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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第2回/全2回)

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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第2回/全2回)
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「か、帰ってから、あの宜しければ…」
 お近づきになりたいことを思う存分アピールした。
「ずるいぜ、周…」
「いいじゃん、みんなで合コンとかすれば!!」
「そうだな」
 玖朔とアストライトもうんうん、と頷いてみせる。

 赫夜とケセアレの戦いはまだ続いていた。
 クルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)は、赫夜が劣勢とみるや、隠形の術で機会を窺い、隙あらばケセアレの背後から奇襲をかける。しかし、ケセアレは気配を感じたのか、カンタレラを振るうと、クルードは反撃を空蝉の術で回避し、再び隙を作り、その隙を突いて武器に毒を塗り、更に確実性を高めていた剣で疾風突きを試みる。だが、ケセアレは剣の達人。クルードの目論見は外れ、カンタレラをてこの原理のようにして利用し、一気に押すとクルードを豪腕で壁に叩きつけられてしまう。
「…ふん、剣に毒まで仕込んでおったか…我らのお家芸でもある毒の使用とはな…」
「くそ…」
 クルードは壁に叩きつけられ、意識を失いかける。それを佑也たちアルマゲストが抱えると、戦線離脱をさせた。
 そのクルードの犠牲もあり、隙ができたケセアレに赫夜は星双頭剣を振りかざし、斬りかかる。
「覚悟! ケセアレ!」
 しかし、その瞬間、シャープシューターで手を撃ち抜かれる赫夜。
「あう!」
 赫夜は星双頭剣を落とし、手から血が吹き出る。
 ミケロットが赫夜に向けてシャープシューターを撃ったのだ。シャープシューターは二丁とも、赫夜に向けられている。
「姉様!!」
 真珠が叫ぶ。
 どくどくと血が流れ出し、床に血の跡が付く。
 取り落とした星双頭剣をケセアレはゆっくりと手にする。
「…これで決着が付きそうだな、セルバトイラの赫夜」
「う、うう」
「お前の分身でもある、この星双頭剣で葬ってやろう…それがお前にとっての私の手向けだ」
「赫夜さん!」
 佑也は赫夜のもとへと走り出す。
 その前に、ケセアレは星双頭剣を振り下ろす。
 赫夜は覚悟を決め、ぐっと瞳を閉じた。
 その瞬間だった。
 星双頭剣が肌を切り裂き、血潮が吹き出る。
「…真珠!?」
「伯父様、やめて…」
 真珠が赫夜を庇って、星双頭剣をその身で受けたのだ。
 白いドレスがみるみるうちに、血に染まる。
「真珠!」
 にゃん丸やリリィ、佑也、そしてケセアレやミケロット、赫夜が叫ぶ。余りの出来事で誰も真珠の行動に気がつかなかったのだ。
「ま、まこと…なぜ、このような…」
 カランカラン、と音を立て、ケセアレの手から星双頭剣が落ちる。
「真珠−!!」
 ミケロットも駆け寄ってくる。
「真珠、真珠、目をさませ、真珠!」
 どくどくと溢れる血でべったりと濡れながら、赫夜が真珠を抱え起こす。左肩から袈裟懸けに斬られており、真珠は目を閉じたままで、ごふっと血を吐く。
「…もう、やめて…おねがい…」
 ひゅう、と一呼吸すると真珠の鼓動は止まった。
「まこと! まこと! いやだ! まこと! 目を開けて!」
 狂ったように叫ぶ赫夜。
「…殺せ、私を殺せ! そして真珠を返せ、ケセアレ!」
 きっと赫夜が血と涙で濡れた顔でケセアレを睨み付けた。
「…方法が一つだけある」
 ケセアレは静かな声で淡々と喋り始めた。漆黒の瞳には深い闇が広がっている。
「どういうことだ、ケセアレ…」
 赫夜は真珠を抱いたまま、ケセアレを見上げた。
「ケセアレ様、それはあなたの命を犠牲にすることになります! 止めて下さい!」
 ミケロットの言葉を制するケセアレ。
「赫夜、清符を出せ」
 赫夜の胸元でうっすらとセーラーの生地を通し、ひっそりと光を放つ清符。
「そして、私を星双頭剣で刺し、清符に血を吸わせろ。そしてその清符を真珠に与えろ」
「なんだと…?」
「我らの血が『黄金の血』として、非常に濃いものであることは言っただろう。その血の繋がったもの同士でしかできない命の回復の清符、これが『ルクレツィアの清符』なのだ…」
「ケセアレ、これでルクレツィア様を取り戻すつもりだったのか…?」
 清符を欲しがっていたケセアレの真意に気づく赫夜。
 何も言わないケセアレ。
 如月 佑也(きさらぎ・ゆうや)が星双頭剣を拾う。
「これ以上、赫夜さん、あなたに負担を背負わせたくない。…俺が代わりに、その苦しみを背負おう」
「それは出来ない。…これは私の使命だ。佑也殿」
 正悟はケセアレの言動によほど腹が立ったのか
「ケセアレ、あんた真珠さんを苦しめ、傷つけ、こんな姿にまでした! …例えどんな理由があろうが、あんたは自分で全て壊したんだ! そして今度は赫夜さんまでを苦しめるのか!」
 そこまで言ったところで、佑也が正悟にみぞおちに一発食らわせたフリをする。
「…お前も、本当は解ってるだろ? 赫夜さんは自らの宿命を受け入れたんだ…そしてケセアレも…見届けてやろう」
 と耳元で話す。と正悟はぐっと悔しそうな顔をして、涙をこらえた。同じく佑也の拳もぶるぶると震えている。