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リアクション
第8章 研究者の意地
「完成したのならもうすでに持ちだされているかもしれませんが、サンプルくらいは残っているかもしれません」
幸は薬剤室にウィルスのサンプルを探してみる。
「見つかりませんね・・・。ここにはないんでしょうか」
数十分間、探してみるが結局見つからなかった。
「向こうにも部屋がありますぞ」
他の部屋を見つけたガートナが幸を呼ぶ。
「んっ、開きませんね・・・」
行ってみるとドアに鍵がかかっている。
「仕方ありませんね、こじ開けましょう」
ソーイングセットに入っている糸と針を2本取り出す。
針の糸通しの穴があるところに、糸を巻きつかせてピッキングで開錠する。
「開きました!」
ドアを開けて中に入ると、棚の中に薬品が並んでいる。
「さっきの部屋と同じような感じですね」
「いや・・・見てみなよ」
カガチが部屋の奥を指差す。
幸は目を凝らして見てみると、血管のように不気味な細い線で繋がれている青白いタンクがある。
「もしかして、これで魔力を貯蔵しているのかねぇ?さぁて、さっさと壊すとしようか。・・・えっ!?」
SPタブレットをポリポリと食べながら、タンクを壊そうと近寄ると、リュースが破壊し唖然とする。
「化粧が濃い、若作りのクソババアの思い通りにさせるかッ!」
乱撃ソニックブレードでタンクをぶっ壊す。
「この貯蔵庫・・・跡形もなく壊してやるよ。年増ババア」
乱暴な口調で吐き捨てるように言い、これでもかと破壊して暴れまくる。
「リュースに任せて、俺たちは他のところもないか探してみよう」
真たちは他に貯蔵場所がないか探しに行く。
「鍵がかかってますね。もしかしたら、ここにも何かあるかもしれません」
幸はピッキングでドアを開け、中の様子を覗き見る。
「さっきの部屋にあったタンクと同じやつがありますね」
「島村さん、危ない!」
室内に入ろうとする幸を狙い、凄まじいスピードで迫るキラーパペットから守る。
「やっぱり出たようだねっ」
首を捻じ切ろうとする、もう1匹のゴーストの襲撃を女王の加護で間髪避け、幸を狙ってやってきたゴーストもまもとめてアーミーショットガンの銃口から十字砲火で焼き尽くす。
「椎名くん、またそんな派手に大怪我を・・・」
ゴーストから幸を守って脇腹を爪で引っ掻かれ、ボタボタと出血している真をナーシングで止血してやる。
「ん、誰かこっちに来るようだね。何か・・・ぎゃぁぎゃぁ喚いてるようだけど」
カガチが超感覚で騒ぎながらドタバタとやってくる足音を聞きとる。
「待て、小娘ーっ!」
目を凝らして廊下の奥を見ると、姚天君がケースを抱えてミューレリアを追いかけている。
「はぁっ、はぁ・・・もう限界だ。どこかに隠れようにも、術を撃ちまくってきやがるせいで、隠れられねぇし」
逃げるために走り続けたせいでミューレリアはかなり疲労し、体力の限界にきていた。
「それを返しなさいよ!」
「いやだっ!そんなに必死になって追いかけてくるってことは、よほど重要なもんなんだろ?せっかく手に入れたのに、そう簡単に返してたまるかっ」
「だったらその持っている方の手を、短剣で貫いてやる!」
「うあぁああっ!」
ドシュッ。
「まさか会えると思ってなかったよ」
カガチが片腕で庇い、ミューレリアの代わりに刺された。
ビシャァアアッ。
姚天君が貫いた刃を抜くと、壁に鮮血が飛び散る。
「病棟で会った時と変わんないわね、その実験動物によさそうな顔」
「じっ実験動物!?」
もし再び捕らわれてしまったら、実験用に使われるのかと想像してしまう。
「鏖殺寺院の制服・・・」
「何よ、私の服をじろじろ見て・・・。あぁー・・・この制服?いいカモフラージュでしょう?」
じっと服装を見る幸に、ニコッと笑いかける。
「なるほど活動しやすいように、そういうフリをしていたのですか・・・」
「いざという時にね♪」
「つまらない小細工が好きなんだねぇ」
腕を止血したカガチが言う。
「邪魔するなら始末するわよ?」
冷酷な口調で言い、血糊のついた短剣で同じ箇所を刺す。
「あんた・・・全然、躊躇しないんだなぁ」
痛みに耐えながらカガチは、生者だろうが平気で殺そうとする冷血な女を睨む。
「そう?私ね・・・いたぶるのが大好きなの。こうやってね!」
彼の腕に刃を刺したまま、短剣の柄をズリュッと捻るように回転させる。
「ぐぅっ、ぎゃぁああーっ!!」
「あっははは!面白いー♪」
悲鳴を上げるカガチを見て、姚天君はケラケラと笑う。
「(椎名くん・・・今のうちに魔力の貯蔵タンクを破壊するんだ)」
真に目配せで自分のことはいいから、さっき見つけたタンクを破壊するように伝える。
