校長室
【十二の星の華】空の果て、黄金の血(第2回/全2回)
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刀真は大型飛空挺の甲板で皆に「お疲れー」と声を掛けながら夜空を眺める。 「あれだけ頑張った報酬がこの綺麗な星空とあの幸せそうな光景なら…まあ相応か」 佑也と赫夜、にゃん丸と真珠の姿をそっと見つめる刀真。 佑也はぼろぼろになった赫夜に上着を着せてやる。 「ありがとう。佑也…さん、あなたがいなければ、私、ここまでこれなかった」 「赫夜さんが頑張ったからだよ。俺はそれに付いていっただけだ」 その言葉をきっかけに赫夜は佑也の胸に顔を埋めた。 肩がぶるぶる震え、嗚咽が漏れる。 きっと赫夜は泣いている姿を見られたくないのだろう。 「…何も、怖くないよ」 佑也はそっと赫夜の肩を抱く。 「佑也さん…あれで良かったんだ…ああするしかなかった。…ただ、今になって分かった。ケセアレの孤独が。ケセアレは孤独の中にルクレツィア様という、そして真珠という光を見ていたんだろう…私もあなたたちに出会わなければ、きっとケセアレのようになっていたよ…」 「そんなことはない。君はとても人間らしい魂を持った人だよ」 「…でも、私はたくさんの人の血を流し、命を奪った。…きっと地獄に堕ちるよ」 「そんなことはないよ」 佑也が慰める。 「赫夜さんが地獄へ行くなら、俺も地獄行きだ。…みんな、そうやって罪を重ねたり、人を幸せにしたり、色んなことがありながら、それでも一生懸命生きてる。自分を責めちゃ駄目だ。…赫夜さん、君の罪は俺が貰っていくから、大丈夫。閻魔様の前でも俺は堂々と胸を張って言うよ。全部、俺がしたことだって」 涙をこぼす赫夜を抱き締めてやる佑也。 強くて凛々しいセルバトイラの赫夜はそこには居なかった。ただ、子供のように嗚咽を漏らす少女がいるだけだった。 それを密かに覗く刀真だが、にやにやしているのを月夜にぼこっと叩かれると、ずりずりと引きずられて甲板に戻っていく。 月夜は、大型飛空挺の甲板で刀真の隣に座って夜空を眺める。 「刀真、お疲れ様…ケテル達とエクリプスを追っていた時を思い出すね…この星空も恋愛に効果ありかな?」 「さあねえ…月夜と俺の間には効果はありそうな気がするけど」 刀真の言葉に真っ赤になった月夜は 「ばか!」と刀真の頬をぶつ。 一方、大型飛行艇の中の一室では、自殺防止のためにやむを得ず軟禁状態にされているミケロットを見張る勇がいた。 星の光の差し込む中、ミケロットの瞳から止めどなく涙が流れ落ちていくのを、勇はただ、見つめているしかなかった。 (ミケロットさん…傷が癒えるのはいつになるか知れないけど、でも、ケセアレやルクレツィアさんの分まで、生き抜いて…) 勇はそう、祈る。 総司はアンジェラを探し出し 「一度合コンしてみたいもんだな、お互い好みのタイプかもしれねーし。恋におちる・か・も・よ」 とアプローチする。 「いいわよ。でも、未成年はお酒は駄目でしょ? 飲める歳になったら、お姉さんが相手してあげる。そうね、あなた可愛いし、あの僕ちゃんたちも良い子たちみたいだから、お酒抜きで遊びにいきましょう」 総司の顎をつつっと撫でるアンジェラに、また鼻血がつーっと垂れてくる総司だった。 「フランチェスカ、あの子も気になるわぁ」 黒龍に興味津々になっているマリア。 「たしかに、綺麗な子ねえ」 「あの長くて綺麗な黒髪! アジア独特の綺麗なアーモンド型の瞳…はまっちゃいそう」 黒龍は背中に悪寒を感じると 「…風邪でも引いたかな」 お姉様方に狙われていることには一切、気がつかなかった。 一方、エヴァルトはコンスタンツアに迫っていた。 「一目見た時から、俺は、貴女のことが…」 と一瞬周りを期待させたが 「同類と思えてならない! 貴女もアニメ好きなんだろう? 俺はロボットアニメ派、燃えアニメ派だが、勧めには乗る方だ! イタリアではどんなアニメが放映されているんだ?」 内容はアニメ系の話で盛り上がっているだけで、ロートラウトはそんな二人を呆れてみつめている。 コンスタンツアは淡々と 「白い頭の変なサムライっていうのか? …が、出てくるのとか…意味が分からないことも多いんだが…あと、やたらハレーションをおこしそうな色合いのニンジャ…黄色とオレンジだぞ? が、ものすごーく頑張るんだが、やたら話が長いものとか、気の弱い日本男児が急におっそろしい人造兵器に乗せられたりとか…でも正直、日本語版と聞き比べると難しい点がある。イタリア語で吹き替えられると、早口で圧倒的にラテンで気楽な人々っぽくなってしまうのが、語学の難しいところだな…ああ、かなり昔の話だが、セリエAにいた選手のテーマソングは『魔神が絶斗』だった。イタリア人は正直、日本語と日本のアニメが大好きだ」 割と冷静にアニメ評論をするコンスタンツア。 「に、日本語版まで持っているのか!!」 「やはり当地の言葉で聞きたいではないか。それがアニメファンとしての金のつぎ込みどころだろう」 言い切ったコンスタンツアにエヴァルトは 「是非! 是非、メールアドレスの交換を!!」 興奮冷めやらぬようだった。