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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第2回/全2回)

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【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第2回/全2回)
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 漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)はすでに元ネッリ隊との戦闘に入る前、刀真とロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)に【パワーブレス】をかけておいたのだ。そして、刀真の死角を狙う敵を、優先して銃で撃退する。
「あら、怖いお兄さん達ね!」
 大きな手の平で自分やリース・アルフィン(りーす・あるふぃん)を狙ってくるネッリ隊には【光術】や【バニッシュ】を与え、目くらましをすると銃で追撃しながらも、月夜はあることが気になっていた。
(シャムシエルの殺し合いを煽るような言動、戦力が整いつつある状態での撤退…違和感を感じるわ…それにあのティセラ・クローン…注意が必要ね)
「ねえみんな、もしかしてここで人が死ぬのは何かのトリガーになるのかもしれないわ」
「何故そうおもう?」
 ラルクの質問に
「いくら『マ・メール・ロア』に行くからって、シャムシェルの言動、気になるの。…女の勘ってところかな。でも注意は必要だと思うの」
「了解! ロザリンド、リース、君達は攻撃よりも防御を頼む!」
「ええ、分かりました」
 ロザリンドは、相手の足止めのためと、攻撃をさせないため、ネッリ隊の足の甲への攻撃を続ける。直接攻撃を受けると、華奢なロザリンド達はひとたまりもない。それを避けるべく、盾にすこし角度をつけ、ネッリ隊の強力な力を流すような形をとり、時には槍を叩きつけ、攻撃の軌道を反らしたりと、自らの身を守った。
(武神さん達が何とかしてくれる事を信じて。ひたすら目の前の相手と戦います。できることなら殺すのではなく、戦闘不能で押さえたい…)
 リースは後方からの援護攻撃を担当する。ネッリ隊の体力を殺ぐことを目的に空間の温度を下げるため、ブリザードを連続使用、月夜たちの攻撃をバックアップする際の瞬時の目くらましのために光術を使い、連続で魔法術を使う。
「…うっ…」
 リースは魔法を使い続けると激しい頭痛に襲われてしまうのだった。それでも魔法を使い、光術を繰り出す。はあはあ、と息が上がってくる。それでもリースは止めようとしない。
(私は何の力もない普通の子で…たいしたことはできないかもしれない。私は…佑也さんと赫夜さん…それにアルマゲストの皆のために全力を尽くすって決めたの。だから。私はどうなってもかまわない。皆を助けるための力になれるのなら頑張るよ。そういうふうに生きたいの!! いいえ、生きてみせる…!)
 吐き気さえし、くらりと世界が上下入れ替わりブラックアウトした、と思った瞬間、刀真がネッリ隊の戦力を相当殺いだと見計い、まさに倒れようとしていたリースを【金剛力】を使って片腕で小脇に抱え、剣で道を斬り開きながら大型飛空挺まで走りだした。
「リースお疲れ様、さて、ひとまずは脱出だ!」
 月夜やロザリンドをラルクが肩に乗せて走る。
「ラルクさん、は、速い!」
「しっかり捕まってな!」
(大型飛行艇の場所に関しては、浮遊島に散らばっている生徒達から携帯メールなどで連絡が入ってくる。恐らく上手く静麻あたりがやってくれるだろう。格納庫にも、大型小型の飛行艇があると聞いている…とりあえずリースの状態が良くない…悪いが先を急がせて貰うぜ! アルマゲストのみんな!)



☆   ☆   ☆   ☆   ☆    ☆   ☆   ☆   ☆   ☆



 葉月 ショウ(はづき・しょう)
「正面から挑んでもまあ勝ち目は無いだろうから、どうにかして攻撃のチャンスを作るか…さて、この筋肉軍団どうしようかね」
 と呟きながらも、その身を蝕む妄執で肉体改造に失敗した時の幻覚を見せる。
「うおお…!? 体が…!」
 ネッリ隊の面々に異変が訪れるのをみたショウは、捕まらない様に一撃離脱を繰り返し、煙幕ファンデーションの中を隠れ身で姿を隠しながらさざれ石の短刀でのブラインドナイブスで本当に一人ずつ石化させていく。しかし、ネッリ隊の巨大な体躯には、ショウも苦戦する。
 そこに大型飛行艇にこっそり乗ってついてきた葉月 フェル(はづき・ふぇる)
「こっそりついてきて正解だよ。なんだか面白そうな事になってるけど、ショウがピンチっぽいから助けるよ。帰ったらししゃも買ってー。よーし、まずはこの改造ゴーレム行ってこーい」
オリヴィエ博士改造ゴーレムをフェルは放つと、煙幕ファンデーションを四発ばら撒いて視界を奪い、遠距離から綾刀で遠当てを使う。
「さって、そろそろカオスになってきたから、かえろ、ショウ」
「おい、フェル、お前どっからきた、それにまだ戦いはおわってないぞ」
「どうせ、この浮遊島も沈んじゃうよ、その前にみんなに迷惑がかからないうちににげちゃおーよ」
 自分が目をつけていた小型飛行艇にショウの手を引っぱり、空中へと発進してしまう。

