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【十二の星の華】双拳の誓い(第2回/全6回) 虚実

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【十二の星の華】双拳の誓い(第2回/全6回) 虚実

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「なんだ、何が起こった!?」
 廃墟が地下から吹き飛ばされるのを見て、地上で戦っていた者たちは目を丸くした。
 クレーターと化した穴から、ココ・カンパーニュが飛び出してくる。その右手からは、光条部分を打ち出して力を使い果たした星拳エレメント・ブレーカーが、すでに消滅していた。
「愚かなまねを。そう、お前はいつでも愚かなのだ。だからこそ、あの……」
 穴の中から、ウイング・シールドの上に立ったアルディミアク・ミトゥナが、すうっと中空に浮かびあがってきた。
「おおお、ナイスアングル。カメラ回せ又吉!!」
 あくまでも懲りない国頭武尊が、猫井又吉に命令した。
「おう……、あれ? 映らない……。なぜ真っ暗に……」
 液晶のモニタ画面に何も映らないのに気づいて、猫井又吉がレンズを確認した。あろうことか、そこにデビルゆるスターがぴったりと貼りついている。
「なんなんだー、これは!?」
「ふふふふふ、ついに天罰のときがきたのにゃ」
 ゆるスター軍団とその他大勢のペットたちを連れて、シス・ブラッドフィールド(しす・ぶらっどふぃーるど)が国頭武尊たちの前に立ちはだかった。
「貴様、なんのまねだ」
 国頭武尊が叫んだ。
「イルミンスールの倉庫での一件は、話に聞いたにゃ……。俺様でさえ見たことがない、ココのスカートの下を見るなんて……。しかも、ココが自分から裾を捲って見せるなんて、おいしいシチュエーションで……。なんてうらやましいのにゃ!」
「あれは、すばらしい御褒美でした」
 臆面もなく、国頭武尊と猫井又吉が声をそろえて言う。
「絶対に許さないのにゃ!」
「さらに、アルディミアク様からも御褒美をいただきました。脳内カメラだけですが、バッチリ記憶されています」
「絶対に、絶対に、ぜえぇぇぇったぁぁぁいにぃぃぃぃ許さないのにゃあぁぁぁぁ!!」
 シス・ブラッドフィールドの叫びとともに、ゆるゆるアニマル兵団が国頭武尊たちに一斉攻撃を開始した。
 
    ★    ★    ★
 
 地上での小さな戦いとはまったく関係なく、ココ・カンパーニュとアルディミアク・ミトゥナは、激しく戦っていた。
「私に唯一対抗できる術(すべ)を放棄するとは、まったく馬鹿なことだ」
「私は、星拳にばっかり頼らない!」
「では、何に頼るという」
 ココ・カンパーニュを追い詰めながら、アルディミアク・ミトゥナが言った。
 避けられるものならば避けてみろと、手に持っていたウイング・ソードをココ・カンパーニュめがけて投げつける。
 光条兵器も使えぬココ・カンパーニュに避ける術はないと、アルディミアク・ミトゥナがほくそ笑んだとき、漆黒の大剣がウイング・ソードを弾き飛ばした。
「何に頼る必要もない。リーダーには、私たちがいます」
 フランベルジュを構えたまま、ペコ・フラワリーがゆるぎない自信をもって言った。
「それに何の意味が……」
 戻ってきたウイング・ソードをつかんで言い返そうとしたアルディミアク・ミトゥナが、ぐらりとバランスを崩しかけた。
 リン・ダージによって、地上からウイング・シールドを狙撃されたのだ。
「お下がりなさい。そうしていただけませんと。容赦はいたしませんわあ」
 雷術で、空中に光の矢を放ちながら、チャイ・セイロンが言った。
「おっと、こちらもお断りだ」
 逃げた先に、マサラ・アッサムが爆炎波をぶつけてくる。
「意味は、そなたが自分で見つけるのだな」
 ジャワ・ディンブラが、かすめるほど近くを高速で通りすぎた。余波を受けて、アルディミアク・ミトゥナが地上すれすれに高度を落とした。
「下がれ、お嬢ちゃん」
 やっと話せる位置にやってきたと、獣人形態となったシニストラ・ラウルスが、すぐそばへと走ってきた。
「なぜ!」
 当然、アルディミアク・ミトゥナが反目する。
「女王像の欠片を奪われた。新米の奴が、あろうことか他の荷物と一緒に持ち逃げしやがった」
「そんな物……」
「いや、今はまずい。ティセラもそうだが、取引先すべてとの関係も悪化するし、何より手下たちの統制が乱れる」
「なんてこと!」
 かんしゃくを起こしたアルディミアク・ミトゥナが、自分の乗るウイング・シールドの縁を、剣で叩いた。
 
