リアクション
という夢を見た。
完全に目を覚ましたカメリアは、のそのそと雪の中を這い出る。
自分のねぐらを振り返ると、そこには神社どころか雪しかない。辛うじて椿の大樹の根元に、祠とも言えない木で組まれた粗末な雪よけのようなものがあるだけだ。その中に小さな石が立ててある、おそらく、石碑がわり。
かつての彼女の村は人口にして3ケタにも満たない小さな集落で、ただでさえ生活も苦しい場所、神への祈りなどは最小限のものだった。神社のようなものを立てる余裕も技術もなかったのだ。
付近の木の枝を見ると、そこには長い葉っぱにカメリアが自分で内容を書いたおみくじが結び付けられている。地祇である彼女には、街の様子や知識は入ってくる。だが、彼女の村にはそもそも紙の技術がなかった。
「神社などない……っ! おみくじなんかないんじゃ……っ!!」
雪の中に膝を突いて涙を流した。
どうしたら良かったのかといういのだろう、もう今となっては何も分からない。
ただ一つ言えることは、彼女はこれまでずっと独りで――これからも独りだという事だ。
「は、は、は……やはり、夢は夢じゃの。何の役にも立ちはせぬ……」
そう、結局は夢、ただの夢、しょせん夢。
――されど、されど夢は。
「そういうものでもありませんよ?」
カメリアは、ここ千年は聞いていなかったであろう、人間の肉声を聞いた。
声を見上げると、そこには何台もの飛空艇がいて、夢の中で出会った面々が乗っていた。
声を掛けた鬼崎 朔は飛空艇から飛び降りて、カメリアの前に着地した。思ったよりも雪が深い、足首まですっぽり埋まってしまった。
「……」
声を出すこともできないカメリアに、朔は微笑みをかけた。
「言ったでしょう、覚悟をして下さいと。あれだけのことをしでかしたのです……」
「……」
「……あなたはもう、独りになどなれませんよ」
「あ、あああ……うわあああぁぁぁ……ああぁぁあああぁぁぁ〜〜!!!」
もはや言葉を交わすどころではない。カメリアはその場で佇んで大泣きを始めた。
恥ずかしいもみっともないも関係なく、感情の任せるままに泣いた。
それは、カメリアの地祇としての初めての産声だった。
朝日は登りきり、またいつもと変わらない日常を迎えた。街の様子はいつもどおりで、特に変わったところはない。
ただ一つ違うとすれば、近いうちに小さな白い着物を来た、髪の綺麗な少女が訪れるだろうということだ――
『新年の挨拶はメリークリスマス』<END>
みなさんこんばんは、まるよしと申します。
あけましておめでとうございます。
これが三作目のリアクションになります、皆様の多数のご参加ありがとうございました。もしよろしければ、今年もよろしくお願いします。
さて、今回のリアクションはいかがだったでしょうか、少しでも楽しんでいただけていればいいのですが。
とはいえ、今回は締め切りギリギリまで引っ張ってしまいました。前半が思ったようにまとまらず、後半までずるずると引きずってしまったせいです。まだまだ実力不足……今後も精進したいと思います。
というわけで、PCによっては妙に長い描写があるかと思いますが、まとまってないだけで、恥ずかしい限りです。
今回も素敵なリアクションが多くて相変わらずつやつやしていました。
意外というか何と言うか、カメリアを助ける側の人数が多く、あまりカメリア一味を悪辣な感じに出来ませんでした。そして今回も皆様のリアクションのおかげで、物語が予想もしなかった方向に飛んで行き、それ自体は満足しています。
うん、絶対一人で考えるより面白い。
色々と推敲の時間も足りず、お見苦しいものを見せてしまったかと思いますが、これからも頑張りますので、どうかよろしくお願いします。
では、また次回『ロマンティックにゃほど遠い』でお会いしましょう。
ご参加いただきました皆さん、そして読んで下さった皆さん、本当にありがとうございました。