 赤嶺 霜月(あかみね・そうげつ)は、元ネッリ隊と三人で連携して確実に一人ずつ倒していく。接近戦では『強化光条兵器』を発動させ居合斬りを放ち、遠距離の敵には『氷術』で牽制し接近して居合いを繰り出すと、ジャンヌ・ダルク(じゃんぬ・だるく)は、戦闘では『ヒロイックアサルト』を発動し身を守りつつ『ランスバレスト』で防壁などを無視して敵を攻撃していく。そして霜月の公私に渡るパートナーのクコ・赤嶺(くこ・あかみね)は、戦闘では狂血の黒影爪を使い影に潜み銃器を持った敵を優先して倒していく。
 霜月はティセラ・クローンをみつけると
「もう、無駄な戦いです。このような戦い、止めるべきではありませんか」
 ジャンヌやクコを背に護りながら、説得を試みる。しかし、外見はティセラであったが、中身はシャムシェルによって操られているのがティセラ・クローンの本質だった。
「ふふ、あなたはその背後にいる人たちを殺されてもそんなことが言えるのかしら?」
 ティセラ・クローンの言葉にさっと霜月の顔色が変わる。
「ほうら、みたことかしら。あなたも所詮は戦場に生きる人なのよ」
 ティセラ・クローンは言葉使いは大人しいが、シャムシェルなので残虐なことも平気で行えるようだった。ティセラを知る宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)
「おのれ、蛇女め…ティセラ様を愚弄するとは!!」
 そう怒りに震えるが、ティセラ・クローンはレプリカ・ビックディッパーを振りかざす。
 高月 芳樹(たかつき・よしき)は、ティセラ・クローンに戦いを挑む。しかし、クローンと言えどもティセラである。翼の剣で挑む芳樹をレプリカ・ビックディッパーで一撃ではね飛ばしてしまう。
「ティセラである私に勝てるとでも?」
 芳樹は、なぎ倒されながらもティセラ・クローンの中に二つの人格が芽生え始めるのを感じる。
(ティセラの自我と、シャムシェルの自我…二つが拮抗しはじめている…なんか危ない感じがするぜ…! ここは撤退したほうが賢そうだ!)
 それを悟ると、芳樹は爆炎波を繰り出し、ティセラ・クローンとは距離を取った。



☆   ☆   ☆   ☆   ☆    ☆   ☆   ☆   ☆   ☆



 祥子はティセラ・クローンとなんとか対峙したかったが、それよりもミケロットの説得を優先しようと考えた。丁度、ケセアレのもとへと駆け抜けていくミケロットが見えたからだ。
(シャムシェル…許さないわよ!!)
「ミケロット! 待って!」
 ミケロットの前に立ちはだかる祥子。
「…邪魔をしないでほしい、僕にはケセアレ様を助けなければいけない」
 ミケロットはシャープシューターを祥子に向けたが、祥子は怯まない。
「ミケロット。ルクレツィアに仕えていた時、貴方は何を感じていたの? そして彼女がなぜヴァレンティンノの家を捨てたのかよく考えてみて。その理由を貴方はもう、知っているのではないの?真珠がケセレアではなく赫夜たちを選んだ理由を考えて。貴方は何を惑っているの?何を見失っているの?もう、認めれば…それだけでいいんじゃないの? ルクレツィアに仕えていた時期が幸福であったと、ルクレツィアや真珠の居場所はヴァレンティンノではないと…」
「それでは僕の気持ちはどうなる!」
 とミケロットは初めて感情を激昂させた。
「…待ったよ。とても長かった。ルクレツィア様が城を出て、ずっと待っていたんだ。…分かっている。僕の気持ちが通じないことも。本当に愛していたルクレツィア様はもう、この世にいないということも。そしてルクレツィア様と真珠は母娘であっても、別の人生を生きることも。だけれど、この僕の気持ちはどこへ行けば良いと言うんだ!?」