べたら、ハンデにもならねぇ! やってやらぁぁぁぁぁ!!!!」
叫んでいるのは風森 巽(かぜもり・たつみ)であった。
泳げないパートナー、ティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)に少しでも海を楽しんでもらおうと参加したのだ。
巽の腰に巻きつけたロープの先に括りつけた浮き輪の穴部分にお尻を入れ、ティアが座っている。
青のセパレーツ、その上に白のパレオという水着姿のティアはライフジャケットを借りて着込んでいた。頭には日射病予防につばの大きな麦わら帽子も被っている。
「海って気持ちいいのね」
波があることもあって、浮き輪の上でバランスを取ることに集中しつつもティアが言う。
「そうだろう!」
巽は笑みながら、泳ぎ続けた。
海上には放送席からパートナーとの交代の案内が流れるけれど、ティアは泳げないのだから、交代しようがない。
2人は泣く泣く中間地点で棄権となってしまった。
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