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リアクション
〜 STEP 5 ヒーロー・インターミッション 〜
「さぁ、いらはいいらはい!おせんに、キャラメル、ヒーローグッズはいかが?
悪者さんグッズもあるよ〜見てって見てって!
フレイさん!そっちのお客さんよろしく〜!」
「はいはい!ドリンクはこちらで販売しております〜釣銭の無いようお願いしま〜す」
急遽臨時で設けられた休憩時間
15分という短い時間にも拘らず販売ブースは奥の人で賑わい販売係も忙しそうにしている
飲食とヒーローグッズ販売担当の二人
霧島 春美(きりしま・はるみ)とフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)も早々に対応に追われているようだ
コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が担当する写真販売ブースもそれなりの賑わいらしい
もっとも、一番売りたいパートナー小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)がトラブル込みで早々に消えてしまったのと
ルカルカ・ルー(るかるか・るー)扮する【暗黒騎士ルカ】の写真がバカ売れしてる事
あとお母さん達に【悪の行動隊長・虎鬼】こと山下 孝虎(やました・たかとら)の受けが良く
セット写真が妙に売れている事が釈然としないらしい様子である
ヒーローグッズの補充をフレンディスにお願いしながら春美が疑問気味に呟く
「なんだかキャラグッズが早々に売れてるんだよね、まだまだ出てないヒーローも多いのにねぇ」
「リネンさんがあれだけ活躍してくれましたから
早めに買って応援グッズ代わりにしようという方もいるのかも知れませんね、はい春美さん」
「ありがと。でもそれを言うならフレイさんのお仲間さんでしょ?二人とも出てたじゃない?」
グッズを受け取りながらフレンディスの言葉に笑いながら突っ込みを入れる春美
その言葉に正直に納得するフレンディス。お仲間の二人というのは先程正義と悪両方に出演していた
アリッサ・ブランド(ありっさ・ぶらんど)とベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)の二人である
「そうなんですよ。本当に驚きました私に一言あっても良いですのにね
あんなに活躍されて……お二人も子供達を気にしてステージに出て頂いているのでしょうか?ご立派です」
しみじみ納得するフレンディス
本当は二人とも彼女が心配で参加したので、聞いていたらそれは違うと声を揃えて叫ぶに違いない
そんな会話の中、子どもの一人が春美の売っているヒーローグッズの一つに手を出した
「おっと、お客さん目が高い!それは、ニャンコにちなんで限定285個だけ作られた
ニャンコのスペシャルフィギアよ?」
「……なんかかわいくてつよそう……このあとでてくるの?」
「もっちろん!とっても強いんだぞ?」
「わかった!これかう!!」
「はい、まいだぁ〜りぃ!」
超 娘子(うるとら・にゃんこ)のミニフィギュア、お金を受け取りにこやかに手渡す春美
ふと、フィギュアの入った袋に何か入っている事に気がつき、買った女の子が取り出している
「それ、お姉さんのサービスね。食べたら大きな声でヒーロー達を応援してあげて
みんなの声が正義のエネルギーになるのよ?」
「おうえん?」
「そ、さっきはちゃんとしてくれた?」
春美の問いかけに、うん!と元気良く答える女の子
その頭をよしよし、と撫でながら春美も元気いっぱいに笑いかえす
「覚えておいて!あなたの声はちゃんと世界に届く
夢や希望、みんなの想い、そういうものを忘れず信じようと思える心を
ここで皆が見せてくれる筈、だから最後までしっかり見て……応援してあげて」
「わかった!ありがとうおねえちゃん!」
紙袋を大事そうに抱えて親と席に戻る姿を見ながら、その背中にエールの言葉をウインクと共に彼女は送る
「あなた達は未来の人間……そして、未来は素晴らしいのよ」
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一方で観客席の方もそれぞれ対応に追われていた
お約束上、正義が勝つとはいえ子どもは子ども、目の前の迫力ある光景に泣き出したりする子も多い
また、興奮してヒーローになりきって友達とごっこ遊びをしたはずみで喧嘩に発展する事も少なくない
そんなわけでルファン・グルーガ(るふぁん・ぐるーが)とウォーレン・シュトロン(うぉーれん・しゅとろん)は
そんな子ども達の対応に奔走していた
「ほらほら、お兄ちゃんもそこまでにして仲直りをしないとな
ヒーロー達だってみんなが仲良くしてほしいから頑張っておるのじゃ
わしだって見ていて凄いと思ったくらいじゃぞ、その頑張りを喧嘩でダメにしたらかわいそうじゃろう?」
現在は兄弟の喧嘩の仲裁をしているらしく、憮然としている兄をルファンがたしなめている
一方で泣いている弟の相手をしているのがウォーレン、彼らしく明るく頭を撫でて話しかけている様だ
「兄ちゃんに負けそうで悔しいか?まぁ小さいし兄ちゃんには叶わないよなぁ
でも見たろ?ヒーローだって叶わない相手にあんな風に立ち向かって戦ってんだぜ?」
涙の後をハンカチで拭いてやりながらウォーレンは子どもに話を続ける
「戦うのがカッコいいって真似したくなるのもわかるけどよ?今度はそういうところをしっかり見て真似してみな?
