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リアクション
第10章 “欲”が示す末路か story1
「まずいわ、あいつらに追いつかれる!」
金光聖母の後ろを走るドルイドが騒ぐ。
「お前を葬るためならば、どこまでも追ってやるぞ十天君!」
ゴットスピードで駆け、淵は鬼払いの弓でミナの十字砲火で焼かれた女の足を射抜く。
「淵の矢で止まらないなんてっ」
あの女には痛みというものがないのかと、驚いたルカルカが声を上げる。
「それどころかまったくこっちに気づいてないのかしら・・・」
「見ろ、ルカ。あいつ妖精さんを狙っているぜ」
「今のところ無事みたいね・・・よかった」
エースの声にその方向を見ると、陣たちに連れられて封神台の外へ目指している妖精の姿を見つける。
「ほっとしてる暇なんてないよ。ここで止めなきゃ、何されるか分からないしっ」
「そうね、クマラ。今度こそ倒さなきゃ・・・」
オメガやアルファだけでなく、多くの者を傷つけてきた悪女を地獄へ送ってやらなきゃと、その者を憎々しげに睨んだ。
「不死鳥よ、あの女の道を閉ざせっ!」
ルカルカはフェニックスを召喚し、草花を燃やして道を塞ぐ。
「淵、泡さんにかけたゴットスピードを解除してっ」
「(バーストダッシュで飛んだ解き、狙いが定まりづらいからか・・・)」
彼女の指示に彼は小さく頷く。
「もっと高く飛んで逃げようっていうの?でも、その翼のスピードじゃ無理ね」
「どこまでも私たちの邪魔をしようというのですか・・・」
「アルファもオメガも計画に利用させないわ。奪うというなら、ここで倒す!」
ドラゴンアーツの鉄拳で金光聖母の腕をへし折る。
女の骨が砕け、乾いたような鈍い音が響く。
「まず羽虫を排除せねばいけないようですね」
そう言うと彼女は地面へ降り、足に刺さったままの矢をズブリと抜いて捨てる。
「もう1度・・・金光陣の中に取り込んでやりましょうか」
「時間稼ぎなら私たちがしてあげるわっ」
「またのあの中に入るなんて冗談じゃないわ!」
崩落する空を放をドルイドに放たれ、光のレーザーがルカルカたちを襲う。
かわしながら術を止めようとアヤカシの女の方へ駆ける。
「ウフフ、通行止めでーす♪」
その彼女をウィザードがブリザードで妨害する。
「魔法で攻撃するって楽しい〜、きゃははっ」
猛烈な吹雪だけでなく、炎の嵐や雷の雨を放ち、魔法を使い相手を痛めつける楽しみを覚えた魔女が楽しげに笑う。
「すっかり毒されてしまっているな」
目的のために他者を傷つけても平気になってしまっている魔女に怒るでもなく、その先にあるのが利用されるだけの道しかないのにと、エースが哀れむような眼差しを向ける。
「安心しろ、命までは取らぬ。だが、少々キツイ罰を受けてもらうぞっ」
エクスはサンダーバードを召喚し、雷の羽ばたきでウィザードを感電させ、仲間の援護をする。
「唯斗!」
彼の方へ顔を向け、早くの術を使うのだというふうに言うと、彼は静かに頷いた。
「金光聖母は討たせないわっ」
魔女の方は召喚術で妨害され、術がルカルカに当てられない。
「不老不死になりたいんだっけ?大人しくしていないと、研究どころじゃなくなるわよ」
ナラカへ落とすつもりはないが、ウィザードの背後をとったルカルカが脅しを含めた言葉を投げつける。
「―・・・・・・っ!!」
ぽんぽんっと軽く肩を叩き、そのセリフに合わない殺意のなさそうな笑顔を向ける彼女の姿が、より恐ろしく見え、恐怖のあまり動けなくなってしまう。、
「その術の弱点は、発動までの時間が長いってことが弱点ですね」
カフカを道の途中に捨ててきた遙遠が言い、ウィザードの魔女のブリザードを超える威力の吹雪を放ち、金光陣の発動を阻止する。
「早く治療してあげなきゃ・・・」
「おっと、動かないでもらおうか」
十天君を魔法で回復させようとするドルイドの首筋に、紫音が刃の冷たい切先をちょんと当てる。
「魔女さん、紫音をあまり怒らせないほうがえぇどすぇ?」
妙なマネをしないように、風花が傍らで言う。
「私たちの計画を邪魔したら、アルファとかいう裏切り者の魔女をいじめてやるんだからっ」
「うーん・・・それは困りますぇ。そないなことしたら、私もちょっと鬼になるかもしへんどすぇ」
術を使わせないように相手の腕をギリギリと握り締め、怒気を含んだ口調で言い、視線だけで倒しそうな目つきで睨みつける。
「(むぅ〜生意気なヤツら!むかつくぅうう)」
