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リアクション
大人数のお見合い
静香は真新しい着物に着替えると、今回のお見合いの部屋までやってきた。
勿論ラズィーヤも一緒だし、静香の身辺警護を買って出た教導団の皇甫 伽羅(こうほ・きゃら)とそのパートナー達、うんちょう タン(うんちょう・たん)、皇甫 嵩(こうほ・すう)、劉 協(りゅう・きょう)も一緒である。
その後ろから更に数名の百合園女学院の生徒達を引き連れているのだから、どこの大奥と言う感じである?
中でも目を引くのは、特徴的な黒の小悪魔ゴスロりファッションの姫野 香苗(ひめの・かなえ)等だろうか?
香苗は静香の腕にしがみついて自分のものであるかのように皆にアピールしている。
香苗いわく。
『静香校長のようなかわいい子は香苗のようなかわいい子と付き合うのが一番なんだよぉ』
とのことである。
なのでまだお見合いが始まったわけでもないのに、近づく男性という男性全員を警戒して犬のようにきつく睨みつけている。
「ふう、みんながいると緊張はしないけど、セシルさんの方が驚かないかな?」
「心配なさってはいかんわ。校長」
静香のつぶやきに清良川 エリス(きよらかわ・えりす)が答える。
そして、茶と金のかつらを取り出し、静香に微笑む。
「もしもの時は、私が身代わりになります。校長はその隙に逃げてくださいまし」
「ふふっ。逃げるか〜。逃げられるならお言葉に甘えようかな。まだお相手にもお会いしてないし、ボクはね……」
「単なるお見合いなんだし、かる〜くやってみればいいんじゃないですか?」
優しい口調で言う静香にミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)がどこか軽い口調と言うより、はっちゃけた感じで静香に言う。
「お見合いで必ず付き合わなきゃいけないわけじゃないですし、軽い気持ちで経験ってことで」
「経験?」
「そう、経験です」
「そっか、なら、やるだけやってみるよ」
今度は静香の瞳に強い意志がみなぎる。
可憐な容貌だが流石はおと……である。
そんな時ラズィーヤににじり寄る人物がいた。
長身のティア・イエーガー(てぃあ・いえーがー)だ。
「ラズィーヤ様、今回もお任せ下さればご期待に沿いましてよ?」
「あら、私は、静香さんにお見合いをして頂きたいだけですわ。他に花も望んでませんわよ」
にっこりラズィーヤが返すが、ティアの目には明らかにそれだけではないように映った。
そして時は少しずつ動いていた。
お手洗い攻防戦
セシルがお見合いの前にお手洗いを使いたいとのことだったので、薔薇の学舎の生徒達は付いていこうとしたが、お手洗いくらいは一人で行けるとのことで、セシルは生徒達を待機させお手洗いに向かった。
だがそこには、一人危険な人物がいた。
イルミンスールからの刺客ブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)である。
彼は、清掃棚に隠れてセシルがお手洗いに来るのを待っていた。
なぜこんなところに潜んでいるかって?
そんなのこと簡単である。
セシルの秘密を暴いて、それをネタに脅迫し、ばらされたくなければお見合いを断るように仕向ける為である。
愛するエリザベートの為とはいえ、やり方が汚い。
お手洗いと言うのも汚い。
セシルが入ってくると、ブルタは、『はあはあ』と荒くなる息を殺し、盗撮のチャンスを待つ。
しかし、そんな時、いきなりブルタの入っていた清掃用具入れが開かれる。
そこには、蒼学のクイーン・ヴァンガード特別隊員つまり環菜の直属の部下樹月 刀真(きづき・とうま)だった。
「気持ち悪い殺気がしたから、来てみればとんだ変態もいたものですね。しかもイルミンスール生ときている。なら……容赦する必要無いよな?」
トイレに響く野太い絶叫。
そして袋叩きにされるデブ……いや失礼。
お手洗いでずたぼろになるブルタ。
「流石に殺すのはまずいか?」
刀真の言うことも物騒である。
「何かありましたか?」
ブルタの絶叫にびっくりしたのかセシルが慌てて、個室から出てくる。
「いえ、何もありませんよ」
刀真は微笑みを浮かべ足でブルタの体を清掃用具棚に押しやる。
「それでは、私はお見合いの席の方に行きますね」
「はい、薔薇の学舎の生徒の方が外で待機なさってますよ」
刀真が言うと、セシルはそそくさと出て行った。
刀真はブルタをしっかり監禁すると、お手洗いの外にいた、パートナーの漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)が待っていた。
「どうだった?」
「変態が一人いただけだった」
「そっか」
「このお見合いどう思う」
「ジェイダス様達には何か思惑があると思うけど、環菜も調査済みだって言ってたし静香校長がこのお見合いで結婚しないって分かってると思う」
「そうだな」
二人はそんな会話をしながら警備に戻った。
一人の変態を残して……。
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