First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last
リアクション
■□■2■□■「サンマーくん。森を燃やすとか言ってましたか?」
東雲 秋日子(しののめ・あきひこ)とパートナーの剣の花嫁要・ハーヴェンス(かなめ・はーべんす)も、
チョコの捜索をおこなっていた。
「……飽きた。この森広すぎ。チョコレートなんて見つかんないよ!」
「まだ来たばっかりじゃないですか。頑張って探せばきっと見つかりますよ」
つきあわされてやってきた秋日子が愚痴るのを、要がなだめる。
一方そのころ、ジャックを止めようとしていたのは、
ミレイユ・グリシャム(みれいゆ・ぐりしゃむ)と、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)であった。
【森林警備隊】の称号を持ち、趣味が森林浴なミレイユは、
森を放火すると聞いて、いても立ってもいられない。
「森を燃やすなんて許さないんだよ!!」
「つっても、こんな木がいっぱいじゃ見通しがわるいだろ……ガフッ!?」
ミレイユが、氷術で作り出した氷の塊をジャックの頭にズガンっと落とす。
「なにするんだよ、そんな氷術なんかよりファイヤーで一気に……ぐはっ!?」
「燃やすなって言ってるでしょ!!」
ハーフムーンロッドで、ミレイユがジャックの頭を殴りまくる。
逃げ出したジャックを、さらにミレイユが氷術で氷の塊を頭に落とし、動きが鈍ったところを、
一気に美羽が攻撃する。
「森を燃やしたらチョコも一緒に燃えちゃうでしょうがッ!」
バーストダッシュにより強化されたレッグラリアットの一撃であった。
「ごはああああああああああああああああああああ!?」
思いっきり吹っ飛んだジャックが転がった先には、要がいた。
地面に転がったジャックと、要の目があう。
「サンマーくん。森を燃やすとか言ってましたか?」
「おう、それが一番てっとりばやい方法だってあんたも思うだろ?
ファイヤーだぜ……ごふうううううう!?」
起き上がって火術を放とうとするジャックを、要が鉄拳制裁する。
要は普段は控えめで大人しいが、キレると別人かというほど口調や態度が変わるのであった。
「だからみんなが『危ない』っつってるだろ? ……さっさと失せろ、餓鬼が」
要にボコボコにされるジャックを見て、秋日子が言う。
「あー……。助けてあげたいけど……自業自得だと思うよ?
……死なないように……頑張ってね」
秋日子はジャックに向かって合掌した。
ボコボコにされて気絶したが復活したジャックを、ミレイユが正座させる。
「こんな事したら次はたんこぶだらけにしちゃうよ」
地面をロッドでバシバシ叩きながらお説教するミレイユに、ジャックがなおも言う。
「もうたんこぶだらけなんだが……。ていうか、やっぱりファイヤーが一番いい方法……」
「……3枚に下ろすよ?」
ミレイユがロッドを構えて臨戦態勢に入る。
「ねえ、ジャック。私の目をみてごらん?」
美羽がすごくいい笑顔でジャックを見る。
「まだそんなこと言ってやがるのか……」
要がジャックをにらみつける。
「ごごごごごご、ごめんなさいごめんなさい」
ジャックは3人の様子を見て従うのであった。
「じゃあ、気を取り直して」
美羽が、大きな鍋を用意して、大量の残飯を煮込みはじめた。
「キミ、いったい何してるの? すごいにおいなんだけど……」
秋日子が怪訝そうな顔で聞くと、美羽は胸を張ってみせる。
「よくぞ聞いてくれました! これでじゃたをおびきよせる作戦なのよ。
ゲテモノ大好きなじゃたのことだから、この鍋のにおいでやってくるはずよ!
あ、ちなみに、韓国名物キムチチョコと水戸名物納豆チョコが
じゃた用のバレンタインチョコとして中に入ってるからね」
「じゃた用のチョコって……。たしかに、喜びそうだけど……」
ミレイユは、これって、森の汚染に繋がるんじゃ……とちょっと思っていた。
「あ、そうそう、ジャックの分のチョコも用意したから」
「え、俺!?」
大きく「義理」と書いてある特大サイズのハート型のチョコレートを、美羽がジャックに渡す。
「義理なんだ……。でも、すっごくうれしいぜ、どうもありがとう!」
ジャックが笑顔で言う。
「そういえば、美羽、いつのまにかバーストダッシュ使えるようになったんだな。
ヴァルキリーのパートナーができたのか?」
「うん、まあね」
「もしかして、そいつが本命だったりするのか?」
「ばばばばばば馬鹿っ!!」
ジャックの何気ない台詞に動揺する美羽だったが、獣が草むらを走るような音とともにじゃたがあわられた。
「うまそうなにおいがするじゃた!!」
じゃたは、あっというまに残飯の煮込んだものを食べつくし、中のゲテモノチョコもすべて平らげた。
「チョコレート……。もっと食べたいじゃた!!」
そう叫ぶなり、じゃたは森の奥へと走って行ってしまった。
「しまった、この森の空気がじゃたにとってきれい過ぎたんだ!
冬眠中の熊が起きたみたいになってるんだよ!」
ミレイユが指摘する。
以前、イルミンスールの森でふらふら歩いていたときも、
森の空気がきれいだったために、じゃたは空腹で弱っていたのだった。
「や、やべえ。俺のチョコ取られなくてよかった……。
たぶん、今年はこれだけしかもらえないし……」
ジャックが美羽からの義理チョコを抱えて言う。
「急いで追いかけるわよ!」
美羽が走り出し、一行は急いでじゃたの後を追ったのであった。
羽高 魅世瑠(はだか・みせる)とパートナーの剣の花嫁フローレンス・モントゴメリー(ふろーれんす・もんとごめりー)、
同じくパートナーのシャンバラ人ラズ・ヴィシャ(らず・う゛ぃしゃ)、
同じくパートナーの蝙蝠の獣人アルダト・リリエンタール(あるだと・りりえんたーる)は、
走ってきたじゃたを待ち構えていた。
「ジャタの森には隠れ家を提供してもらったり、
腹が減ったら木の実や狩りの獲物を食ったりと、お世話になってるじゃた!
