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古代兵器の作り方

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古代兵器の作り方

リアクション

    ◆ 

 ある意味それは、偶然たるも絶好の位置をとっていた。ラナロックを基点として、前方には美雪、ベアトリス、ミスティの三人。後方には愛羅、リアトリス、メアトリス、レティシアの四人が、移動しながら攻防を繰り返していた。が、美雪が足を止めたのをきっかけに、全員がその足を止める。挟撃の様になっていた彼等、彼女等はラナロックを警戒しながら包囲し、攻撃のタイミングを伺っている。と、言うのも――
「アアァアア、ぎぎいいいいいいいっぅぅ…………」
「言葉すら話さなくなっちゃったね………ラナさん」
 リアトリスの言う通り、ラナロックは既に言語と呼べるものを口から発していなかった。更に銃を構えてはいるが、その銃の残弾がわからないのだ。
攻撃傾向が銃だけ、というのであれば、まだ対処のしようがあるが、攻撃方法がランダムに変わればその危険性が増すのは言うまでもない。故に、彼女の持っている銃弾の残りが、今の状態で彼女を捕獲する唯一のチャンスなのだ。すでに彼らを追いかけていた段階で数発撃っている為、少なくともあと数発で、彼女こ攻撃は変わってしまう。
「来るよっ!」
 完全に後手に回っら彼等を他所に、ラナロックは動きをみせた。
「くいぃぃぃっきぃぇぁぁぁぁっはぁぁぁ!!!!」
「うぐっ!!!」
「旦那様ぁっ!?」
 が、彼等の危惧はより早いものになっていた。銃弾が残っているにも関わらず、ラナロックは既に銃を使おうとはしない。咄嗟にヴァジュラを構えたリアトリスは、そこで言葉を失った。距離を詰め彼へと飛び掛かった彼女は、ヴァジュラの刃先で手を、肩口を自ら傷付けているのだから。
「そんな――自分で自分を…………」
 自分の隣で起こっている状況を理解出来ないまま、以降口を紡ぐメアトリス。
「旦那様から離れなさいよぉ!」
 数歩下がったところから、ラナロックに向けてレティシアがワイヤークローを放った。そしてそれを手に巻き付け、懸命にリアトリスから彼女を引き離そうと引っ張る。が、ラナロックが動くことはない。不動のまま、どころか更にリアトリスに近付く。
「リアトリス、離れて! それじゃあ火術が使えないよっ」
「でも、今此処を離れたら…………」
「何故離れないんです!?」
 悔しそうに杖を振るベアトリスと、氷術を用意したまま声を荒げている愛羅。
「駄目よ…………アリスさんが動けば………ラナさんが危ない」
 ミスティも氷術を出したままに呟く。そしてそれを聞いた一同は、理解した。ヴァジュラの一本、その刃先がラナロックの胸、ギリギリのところまで止まっているのだ。故にリアトリスが少しでも退けば、更に追撃をしようと彼女が前進し、その刃が彼女の命を奪うのは明確。今現在も、ジリジリと彼女は自ら刃に近付いていた。
「どうする。あいつ、自分のやってることがわかってないのかい?」
 握るカタールに一層力を込め、ただただ見守るだけしか出来ないでいる自分にもどかしさを感じながら、美雪が呟く。
「ズルいよ…………自分を人質にするなんて」
 レティシアも悔しそうにしながら、懸命にワイヤークローに一層の力を込める。と、そこで、黒い塊が飛んできて、ラナロックの手に突き立つ。
「全く、どんどん訳わかんねー感じになってくな。あんた」
 ラナロックと、彼女と対峙するその場の全員が声の方を向くと、そこには未散が立っていた。
「っへっへ、助太刀じゃあないからな」
「……………! ぎゃははああはははははははぁぁぁ!!!!!!! 待っテタぜねーチゃん!!!!! 待ってタヨォオオォォおおおお! ぉお? 知らねーネーチャンたちが増えてンンナァア!?」
 未散の登場で、再び口調が元に戻った。と、そこでレティシアがワイヤークローを巻き戻し、難しい顔で考えていた。
「うーん、人物が、トリガーって事、なんでしょうかね」
 が、その言葉は誰から返ってくる事はなく、虚空に消える。ラナロックの謎の攻撃によって。
「待って。ラナさん――何やってるの?」
 メアトリスが目を見開いたまま、自分達の後ろへと振り向いた。彼女は持っていた銃を一挺、宙へと放ったのだ。
「ふぇードアウと、ゴ退場くださぁあああああぁい」
 言い終わると同時に――ラナロックは笑みを溢して未散の方へと銃口を向け、引き金を引く。その弾丸を避けた未散は、しかしそこで何かに気付く。あぁ、遅かった。と思いながら。彼女を狙っていた銃弾は、今彼女が放った銃の引き金へと当り、そしてそれによって弾丸が射出され後方から未散を襲った。
「はは………出鱈目だろ、そんなことすんの」
 が、弾丸は彼女の体に当たることなく、代わりに前方からの衝撃が彼女を襲った。今までの未散いた場所に、ラナロックがいて、未散は遥か後方に飛ばされていたのだ。
「アァアアアワリィなぁああねぇちゃん、『アイツ』じゃあねぇえええからヨォ、こまけぇエエ事出来ねぇンだよ」
 何が起こったのかがわからない状態の一同は、そこで漸く今起こった出来事を認識した。
「こんのっ!!」
 すぐ近くで立ち止まっていたラナロックが立ち止まっていることに気付いた美雪は、カタールを振りかぶって飛び掛かるが、蹴り飛ばされて強かに壁にその身を打ち付けた。