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リアクション
静香様ご到着
一方その頃、鋭峰のセッティングした旅館に静香とラズィーヤそして数人の百合園女学院生が到着していました。
「桜井校長、今日は晴れて絶好のお見合い日和だな」
「……ええ……まあ」
鋭峰の言葉に、静香は軽く相槌を打ちます。
ちなみに、今日の静香の装いは桃色の着物姿である。
ラズィーヤもお見合いの席と言うことで珍しく、淡い緑の着物を着ている。
「ところで金校長、静香さんのお見合い場のセッティングは大丈夫でして?」
ラズーィヤが問うと、鋭峰が自信満々な様子で、会場の案内を始める。
「やはり、お見合いと言えば座敷だろう。池の見える部屋を用意している」
どうやら教導団の訓練施設になるのは免れたようだ。
「それでだね無数の盗聴器が発見された、静香殿の衣類にも盗聴器が仕込まれている可能性が高い。調べさせてもらってよいかな?」
その時しまったという顔をした女生徒を鋭峰は見逃さなかった。
「鷹村、桜井校長の衣服に盗聴器が仕込まれていないかチェックをしろ」
「はっ!」
名指しされた教導団生、鷹村 真一郎(たかむら・しんいちろう)は、盗聴器チェッカーを使って静香の着物をチェックするが、どこもかしこも警告音が鳴るくらい無数の盗聴器が着物の内側に内蔵されているようだ。
「団長、これはお遊びってレベルじゃありませんよ」
「大丈夫、反人は既に分かっている。そこの、後ろを向いてこの場から去ろうとしているお嬢さん」
鋭峰が声をかけた先には毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)がいた。
「毒島さんあなた」
ラズィーヤが厳しい瞳で大佐を見る。
「ちょっとひっかきまわそうと思っただけだよ〜」
言うが否や、ダッシュで逃げようとするが、真一郎に捕まえられる。
「どうしましょう、団長?」
「こんなこともあると思い、お見合いを邪魔するものは一日閉じ込めておけるように牢を作ってある、そちらに閉じ込めておけ。これから先も来るであろう妨害者は逐一牢に入れて行くように」
「了解しました」
それを聞いていた静香が不安な声を出す。
「妨害者とか牢とかそんなに重々しく考えなくても」
「何を言っている桜井校長、不逞の輩には問答無用。それにお見合いが終わるまでのことだ」
「はあ」
そう言われてしまうと静香も納得せざるを得ない。
「それより静香さん、この着物は危険ですわ。一室借りて着付けし直しましょう。白百合会所属の方は、着替えが誰かに覗かれないように、厳重に見張りを。金団長様達は、このまま入口の警備を引き続きお願いしますわね」
ラズィーヤは静香を旅館に誘導しつつ鋭峰に指示を出す。
「分かっている。このお見合いが上手くいくようこの金 鋭峰死力を尽くそうではないか」
そして、ラズィーヤ達が立ち去ると、教導団の生徒そして百合園女学院の生徒そして有志が数名残った。
パラ実のガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)は、考えていた。
お見合いの成功とは何か?