言葉には出さないものの、アルスの近くで守られているアルファを睨み、今にも怒り狂って暴れ出しそうな感じだ。
自分を守る盾がなくなったアヤカシの女を、氷雪比翼で空を舞う遙遠が冷ややかな眼差しで見下ろす。
諦めが悪いらしく、どんなに傷つこうとも金色の双眸にアルファの姿を映している。
「あなたさえ死んでくれれば、不老不死の計画とやらも破綻しそうですね?」
自分など眼中にないという態度に気分を害することもなく、遙遠の方もまったく表情を崩さずにブリザードを放つ。
「これだけ人員を失ったわけですし、パラミタを自分たちの住みやすいようにするという策も、壊れるでしょうね」
「私はあなた方などに倒されはしません・・・。ゆえに、魔法を扱える協力者が減ろうとも、そこのアルファを捕らえて使うまでです」
吹雪をかわしながら、まだ魔女を利用しようと企む。
「おや、オメガさんを狙うのは止めるということですか?」
「いいえ」
女は遙遠の言葉に冷笑し、首を左右に振る。
「いらなくなったものは排除するだけです」
まるで不用品を捨てるかのように言い放った。
「どうやら残酷死したいようですね・・・。どのような死に方を所望しますか?」
さすがの遙遠も不愉快になったのか、相手をどう殺してやろうか策を練る。
「フフフ・・・あなたのような子供に、私が殺せるとでも?」
この世に生まれて100年も満たない若造がほざくなと苦笑する。
「そちらは誰1人として、倒していないようですが」
「勘違いしないでください。私はリスクというものがキライなだけです」
この私が本気で相手をすれば、貴様らなど容易く葬れるという感じで言う。
吹雪から逃れ、アルファに迫ろうとしたその時。
「殺す殺す殺す、ゴキブリは皆殺しにする!!!」
地獄の天使の翼を憎き害虫の羽と見間違えたセレアナが、ヴァーチャースピアを振り回しながら消えかけている炎を踏み、殺気立ちながら金光聖母を襲うとする。
まだ死期の幻影に苦しめられ、家に住み着く害虫と人の形をした相手すら区別がつかない。
「あいつが十天君の1人?ここからじゃ見えないけど、蜂の巣にしてやるわっ」
パートナーといつの間にやら合流したセレンフィリティは、始末出来れば相手の姿などどうでもいいと、二丁のマシンピストルを手に乱射する。
「やかましい小娘ですね・・・」
品のない振る舞いに、顔にかかった金糸の髪を指で退けつつ心底不愉快そうに、小娘と呼んだ者を見下ろす。
「地に降りれば、その方々にやられてしまうでしょうけど」
どのみち飛び続けていることは不可能なのだからと遙遠が言う。
ヴァジュラの白く輝く刃に、グレイシャルハザードの淡い青色の冷たい冷気を纏わせる。
「私が粗野な小娘の手にかかるとでも?」
「全てを利用しつくし、不要になったら道具のように捨てるようなあなたこそ、ヨウエンから見たら、品の欠片もないように思えますね」
吹雪で行く手を阻んでやりながら、相手を殺すだけに用意したその刃で、斬り刻む隙を狙う。
「ずいぶんと騒がしいですね・・・。石にしてさしあげたいところですが、闇に畏怖する姿も面白そうです」
こちらの手を粗方読んでいる者もいるだろうと、金光聖母はペトリファイでなくエンドレス・ナイトメアがよいかと選ぶ。
じわじわと闇に包まれていく者たちを見下ろし、どのような畏怖を感じるか観察する。
「何度心を殺されても、立ち上がれると思ってるけど・・・。もし・・・あの時みたいにっ。それだけは嫌・・・嫌よっ」
セレアナはフォーティテュードの硬い精神で護られているが、パートナーの方はまた死期を見せられたり、今度はまた本当にそういう目に遭うのではと不安感に襲われる。
「―・・・セレン!?ただの魔法よ、本当にそんなことを起こるはずがないじゃないのっ」
やっと正気にもどったセレアナが彼女の元へ駆け寄る。
「(ふざけるなっ、私1人だけ・・・こんなっ)」
さっき2度も3度も殺されようとも変わらない、忌まわしい過去をぶっ倒したばかりなのに・・・。
ムカツクような苦痛に心を刺され、術をかけてきたあの女にも、それから逃れられない自分にも苛立つ。
「―・・・他はよく耐えていうようですが、術にかかったのはその娘くらいですね・・・」
他の者は闇系の耐性を得ているのか、やや不服そうな感じに、少し眉間に皺を寄せる。
「気晴らしにお好きなようにしてみては?」
「えぇ・・・、お望み通りにしてさしあげます・・・」
