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リアクション
全く同じイヴニングドレスに身を包んだローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)と、グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)は会場の隅で休憩していた。
双子かと思うほどよく似た二人はそれなりに注目を浴びており、すでに何人かの新しい友人も出来ていた。
「……あら」
ローザマリアは視線の先に、この場にはどこか相応しくない者の姿を見つける。
綺麗な赤い髪を持った少女の様子を察して、ローザマリアは声をかけた。
「あなた、一人? パートナーは?」
メルセデス・カレン・フォード(めるせですかれん・ふぉーど)は彼女たちを見て、答えを返す。
「はい。パートナーになっていただける方を探しに、来たので」
ローザマリアはグロリアーナと顔を見合わせ、メルセデスへ言った。
「私はローザよ」
と、にっこり笑う。隣にいたグロリアーナも悪い気はしていない様子だった。
「メルセデスです、初めまして」
初めましてと言うには、少し遅い挨拶だった。
紫月唯斗(しづき・ゆいと)は、契約時のことを「感覚が繋がる感じ」だと言った。
「いつもどおりに生活してたら、エクスの声が聞こえたんだ。答えたら急に光に包まれて、気づくとでっかい水晶の中に封印されてるエクスの前にいた」
トレルにとっては初めて聞く類の話だった。気づいたら契約してたとか、契約を迫られたなどという話ではない。
「で、水晶に触ったらテスタメント・ギア、えっと、俺の光条兵器が勝手に装着されたんだ」
つまり、封印を解いた、ということらしい。
「後で聞いたら、声に応えた時点で契約はされてたらしいんだけどな」
「エクスちゃんは、何で契約したのさ?」
と、トレルがエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)へ尋ねる。
「最初は、封印から解放されたいだけだった。だがな、唯斗としばらく過ごしてたら……いつの間にか惚れてしまってたよ」
と、エクス。
そんなこともあるのかと納得し、トレルはもう一人のパートナー紫月睡蓮(しづき・すいれん)へ目を向ける。
「私は皆さんに助けていただいて、唯斗兄さんが居場所をくれました」
どうやら睡蓮もまた、何かしらの経緯を経て唯斗と契約したらしい。
「なるほどね。すごく参考になった」
トレルがそう返すと、唯斗が満足そうに頷く。
「んじゃまたな、トレル。何かあったら呼べよ? 友達なんだからさ」
と、唯斗。思わず呆然とするトレルへ、唯斗は言う。
「俺たちはもう、友達だろ?」
エクスと睡蓮もトレルを見ていた。どうしようか迷いながらも、やっぱり嬉しくなる。
「うん、そうだね」
「エッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)と申します。一曲、お願いできますか?」
知的な雰囲気の漂う青年に片手をとられ、小林恵那(こばやし・えな)は思わずドキっとした。
「あ、はい」
ダンスをするのは好きなのでそう答えると、エッツェルのパートナー緋王輝夜(ひおう・かぐや)が割り込んでくる。
「何してるんだよ! あーもう、ごめんなさい」
と、まるで保護者のように頭を下げる。
「あたし、緋王輝夜っていいます」
「私は小林恵那です」
女の子二人がにっこりと微笑みあう。性格は正反対のようだが、仲良くなれそうだ。
「こいつに変な事されなかった?」
と、輝夜は一人ぼっちになったエッツェルを指さす。
「あ、はい。まだ何にも」
恵那の答えに安心する輝夜。それにしても、自分と同じ女の子と知り合えたのはラッキーだ。これもエッツェルのおかげ、と、思った時、そばにいたはずの彼がいなくなっていた。
見ると、いつの間にかエッツェルは、また女性を誘っているではないか!
「ごめん、また後で」
と、言い残して、輝夜は再びエッツェルをこらしめに向かった。
「ごきげんよう、イルミンスールのリリィ・クロウ(りりぃ・くろう)と申します」
と、丁寧にお辞儀をするリリィへ、トレルも無意識に頭を下げる。
「契約について知りたいんでしたわね。契約すると、わたくしたち地球人はパラミタ人っぽくなります」
「あ、何か聞いたことある」
「大きな作用としては、浮遊大陸パラミタによる拒絶が無くなりますわ」
トレルは納得する。それが何よりも大切なことだ、このパラミタにはまだまだ知らないことがたくさんあるのだから。
「例えば、シャンバラ人と契約したら、シャンバラ人同様女王の加護を得られますし、相手が精霊ならば、精霊同様に精霊の泉に蓄えられた知識を引き出せるようになります」
「へぇー。感覚としては?」
「んー、そうですね……女王の加護は説明が難しいのですが、『その線の向こう側に行ったら最悪命が危ない』という線に近づいた時、その事がなんとなくわかるようになりましたね」
分かるような、分からないような説明だった。
しかし、リリィが「地球に居た頃はうっかり踏み外しがちだったんですよ」と、笑うのを見て、トレルはなんとなく納得した。
「一度、やり過ぎて粛清されそうになっちゃいましたけど、あれは今考えれば危なかったです。最悪命が危ない線でしたわ」
彼女はどうやら、あまり平和な環境で育ってきたわけではないらしい。
トレルはそんな彼女に少し興味を抱きつつも、無難な答えを返した。
「なるほどね。ありがとう」
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