「金団長。お見合いの成功とは何でしょう? お見合いは顔合わせの縁談であって、それ自体が円満に行われるのは当たり前です。良縁になり交際、結婚と続いて成功といえるのではないでしょうか?」
その言葉に珍しく鋭峰は笑みを見せ。
「お見合いと言うのはだな。自分を誰かを好きになるきっかけを作る場なのだよ。もちろん合わない人間もいる。それでも出うことは無駄ではないのだよ」
「それで金団長自身のお見合い回数は何回でしたっけ?」
一条 アリーセ(いちじょう・ありーせ)が淡々と聞く。
「ん? 私か? 両手の指では足らないほどしているが」
「その中に運命の相手はいなかったんですか?」
「そうだな。まだ出会っていないのだろう。36分24秒……今まで私と見合いをした女性が席を立つまでの最長時間記録だ」
「ああ、はい、凄いですね……」
「つまりその時のセッティングが、私の経験上最もお見合いに適していると言える。今回はそれを桜井校長に合わせて調整したプランを立てた」
アリーセの頭の中に浮かんだのは、戦場では有能な指揮を見せるこの人も色恋は無縁だということ。
「……駄目だこの人」
アリーセが鋭峰に聞こえないようにぼそりと呟いた。
そんな時、女の子の声が聞こえた。
「ボク、今回のお見合いの記事を書こうと思って取材に来た羽入 勇(はにゅう・いさみ)です。是非取材させて頂きたいのですが」
「残念だが、取材の類はすべてシャットアウトさせてもらっている。帰りたまえ」
鋭峰は言い放つがそれで引く勇ではなかった。
「それでしたら、金校長に個人的な質問なら構わないですか?」
「私に質問? それなら別に構わないが」
「ありがとうございます。それでは、早速。今回のお見合いは教導団完全バックアップなんですよね?」
「いかにも」
「この件を引き受けた理由が金校長がお見合いを何回もなさってるからですよね」
「……いかにも」
「で、そのお見合いで交際にすら発展しない理由は何なんですか。金校長に問題があるのですか?」
「ち……違うぞ。たまたま、相手の理想と私の理想がかみ合わなかっただけだ」
「それでは、金校長の理想の女性とはどんな方ですか?」
「ぐぅ……」
畳みかけるような勇の質問攻めに鋭峰はかなり参ってしまっていた。
「団長、こちらでも団長の話を聞きたいという方がいらっしゃってますが」
アリーセの声だ。
「それでは、別件が入ったようなので失礼する」
と言って鋭峰は勇の質問攻めから逃れるように、そそくさとその場を去った。
「私の話を聞きたいというのは誰だね?」
「私ですよ」
そこには10歳くらいの少女がいた。
四方天 唯乃(しほうてん・ゆいの)がである。
「金団長あなた方校長達に聞きたいことがあって、私たちの仲間は各地に散っているわ」
「ほう」
「そう言う訳で私のターゲットはあなたよ」
「それなら、私はこれだけを言っておこうか。過ぎたる好奇心は身を滅ぼすと」
「なっ!」
「大体、お見合い失敗を企んでいるらしい、イルミンスールの学生に私が何かしゃべるとでも? それでは。各員、予定通り警備配置につき怪しい者はすぐ報告するように」
鋭峰はそう言うと足早に去って行った。
「金校長は頭が固いね。ほかのみんなに期待かな?」
興味が無いの? 環菜様?
休日の蒼空学園学生もまばらだ。
そんななか、環菜は退屈そうにパソコンのディスプレイを眺めていた。
その時大きな怒鳴り声、制止を促す声が聞こえてくる。
「何かしらね?」
瞬間、校長室の扉が開き二人の少女が入ってきた。
イルミンスールの学生赤羽 美央(あかばね・みお)とタニア・レッドウィング(たにあ・れっどうぃんぐ)だ。
「あら、見たことある顔ね。イルミンスールの学生がうちに何の用?」
「今日行われる、桜井静香校長のお見合いについて知ってることがあれば教えてほしいんです」
「そうそう、校長達がお見合いに一致団結なんて何かあるんでしょう?」
「私は、一致団結した覚えはないよ。エリザベートが提示してきた賭けに乗っただけ」
「じゃあ、何も知らないと言うんですか?」
美央が環菜に詰め寄るが環菜はつまらなさそうに。
「何も知らないわけじゃない。だけどそれをあなた達に話すメリットを感じない。ただそれだけ」
「メリットって?」
「はい、話はおしまい。うちの学生が来る前にお帰りなさい」
そして二人にも興味を無くしたのか、またパソコン画面に視線を戻す環菜。
二人は蒼空学園の生徒に連れられて、校長室をあとにした。
「うちの学生も送りこんだけど、面白いことになるかしら」
ひとり呟く環菜だった。
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