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リアクション
(携帯ゲーム機なのは不本意でござるが最近は便利になったものでござるな)
少しでもオンラインゲームにログインしていないと情緒不安定になってしまう坂下 鹿次郎(さかのした・しかじろう)は、パートナーの姉ヶ崎 雪(あねがさき・ゆき)に夏の海のお約束でもあるジャンクフードをたくさん奢ることで機嫌を取り、パートナーコースに参加してもらっていた。
けれど、雪としては安い油を使ったギトギトヤキソバと、丸焼きにして本醸造では無い安醤油かけただけのトウモロコシだけでは当然満足しておらず、侮辱だとさえ思っている。
鹿次郎が泳いでいる間、雪は彼を足蹴にして加速させていた。
「雪、拙者、疲れたので少し任せるでござる……」
「あ? 雪さんと呼べと言ったでしょう!」
「すまないでござる、雪さん……」
少しでも飛空挺に上がって、休憩かつオンラインゲームへログインしようと、鹿次郎は必死になって泳ぎ、雪の言葉にも従った。
「嫌ね、あんなもので満足すると思ってたのですか? 心外ですわね」
ギトギトヤキソバとトウモロコシのことを指して雪が言う。
「でも、たくさん食べていたではないでござるか!?」
「それは折角だから食べてあげただけ。ほら、さっさと泳ぎなさい!」
口答えする鹿次郎を雪は再度足蹴にしながら泳がせた。
そのまま鹿次郎だけが泳いで中間地点に辿り着いてしまい、棄権となってしまうけれど、夏の日差しが耐え切れずさっさと帰りたいと願う雪も、泳いでばかりでオンラインゲームにログインできそうにない鹿次郎としても、願ったりのことだったらしく、早々に引き上げ、帰っていった。
(第一はパートナーと共にイベントを楽しめればいいけれども、参加するからには優勝を目指す!)
(加するからには目指せ優勝! ……まぁでも緋桜と過ごせればそれで満足だったりしますが)
緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)とそのパートナー、紫桜 遥遠(しざくら・ようえん)はそれぞれの思いを胸に海へと出る。
先に泳ぐのは遥遠の方だ。
先頭集団に遅れないように、泳いでいくけれど、十数分も泳いでいれば疲労も出てきて、着いていくのが辛くなってくる。
そうなると、遙遠に交代し、また先頭集団に追いつき、遅れないように泳ぐことを続けた。
「よっし! 優勝目指すぞー!」
そう言って、スタートから飛ばすミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)。
「無茶はダメですよ。辛かったらちゃんと言ってくださいね」
飛空挺の上からパートナーである和泉 真奈(いずみ・まな)がそう言うと「わかってるって!」と軽い言葉が返ってきた。
本当に分かっているのだか、と真奈はやや不安になる。
中間地点に差し掛かる前に、交代しなければならぬ旨の放送を聞くと、ミルディアは暫しの休憩と称して、真奈に代わる。
運動好きで少しでも長距離を泳ぎたいと思っている所為か、中間地点を前に、またミルディアが泳いでいた。
「本当に、無茶はしないでくださいね」
交代しながら不安を口にする真奈。
「大丈夫、大丈夫!」
ミルディアはそう言って、海へと入っていく。
口ではそう言っていても体力には限界があったようで、中間地点を過ぎた頃、気分良く泳いでいたミルディアの足が痙攣してしまった。
「大丈夫か!?」
様子のおかしいミルディアを真奈が心配して、飛空挺へと上げようとしていたところ、救護班の一員としてゴムボートに乗っていた真が近づいてくる。
真も海に入り、真奈の乗る飛空挺にミルディアを押し上げた。
幸いにも足がつってしまって、泳げなくなっただけで、溺れて水を飲んだ、とかはない。
中間地点も過ぎたため、残りの距離を真奈が泳ぐことで完泳も可能だ。
身体を冷やさないために、ゴムボートに積んでいた毛布をミルディアの肩に掛け、真たちは離れていく。
真奈は、残りの距離を泳ぐため、海へと入った。
「1人で参加するのはいやであります! 霜月も一緒に参加するであります!!」
「参加って、自分泳げないんだけど……!!」
出先からの帰り道に遠出して海へと来た2人。
参加締切までギリギリという言葉に、何が行われるのかわからないまま、アイリス・零式(あいりす・ぜろしき)は赤嶺 霜月(あかみね・そうげつ)を引き摺って参加申し込みをした。
泳ぐことは初めてのアイリスであったが、スタートと同時に周りの皆の様子を見て、見よう見まねで泳ぎ始める。
「さあ、霜月。交代であります!」
十数分泳いだところで、アイリスは飛空挺へと上がった。入れ替わりで、霜月を海へと下ろす。
「だから、無理だってばっ!」
慌てる霜月であるが、アイリスは構わず彼を海へと入れた。
けれど、足が届く場所ではなく、瞬時に霜月はもがき始める。
「大丈夫でありますか!?」
アイリスは驚いて、霜月へと手を伸ばした。
泳げないという言葉は、本当であるらしい。
けれど、2人で泳ぐコースに参加したからには、アイリスだけが泳ぐわけには行かない。
霜月をどうにか泳がせるために、アイリスは一緒になって海へと入る。
アイリスが手を引く形で、泳ぎ始めるのであった。
(お姉ちゃんが大会用にって足に付けるスクリュー作ってくれたんだけど、これ使っちゃっても良いのかなぁ……?)
未沙が泳いでいる間、パートナーの朝野 未羅(あさの・みら)は飛空挺に積んだスクリューに視線を向けた。
足に装着してスイッチを入れれば、羽根部分が回転し、前へと進むようになる。
「さすがに止めといた方がいいかなぁ」
自分自身に言い聞かせるように、一言口にして、スクリューは装着せずに、未沙と交代する。
「つけないの?」
「うん。つけたら、違反な気がして」
未沙の問いかけに未羅は答え、そのまま海へと入ると泳ぎ始めた。
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