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 第7章 ウィルソン大統領救出!

ゲドー・ジャドウ(げどー・じゃどう)は、
この世の不幸をすべて背負うような顔で、
気絶したウィルソン大統領を睨みつけた。

(偉そうにVIP待遇受けやがって気分悪い。
とか思ってちょっくら連れ込んでみたらこの騒ぎ。
何だよ、本当にVIPかよマジウゼェ。
大統領が道端歩くんじゃネェっての)

背中の墓標が、普段にまして重くのしかかってくるように思えた。

(いっそのことこのままぶっ殺して
地球とパラミタの関係悪化を狙ってやろうか。
ちょうど帝国と戦争終わったし、今度は地球と戦争もオツじゃねぇの)

しかし、すぐに思い直す。

「と、そんなことしたら、
俺様も巻き込まれるじゃねえか。
あーあ、面倒くせえ。
救世主サマにでも助け出させたフリで、
とっとと突き返すしかねえな。
俺様はたいむちゃんのこと調べるのに忙しいんだよ。
後、シラネ」

ゲドーが、皮肉を込めて呼んだ
「救世主サマ」こと、
シメオン・カタストロフ(しめおん・かたすとろふ)は、
「捜索していたらたまたま保護した」
ことにして、大統領を引き渡そうと考えていたが。

★☆★

グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)
アウレウス・アルゲンテウス(あうれうす・あるげんてうす)
エルデネスト・ヴァッサゴー(えるでねすと・う゛ぁっさごー)が、追ってきていた。

「おやグラキエス様、誘拐騒ぎをお聞きになられたのですか。
私とした事が、
あまりにも不幸そうな男なのでつい同情してしまい、
攻撃をためらってしまいまして……。
その隙に連れ去られました。
さて……。
いかがなさいますか?」
薄笑いを浮かべる悪魔に、アウレウスが食って掛かる。
「何を笑っているエルデネスト!
そもそもお前がVIPを誘拐されるから
主がご無理をなさる羽目に……」

「……あつ、い……。
誘拐騒ぎで、つい……出てきたが……。
やはり……まずかった……」
グラキエスは、衰弱していたのに、無理をして来たのだった。

「……エルデネスト、VIPを取り戻す。
見返りは払う。
”協力”しろ……。
と言うか……お前、絶対……これ狙ったな……。
お前が、攻撃を……ためらうなど、あり得ない」

「あ、主! この悪魔に協力を求めるなど……!」

「御意のままに」
アウレウスが止めるも、エルデネストは笑みを深くする。

「勝ち誇った顔をするなエルデネスト!
しかし、このまま放置していては主の名誉が傷付きかねん。
さっさと犯人を撃破し、少しでも早く主にお休みいただくしかない!」

★☆★

こうしたやりとりがあった末に、
シメオンの前に、グラキエスたちが飛び出してきたのだ。

「おや、
これはこれは。
私は善意の第三者。通りすがりに大統領を保護したにすぎません」

「だまされるか!」
グラキエスが、ブリザードを放つ。
「これで少しは涼しくなるだろう」

「ふむ、聞いてはいただけないようですね」
シメオンは言いくるめるのは不可能だと判断して、大統領を置いて逃げ出した。

「ええええ、そこにいるのって、大統領じゃないの!?」
山野 幸美(やまの・ともみ)が、
軍用バイクで急行してきて、
路地裏に放置されていたウィルソン大統領を保護する。

「大丈夫だった!?」
幸美は、大統領やグラキエスを気遣う。
「ああ、すまない」
「アタシ、よかったら大統領を乗せて送っていくけど?」
「そうしてくれると助かる」
「主!」
ふたたびぐったりしたグラキエスをアウレウスが人型に戻って支える。

★☆★

こうして、一行は、無事に大統領を救出した。

「怪我もなくてよかったよかった。
せっかくの万博なのに、
おじさんが怪我したらハイナもかわいそうだしね。
せっかくだし、帰りに空京万博餅つき大会にでも行ってお餅食べて帰ろうっと」
幸美は、朗らかに笑い、大統領を送り届けた。


ゲドーは、元々指名手配だったが、この事件で、さらに罪状を重ねることになる。