パラ実生の仲間もたくさんいるじゃた!
だから森とじゃた様には恩義があるじゃた!
あとの二人はどうでもいいじゃた!
じゃた様さえ守れれば上等じゃた!
禁断症状はチョコを食い尽くせばそのうち治まるに違いないじゃた!」
「さあ、じゃた様、このチョコを食ってくれじゃた!
じゃた様が禁断症状で暴れてるのを押さえる間に、
4人の無い知恵を集めて「ざんすかラリアット」に匹敵する新必殺技を考えるじゃた!
そもそもじゃた様はおとなしすぎてキャラがざんすかに負けすぎじゃた!」
全裸の魅世瑠とフローレンスは、じゃたに大量のチョコを食べさせる。
「まだ……足りないじゃた」
「夢の民としてはじゃた様の危機を放っておく訳にはいきませんわね……じゃた。
あらやだ、じゃた様口調が伝染ったかしら……じゃた?
さあ、じゃた様。キュアポイズンでテロルチョコを解毒したものを用意しておきましたわ……じゃた」
じゃたが、ボンデージ系の露出度の極めて高い服を着たアルダトによって
解毒されたテロルチョコを食べて、目の色が変わる。
「じゃたーっ!!」
「しまった、じゅんどの高いチョコレートを食べたから、じゃた様が暴走しはじめてるよー!
これはこんぽんてきな解決が必要だよー。
ラズは「じゅういのこころえ」があるから、
きっとじゃた様の「きんだんしょーじょー」もなおせると思うよ!
人も獣もなかみはにたようなものだもん!
ちょっと手荒くなるかもしれないけど、がまんしてもらうよ!」
ラズは、泥沼の中にじゃたを首まで漬け込んだ。
「うう、苦しいじゃた……」
「これで『でとっくす』することで、カカオいぞんしょーを治療するんだよ!
ちょっと苦しいかもしれないけど、がまんしてねー!」
ちょっと大人になったので、カタカナ交じり口調は卒業したラズが、
泥風呂の中に入ったじゃたに語りかける。
「いまのうちに、じゃた様の必殺技を考えるじゃた!
特にざんすかはじゃた様より年下のくせに姉貴面しているのは気に食わねぇじゃた!」
魅世瑠が言うと、まさにそこにざんすかが現れた。
「ユーたち、何やってるざんす!
じゃたを返すざんす!」
「ざんすか、じゃた様の前にのこのこやってくるとはいい度胸じゃた!
ラズが人も獣もなかみはにたようなものって言ってたじゃた!
きっとそれがヒントに違いないじゃた!」
フローレンスが言うと、じゃたが泥の中から飛び出した。
「がるるるる、腹減ったじゃた……がぶがぶがぶがぶ!!」
「ぎゃああああああああああああ!? 何しやがるざんすー!!」
「やったじゃた! これがじゃた様の新必殺技の『じゃたファング』じゃた!」
「って、さっそくあたしらも襲われてるじゃた! でも本望じゃた!」
「じゃた様の聖なるかみあとがからだじゅうに残るよー!」
「やっぱり、このしゃべり方、誰がしゃべってるかわかりづらいと思うじゃたわ……」
ざんすかだけでなく、魅世瑠とフローレンスとラズとアルダトも、
新必殺技「じゃたファング」の餌食となり、地面に倒れた。
じゃたは、さらなる得物……チョコを求めて、森の奥に走っていった。
追いついたジャックとミレイユ、美羽、秋日子と要、
そして、合流したチョコ回収組メンバーの一式 隼(いっしき・しゅん)、三月 かなた(みつき・かなた)、
クラーク 波音(くらーく・はのん)、ララ・シュピリ(らら・しゅぴり)、
神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい)、レイス・アデレイド(れいす・あでれいど)、
霧島 春美(きりしま・はるみ)、ディオネア・マスキプラ(でぃおねあ・ますきぷら)は、
地面に倒れるざんすかと魅世瑠とフローレンスとラズとアルダトを見て、戦慄した。
「これは相当の使い手ですね……」
隼がつぶやく。
「怖いですわ……」
男嫌いなため、近くの優しそうな女生徒、波音や春美に、かなたが不安そうな視線を送る。
怖そうな男性の仕業かもしれないと考えてのことだった。
「5人も一気に倒すなんてっ」
「森の動物さんかなあ?」
波音とララが顔を見合わせる。
「おい、この森は、予想以上に危険なんじゃないのか?」
「たしかに、そうですね。でも、がんばらないと」
レイスの言葉に、翡翠が答える。
「これは事件ですね! 【マジカルホームズ】の血が騒ぎます!」
「ボクも、【アニマルワトソン】として、がんばるよーっ!」
春美とディオネアが気合いを入れる。
「いったい何があったんだろう……」
ミレイユが呆然とつぶやく。
「あのざんすかがやられてる……」
美羽も、動揺を隠せない。
「ひどい、いったい誰がこんなことをしたんでしょう」
「それを要が言うかな?」
「ううっ」
自分の「豹変」を恥ずべきものと考えている要は、秋日子に突っ込まれて落ち込むのであった。
なお、後日、制裁対象になったジャックには、
要から市販品のおわびのチョコが届けられたのであった。
First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last