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「海賊たちは撤退したようですね」
 アルディミアク・ミトゥナが戻ってこないのを確認して、ペコ・フラワリーが言った。
「どうやら、海賊に裏切り者が出たみたいだよ。それを追っかけていったらしい」
 マサラ・アッサムが、学生たちから情報を集めてきて告げた。
 海賊たちはちりぢりに逃げていってしまったようで、取り残されたのは下っ端の臨時雇いの荒くれ者たちだけだった。海賊に協力していた学生たちもほとんど逃げてしまったらしい。もっとも、変装していた者も多かったらしく、それを解かれてしまえば、最初からココたちに味方していたのか、クイーン・ヴァンガードのように勝手に遺跡に来ていたのか、見分ける方法はなかった。また、見分けたとしても、ゴチメイたちにとっては、それはあまり意味がないことだ。
「それで、これからどうします、リーダー」
 またもや跡形もなくなった廃墟を見て、ペコ・フラワリーがココ・カンパーニュに訊ねた。
「もちろん、追いかける。今度は、こちらが女王像の右手を手に入れて、あいつらをおびきだしてやろう」
「それは面白そうだ」
 ココ・カンパーニュの言葉に、マサラ・アッサムが真っ先に乗った。
 
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「やはり、こうなったか」
「ナガンの予想通りだぜい」
「とりあえず、みんな、女王像の欠片を追いかけて行っちゃったみたいッス」
 誰もいなくなった本当の廃墟のそばで、地面に正座したカリン党の三人が、アイン・ペンブロークの入れた粗茶をズズズっと啜っていた。
「じゃ、俺たちも追いかけるとするか」
「行くぜ、行くぜ、行くぜぇい」
「はいッス」
「いってらっしゃ〜い」
 夕日にむかって走りだすカリン党のメンバーを、アイン・ペンブロークがハンカチを振って見送った。だが、そちらはヒラニプラとは逆の方向だ。はたして、カリン党はゴチメイ隊に追いつけるのであろうか……。そして、女王像の右手の行方は……。
 

担当マスターより

▼担当マスター

篠崎砂美

▼マスターコメント

 双子座編、第2回です。
 今回も、結構な情報量となっております。とりあえずは、これで一通りの基礎情報は出たことになりますので、いろいろと組み合わせてどれが真実か推理してくださいませ。
 なお、武装欄はチェックしましょう。海賊を前にしてヴァンガードエンブレムをひらひらさせると、確実に敵と見なされてとっつかまります。
 また、知り合いが多いキャラなら、鏖殺寺院制服を着ていても味方と認識されますが、周囲のメンバーによってはクイーン・ヴァンガードに拘束されたりします。
 単純な敵対行動をとっていた場合、マスターが忘れている=NPCも忘れているですので事なきを得ますが、覚えていた場合は確実に影響を受けますので、そのへんも御注意を。一応、ちゃんとデータベース管理して、各NPCからの好感度を数値化していますので。
 変装は、かなりチープでも、相手が強烈に覚えていない限りはばれません。ただし、海賊は獣人が多いので、いったん許せない敵と認識されると臭いでばれる可能性はあります。
 
 話の進行の関係から、一部ゴチメイ隊の方で被るエピソードを省略します。そのため、次回は、双拳の誓い3 争奪 ヒラニプラ編 となります。