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●交流……?

 一方秋葉 つかさ(あきば・つかさ)は、この場に来ても変わりない。
 もちろんつかさも交流に来たのだ。文化的な交流に。
 といっても、つかさが『交流』する相手は、日頃と変わりなく加能 シズル(かのう・しずる)である。
「さてシズル、いくらか遅れましたけれど本日は文化交流会、張り切って着物で参りますか」
 誰もいない更衣室にて、つかさは恋人に囁いた。
「おそろいの着物を用意してきました。着替えさせてあげましょう」
 シズルは抗わない。代々続く武士の家計だから、本当は着替えさせられなくても着付けなど慣れたもののはずだが、期待に潤んだ目で彼女はつかさを見上げた。
 むしろ、着替えさせてほしいのだ。つかさの手で。
「裸になってください、そう下着も全部脱いで……大丈夫、私も一緒に着替えますから」
 命じられるままシズルは生まれたままの姿となった。つかさもだ。
 ひんやりと空気の冷えたロッカールームだけに、二人の身は熱を帯びて、なんとも淫らな色と化している。
「和服の下にはロープをまとうもの。ご存じでしたか?」
 などと真っ赤な嘘をいいながらつかさは荒縄を己に巻いた。
 柔肌に、麻のロープがちくちくと刺激を与える。それを、力任せにグイと巻きつける。
「んっ……はぁぁ……この食い込みがなんとも……」
 上気しながらつかさはシズルにもロープを見せた。
「シズル……お待たせしましたねあなたも縛ってあげます、おそろいで嬉しいでしょう?」
「う、うん……でも……痛い……」
「痛い? なら、もっと強く巻いてさしあげますよ」
 つかさは赤い唇に舌を這わせた。強く巻かれたせいか、シズルの目尻に涙が浮かぶ。
 ロープに雫が落ちた。それはシズルの涙であったろうか。それとも。
「ああ、可愛いシズル……しっかり着物で襟周りとか隠してくださいね。見つかりたくはないでしょう? まぁ、見つかっても楽しいんですが……」
 かくてシズル、つかさの二人は、縛った荒縄の上に着物を着たのだった。
 つかさは堂々と歩くが、シズルはどうしても内股気味の歩き方になる。それを楽しむように小悪魔的な笑みを浮かべて、つかさはシズルの手を取った。
「あちらでは華道の交流会をやっているようですね見て行きますか。あらあら、そんなに顔を真っ赤にしてどうしました?」
「そんな、意地悪を言わないで……」
「意地悪? いいえ、これは愛です」
 と彼女に囁く一方、つかさは快活な声で、畳敷きで華道の展示会をやっている百合園の生徒たちに声をかけた。
「お花を観賞しましょうか。しっかり座りませんといけませんよ」
 いちはやく正座して、甘くて切ない痛みに、つかさは軽く眉を上げた。
(「ふふっ……この食い込み……いい……シズルに耐えられるでしょうか」)
 立ったままの恋人に言う。
「さあ、お座りなさいな」
 さあ早く、と、赤い唇でつかさは求めるのである。