First Previous |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
Next Last
リアクション
「この勝負はいただきだ、です!」
その昔『シャンバラのクロマグロ』と呼ばれたほど泳ぎの得意なメグ・ゼラズニイ(めぐ・ぜらずにい)がスタートから泳いでいた。
泳ぎが得意でないながら、パートナーと一緒なら泳ぎきれる、頑張ろうと意気込んできたルーシー・トランブル(るーしー・とらんぶる)は、ずっと泳ぎ続けるメグの様子を見て次第に不思議に思い始める。
「あのー、メグ? 少しは泳がせてもらいたいんですけど……」
「まだ大丈夫! ルーシーはもう少し待ってて!」
泳ぎながらメグはそう応える。
スタート前の説明によれば、交代のタイミングは各自に任せるという話だった。
そのため、どうしても優勝したいメグは、泳ぎが苦手なルーシーを泳がせることなく、1人で泳ぎきろうと決めたのだ。
『中間地点までに一度は交代してくださいー! 交代していない人は、中間地点に辿り着いた時点で、棄権とさせていただきますー! 先導役、救護班を通して、交代しているかどうかはチェックしていますので、不正は見逃しませんよー!』
けれど、メグの心のうちを見透かしたかのように、タイミングよくそんな放送が海上に響き渡った。
「ほら、メグ。放送もああ言ってるから、そろそろ交代を……」
「うう……ルーシーがちょっとでも泳いだら、すぐ交代するんだ! 優勝は逃さないんだから!」
不服そうにしながらもルーシーに促され、メグは飛空挺へと上がった。入れ替わりでルーシーが海へと入っていく。
むくれたままのリリアンと、それをなだめながら泳ぐ晶の姿がそこにはあった。
「頑張ったら何でも一つ言う事を聞いてやるから機嫌直してくれ」
何度目かの交代のとき、晶はリリアンにそう告げた。
「その約束、絶対守ってもらいますから……!」
入れ替わりで海に入っていくリリアンは、晶にそう返して、泳ぎ始める。
先ほど泳いだときより、一層早く、だ。
「優勝目指して頑張るぜ! ああ、でもアデーレは無理しなくていいからな?」
スタートしてから泳ぎ続けていたカルナス・レインフォード(かるなす・れいんふぉーど)は交代しながらパートナーのアデーレ・バルフェット(あでーれ・ばるふぇっと)に告げた。
「うん、でも一生懸命泳ぐよ!」
頷きつつもアデーレはカルナスに応えようとそう言う。
カルナスはクロールで泳いでいたけれど、アデーレはクロールが苦手なため、平泳ぎで泳ぐことした。
(眼福、眼福〜♪)
ゆっくりと泳ぎだしたアデーレの姿を飛空挺に乗って併走しながら、カルナスは眺める。
胸が小さいことを気にしながらもアデーレが買い求め、着ているのはビキニタイプの水着だ。
無類の女好きのカルナスであったが、今日ばかりは他の女性には目もくれず、休憩している間は、体力の回復と共に、アデーレが泳ぐ姿を見て、気力の回復をもする。
カルナスが距離を稼ぎ、時折アデーレが泳ぐ形で、2人は泳ぎ続けた。
ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)が参加を決めたのは学園内で愛美に誘われたからであった。その際、山葉 涼司(やまは・りょうじ)も出場するということを聞き、再度試合を挑んだのだ。
スタートしてから十数分、ウィングと涼司は今だ力尽きることはなく、互いに抜いては抜かれてを繰り返しながら泳ぎ続けている。
「花音さん、2人のうち、負けた方が買った方と私たち女性陣の3人にお昼を奢るっていうのはどうかな?」
「か、賭け事ですか? 涼司さん、納得しますでしょうか?」
ファティ・クラーヴィス(ふぁてぃ・くらーう゛ぃす)の提案に、花音・アームルート(かのん・あーむるーと)は不安そうに言う。
「勝敗決まるまでは内緒にするのよ! ウィングも山葉さんもお人よしそうだし、何だかんだで迫ったらちゃんと奢ってくれるって」
「そういうものですか……」
ファティがそう言えば、花音は頷く。
泳いでいる2人が知らないうちに賭け事が決まってしまった。
『中間地点までに、パートナーと一度は交代してくださいー! 交代していない人は、中間地点に辿り着いた時点で、棄権とさせていただきますよー!』
運営スタッフからの放送が流れる。
交代する気なく泳いでいたウィングであったが、棄権にされては勝負どころではなくなるため、仕方なくファティへと交代するよう泳ぎを止めた。
涼司は、ウィングたちと交代のタイミングを合わせようと元から思っていたらしく、彼らの交代と共に花音と交代する。
「無理はするな」
「はい」
花音にそう告げて、涼司は飛空挺に乗り込んだ。
「少し泳いだら、すぐに交代してくれて構いませんから」
ウィングはファティにそう告げる。あくまで、棄権にさせられないようにするための交代なのだ。
「了解っと」
海へと入りながらファティは応える。
暫しの間、パートナーたちが泳ぎ、すぐに交代してまた2人が勝負するように泳ぐのであった。
赤褌を身に着けた武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)と、白のビキニに麦わら帽子という姿のパートナーのリリィ・シャーロック(りりぃ・しゃーろっく)。
スタート前には、リリィの姿に牙竜が見とれて慌てて視線を逸らす、などということが繰り返されたけれど、2人で仲良く持ってきた携帯ラジカセから流れるラジオ体操の曲に合わせて、体操し、充分に身体をほぐしてから、泳ぎ始めた。
体力バカな牙竜は、最初から全力で泳いでいた。
「牙竜、交代するよ」
そのためか、他のチームがまだ交代なく泳いでいるところでペースが落ちているのを見かねた、リリィが声をかけ、飛空挺を止めると交代を促す。
「おう……」
やや息切れのする声で牙竜は応え飛空挺に乗り込むと、リリィが入れ替わりで海に入った。
「充分に回復してから交代するからね」
そう言ってから泳ぎ始める。牙竜が回復できるよう、時間をかけて。
それを繰り返して、最後は牙竜が全力でスパートをかけれるよう、距離と互いの体力を気遣いながら泳ぎ続けた。
First Previous |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
Next Last