さっきまで自分を殺そうとしていた遙遠が、諦めたかのように目を瞑るのを見た金光聖母が、彼に罰を与えようと近づく。
しかし彼はそうしながらも、殺意を込められた凶器を手に握ったままだ。
それがトラップなのか、本当に敗北を認めたのか確認する間はない。
何も仕掛ける様子もなく、ただ見上げているだけのルカルカを警戒しつつ、まずは遙遠を仕留めようとする。
だが本物の死期は・・・。
「―・・・急に・・・・・・力が・・・っ」
突然ぐらりとよろめいた金光聖母へと、ゆっくりと・・・歩み寄ろうとしている。
飛ぶ力も失い、力なく地へ落ちる。
唯斗の呪詛がようやくアヤカシの女を蝕み始めたようだ。
「終わりですね」
冷酷に言い放った遙遠が留めを刺そうと、ヴァジュラを手に襲いかかり、頭部を貫いた。
「―・・・また余計なのがいますね」
―・・・・・・はずだった。
殺気看破などのスキルがない者では、視覚で確認しづらい者が、その身を犠牲にしたのだ。
金光聖母の変わりに受けた男は首元から赤々とした血を流す。
「クッ・・・すまん。金光聖母。貴様の役に立ちたかったが・・・私は役立たずだった」
痛む身体を引き摺りながら、光学迷彩で姿を見えにくくして追ってきたカフカが、愛しき女を護るように彼女へ覆いかぶさっているのだ。
「ぐっ・・・・・・がはっ」
刃が抜かれると、ごぼっと口から血を吐く。
「だが・・・貴様の事は地獄からでも想い続けているぞ・・・私の姿を嫌わないでくれてありがとう」
私はそう長くはもたないだろうと、愛する人に最後の言葉を伝える。
「あなたは・・・死ぬのですか?」
命を諦めた言葉に金光聖母が眉を潜めて問う。
「あぁ、そのようだ・・・」
「カフカさん・・・私は・・・・・・」
慈悲の心などない機械のように、ほとんど表情を変えることのなかった女が、金色の双眸に動揺の色を見せる。
生き物が死ぬとは、こういうものなのだろうか。
心臓を潰したり脳などを壊せば死ぬ。
ただそれだけのことだと思い、他者の道具のように扱ってきた。
自分のために命を失いかけている男の死を、どうやって受け入れたらいいものか分からず、その場から動けなくなってしまう。
「(何をしているんだ貴様、早く逃げろ・・・。ぬぬぬっ、もう体が思うように動かぬ・・・・・・)」
冷たくなっていく手で女の美しい顔に触れる。
「(願わくは・・・ナラカでなく封神台の地獄へ送られるといいのだが・・・・・・)」
自分の犯した罪をその身で受け続け、転生することのない、永遠の死の地獄逝き・・・。
なぜだか、どうせなら死ぬならそこへ逝きたいと願ってしまった。
カフカの望みを叶えるかのように、完全に命を失う前に、赤々とした光が彼の器と魂を包んだかと思うと、封神台の外へはじき出さす。
赤い光の尾を引きながら外へ飛び出たそれは、封神台の天辺へ吸い込まれる。
逝き先はもちろん上層地帯でなく、下層地帯だ。
そこへ送られたカフカは完全なる死を与えられ、2度と転生することもなく、罪の罰を受け続けることになる。
封神台の外に亡骸が存在することすら許されず、罪人の墓標となるのだ。
カフカの死から何分も絶たないうちに、呪詛によって動けなくなってしまった金光聖母も遙遠の手にかかろうとしている。
大切な存在たちを奪い去ろうとする女に対してでなく、哀れな末路の男にほんの少しでも慈悲を向けている者もいるだろうが・・・。
「よかったですね、同じ場所に逝けそうですよ?」
遙遠はどちらも哀れんでやらず、アヤカシの女の身体を斬り刻む。
傷口はだんだんと凍りつき、細胞も徐々に壊死していく。
「(すみません・・・あなたがせっかく盾になってくれたというのに・・・)」
聞こえてくる呪詛が、まるで経のようにも思える。
だがそれは、自分を死地へ送るための言葉だ。
「ぐっちゃぐちゃにされて死んだか。ずいぶんと不幸な最後じゃん?」
恵まれた容姿を無残な姿にされ、惨めな女の最後を見ようとゲドーが木々の陰から、身体ごと封神台の下層地帯へ送られていく不幸の元凶の末路を見届ける。
「悲鳴でもあげるかと思ったけど、対して抗いもしないなんて、ちょっとつまらない気もするが・・・。まぁ〜、ナラカよりも最悪な場所へ逝っちまったわけだし?どんな苦痛を受けるかしらんけど、手足をもがれるだけの生易しいものじゃないことはたしかだな!」
ゲドーはケラケラと嘲笑い、封神台の出口へ向う。
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