「(分かったカガチ・・・。壊したらすぐ助けるから、それまで耐えてくれ)」
姚天君に気づかれないように、真はドアを開けて室内へ入る。
幸とミューレリアも続けてこっそりと入った。
「なぁ、さっき施設内監視室に行ったらこれを見つけたんだけど。何か分かるか?」
姚天君がケースを開けた隙に、奪ったシリンダー型の容器をミューレリアが幸に見せる。
「必死に追いかけるほど大切なものなんですよね?」
「あぁ、庇ってくれなかったらやばかったな」
「もしかして、私が探しているやつかもしれません。これ私にくれませんか」
「それで何か分かるならいいぜ」
ミューレリアは容器を幸に手渡す。
「ありがとうございます。(これがウィルスのサンプルなら、姚天君の目的が分かるかもしれませんね)」
ばれないように、幸は容器を懐にしまう。
2人は施設から出ようと廊下へ出る。
「姚天君、あなたの計画を潰してあげます」
「フンッ!そんなこと小娘なんかに出来るわけないじゃないの」
「ウィルスが完成してないなら、その計画・・・まもなく海の中に沈みますよ?フフフ♪」
幸は勝ち誇ったように笑う。
時間稼ぎしてくれているカガチのために、一刻も早くタンクを破壊しようと、気絶しそうな痛みに耐えながら部屋の奥へ進む。
「何で壊れないんだ!」
鉄甲で殴って破壊しようとするが、傷一つつけられない。
「くっ、傷が深すぎて力が入らないっ・・・」
何度もタンクを殴ってみても、タンクを破壊できない。
その理由は血を流しすぎて、力がまったく入らないからだ。
「頼む・・・壊れろ、気合の・・・一撃ッ!」
拳に闘気を込めてヒロイックアサルトの一撃をくわらす。
ズカァアーンッ
穴を空けられたタンクが破裂する。
「―・・・はぁ、やった。やっと壊せた・・・。カガチ・・・今行くからな」
カガチと一緒に施設から出ようとドアを開ける。
「何なの今の音!」
「さぁ?何でしょうね♪」
「壊したぞ、魔力の貯蔵タンク・・・」
「なっ、何ですって!?」
せっかく集めた魔力を真に台無しにされ、姚天君は驚愕の声を上げる。
驚いている隙に真は、彼女の傍からカガチを引き離して助ける。
「くぅーっ、よくも・・・よくも大事な貯蔵タンクを破壊したわねっ。こうなったらお前らの魔力、全部奪い取ってやるんだから!」
捕縛してやろうと、真たちに向かってファイアストームを放つ。
「―・・・っ、氷術では防ぎきれないようですな」
ガートナは炎の嵐をガードしようとするが、片手に軽度の火傷を負ってしまう。
「島村幸・・・私の計画を台無しにした代償に、お前の大切なそいつを炭にしてやるわ」
火術で作り出した炎の槍をガートナに向かって投げつける。
「そんなのことさせませんっ。―・・・きゃぁああ!」
「へぇ庇って自分からくらうなんてねぇ。じゃあもっとくらいなさいよ!」
「いやぁあっ、私の服が燃える!」
「幸!!」
ガートナは素手で、幸の服の炎を消してやる。
「私を庇うなんて無茶なことをしてはなりませんぞっ。幸にもしものことがあったら私は・・・」
「ごめんなさい。でも・・・ガートナが傷つけられるなんて、私には耐えられないんです」
残酷な悪女から逃れようと、幸たちは必死に走る。
逃げ切った幸たちは、ラボで何のウィルスか調べる。
「何か危なそうですから私とガートナだけで、調べてみます」
幸は仲間をラボから出す。
「じゃあちょっと病院に行ってくるよ」
カガチと真は治療のため病院へ行き、縁と黒龍も念のため病院へ行く。
抗生物質を投与してもらい、真と黒龍の2人はしばらく入院することになった。
その頃、幸はウィルスを調べようと研究に没頭している。
「資料がないから分かりませんね・・・」
途中で姚天君やゴーストたちに遭遇してしまったため、資料を持って帰れなかったのだ。
「高熱とかだとインフルエンザ的なものでしょうか・・・?でも種族限定だとどれも該当しませんね」
博識と医術の知識でも、それが何のウィルスなのか、まったく分からない。
「なんかウィルスが増えてますね、突然変異でしょうか?まずい容器が壊れてしまいます!ガートナ、早く部屋の外へ!」
出る前に容器が壊れ、中のウィルスが空気中に漂う。
「うっ・・・」
「ガートナ!?」
ウィルスに感染したガートナが床に倒れてしまい、幸は慌てて抱き起こす。
「―・・・なんだか熱が・・・。それに・・・っ、まともに立っていられないようですな」
「私はなんともありませんが・・・地球人には効かないのでしょうか。それともウィルスに感染する該当種族なんでしょうか・・・」
幸はガートナをベッドへ運び、休ませてやる。
ウィルスは空気中から2・3日で消え、ガートナの体調も同じ頃に治った。
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