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Blutvergeltung…導が示す末路

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Blutvergeltung…導が示す末路

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第15章 AfterStory1

 封神台の下層地帯へ葬られたカフカは・・・。
「―・・・私の苦しみなど、金光聖母に比べたらたいしたものではないのだろうな・・・」
 何度も殺されるのと同じ空間で過ごすことになるのだが、己のことよりも、愛した女が今どうしているか気にかける。
「まぁ・・・ここへ送られていれば、の話だが・・・」
 出来ればそんな死を味わうような目に遭ってなければよいが、と願う。
 しかし彼の願いは聞き入られず、金光聖母も封神台の下層地帯へ送られてしまった。
「妙ですね・・・誰もいないとは・・・」
 かつての仲間と会うことも、そこで彼と言葉をかわすことも、想いも伝えることすらも出来ないだろう・・・。
「カフカさんはいったいどこにいるのでしょう・・・」
 この地帯にいるのは確かだが、空間内にいる彼を探すには途方もない時間がかかりそうだ。
 それも、探しに行く余裕があれば・・・の話だ。
 送られてきた罪深き妖怪に罰を与えるべく、すぐさま人の形をした影が彼女へ迫る。
 死体となった者たちをゴースト兵器に作り変えた時と同じように、パーツとなる手足をメスで斬り裂かれる。
 使い捨ての道具のように弄び、醜い姿へ変えた罰だ。
 何度も死刑にされるかのように、元の姿から屈辱的な姿に、何度も・・・何度も・・・変えられる。
 目玉を抉られ、背や心臓を裂かれてゆく。
「(―・・・あなたは・・・この空間のどこにいるのですか・・・・・・。まだ、お答えしていないというのに)」
 焼けつく痛みに声も出せなかったが・・・。
「變得喜歡・・・謝謝。我・・・也永恆地愛・・・・・・」
 やっと、そう一言呟く。



 玄秀たちから逃れてきたハツネたちは、悪人紹介のアジトで王天君の手当てをしている。
「王天君お姉ちゃん、・・・痛い?」
「我慢出来ないものでもないけどな」
「新兵衛、ちゃんと手当てあげてね?」
「はい、・・・・・・お嬢」
 不器用ながらも傷を消毒してやり、包帯を巻く。
「この傷が癒えたら、あいらを痛めつけてやるぜっ。まずは不老不死の体になってからだけどな」
「―・・・王天君お姉ちゃん」
「なんだハツネ?」
「あのね、ずっと一緒にいたいの。だから・・・もう・・・・・・」
 おそらく金光聖母も死んでしまい、オメガとアルファも手に入らないだろうから、これ以上計画を続行するのも出来ない。
 不老不死にしても同じことで、魔科学だけでなく生体系の術を扱える者がないければならない。
 本物の不老不死ともなれば、金光聖母がいなければ絶対に不可能だ。
 大好きなお姉ちゃんが封神台に送られるようなことになったら悲しい・・・。
 また新たな計画を考え、また命を狙われるようなことだけはイヤ。
 彼女にこんな傷を負わせたやつらは絶対に許せない。
 復讐したとしても、やっぱり命の危険がある。
「ハツネと一緒にいてほしいの」
「オレ様に不老不死を諦めろと・・・!?」
「そうじゃないの。でもね、いなくなっちゃうと思うと、その方がイヤなの・・・」
「だったらオレ様1人でも・・・!」
「おい、晩酌の約束はどうするんだ?」
 黙って聞いていた鍬次郎が、やっと口を開いた。
 守ると契約した者の1人まで討たれてしまい、彼のプライドも傷つけられ、新たに計画を立てたいところだが・・・。
「誘ったのはそっちだろ、約束は守ってもらわないとな」
 勝てずとも死ななければ、完全な敗北ではない。
「十天君のリーダーである王天君を逃がしちまったやつらを、一生悔しがらせるっていう手段もあるんだぜ」
「ここにいよう?」
「―・・・そうだな」
 ハツネと別れるのも寂しいし、鍬次郎との晩酌の約束もある。
 王天君はしばらく悪人紹介に身を置くことにした。


 
 一方、董天君の方は目を覚まし、グレンたちに連れられている。
 ナタクとどっちが先に目覚めたかと言うと・・・。
「俺が先に起きたんだから、俺の勝ちだな?」
「フンッ、あたいの能力を全て使ったわけじゃないしなっ」
「あれれ?スキルを使わせないようにするものも、戦いの基本なんだけどなぁー」
「ナタク・・・観覧車の中でとは、どいうことだ・・・?」
 詳しく聞かせてもらおうかと、グレンが口を挟む。
「んー、それは俺の・・・」
「バカ野郎、やめろっ」
「私も詳しく聞きたいです!」
 もしや恋の予感!?とソニアが目を輝かせる。
「ウフフ・・・ごまかそうとしても無駄ですよ」
「よーし、ここで言っちゃおうか」
「ざけんなっ」
「じゃあどこで言ってほしいんだ?」
 ニヤニヤしながら彼女の反応を眺める。
「あたしは・・・・・・浮気するやつはぶっ殺したいほどキライだ!!」
「ふぶっ!?。げほっげほっ」
 お決まりというかやっぱり腹を殴られ、激しく咳き込む。
 董天君は怒りながらどこかへ去ってしまった。
「これは・・・その、オーケー・・・ってことでは?」
「考えようによっては、そうとも思えるが・・・」
 もし違ったらナタクが不憫だとグレンが言う。
「きっとそうに違いありません!浮気する人はキライ、ってとは・・・ナタクさんに言ったのでは?」
「だが、殴っていったぞ・・・?」
「ナタクさん、まさか私たちに隠れて他の人に・・・」
「んなわけあるかっ!」
 恋多きヤツになった覚えはない!とナタクが怒る。
「じゃあナタクさんが浮気をなければ、オーケーってことですね?」
「そ・・・そうなのか!?」
「もしそんなことしたら・・・。彼女よりも先にどんな仕打ちが待ってるか、分かってますよね?」
 これだけバックアップしたのにと、ソニアが笑顔で釘を刺す。
「まずは罰として・・・、董天君に1年以上会わせないというのは?」
 こっちの信頼もがたおちになるわけだし、それくらい当然だとグレンが提案する。
「うわぁああ、それだけは簡便してくれぇええ」
 やっと付き合ってもいいと許しを得て、長い時間会えなかったら、部屋のスミスでどんよりしているしかない。
 まずは本当に一途なのか、ソニアとグレンは見守るというよりも、温かく見張ることにした。