そうすりゃお前だって兄ちゃんみたいに強くてカッコよくなる!ぜったいにな!」
「……ホント?」
「ああホントさ!一緒に客席にいながら見ててやるよ、その為にはしっかり応援してやってな?」
「うん!」
兄弟仲良く立ち去る姿を見送るルファンとウォーレン。子ども達の様子をみてルファンが口を開く
「子どもの為の舞台とういうのは初めてだが、なかなかいいもんじゃのう
相手にしてると逆にこちらが驚かされる事も多いものなのだな」
「だから昔っからあるんだろ?まぁおまえも楽しそうだしな、参加して何よりだ」
ルファンの言葉に愉快そうに言葉を返すウォーレン。そこに新たな小さいお客がやってくる
「おばさん!あっちで迷子で泣いてる子がいるよ〜?」
「おば……いやこの人なぁ」
言葉遣いと長髪の容姿からくる子どもの間違いを正そうとするウォーレンをやんわりと制するルファン
子どもの指差す先にはアルジェンシア・レーリエル(あるじぇんしあ・れーりえる)に手を引かれた女の子の姿があった
「迷子か、礼を言うぞ。教えてくれてありがとうな、少年」
「さぁ間もなく始まりますよ、遊びたい気持ちもわかりますけど席に戻って下さいな」
「え〜もうちょっと遊びたい!」
客席通用路で駆け回る子ども達をなだめ、席に誘導しているのはアデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)
促されつつ、勢いで文句を言いつつなかなか席につこうとしない子ども達だが、彼女は動じず席へ促す
「はいはい、でもずっと遊んでいたらヒーローが悪の組織をやっつけるところを見られなくなりますよ
さっきも楽しかったのに見られないなんてもったいないでしょう?」
「あ、そっか!わかった、みんな戻ろうぜ〜!」
一転して客席に戻りだす子ども達。それを見送り、ふと彼女が横を見ると成り行きで手伝ってくれていた二人
ミーナ・ナナティア(みーな・ななてぃあ)と秦野 萌黄(はだの・もえぎ)が感心したように眺めているのが目に入った
「どうしたんですか二人とも?そんな風にこっちを見ても何も出ませんよ?」
「いや……何か達人的なオーラがキラキラしてるんですけど……ねぇ?」
「うん……アデリーヌさん、保育士さんとかやってたわけじゃないんでしょ?」
ミーナの言葉に萌黄が頷きアデリーヌに質問する、それに彼女は笑いながら返答する
「もちろんですよ。ただ何となく自分の小さかった頃を思い出してるだけですよ
自分も子供の頃はこんな風にちょこまかしていて落ち着きがなかったなぁって
目の前の事に一生懸命なのが子どもですからね」
彼女の告白をへ〜と意外そうに聞くミーナと萌黄、苦笑しながら話は続く
「最も、私は吸血鬼だから千年も昔の事になりますけどね
大人って成長して昔と変ってしまう事が多いから子どもの頃って忘れてしまいがちでしょう?
ついつい大人目線で叱ってしまうんですけど、案外思い出せば何をしたいか何となくわかる気がするんです」
だから、自分の時よりももっと楽しんでもらいたい
好奇心とお祭り気分で参加した自分が、それなりに熱を持って動いている事を改めて実感するアデリーヌ
『会場のおともだち〜!間もなく後半の上演時間になりますよ
トイレや食事がまだの人は、早く済ませて席に戻ってくださいね!』
『そしてもう席に座っているみんなのために、もう一度応援の練習をしようと思うんだ!
一緒にやってくれる人、手を上げて〜!』
後半開始の開始合図代わりのテスラ・マグメル(てすら・まぐめる)と長原 淳二(ながはら・じゅんじ)の担当するMCが聞こえる
間もなく始まる後半戦の開始時間を確認し、ミーナ達に礼を告げてもう一度誘導の仕事に戻るのだった
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「はい、これで手当て終了でございますよ
ただその包帯とバンソウコウまみれの姿はちょっと見せないほうがいいかもしれませんね」
「あううう……桜ちゃんが本気なんか出すから……」
「ゴメン……でも、あんな事言おうとすりゃ本気にもなるじゃん、ぶー」
一方の演者控え室の隣の医療室
常闇 夜月(とこやみ・よづき)から治療を受けていたアリッサ・ブランド(ありっさ・ぶらんど)がとほほと落ち込んでいる
とある禁句で思わぬ本気攻撃を喰らった体はすっかり傷だらけである
その様子を見てボソリとぼやいたのは元凶の飛鳥 桜(あすか・さくら)である
「そもそも孝虎の奴があんなアドリブ入れなきゃいいんだよ……後半の出番がなきゃ遠慮なく手が出せるのに」
悔しさのあまり、全ての元凶のミスをした山下 孝虎(やました・たかとら)へ恨み言を言うが
当の本人は散々謝り倒した後、出番の用意があるからと一目散に舞台袖に消えてしまった後である
とにもかくにも痛々しい外見を見る限り、ちょっと出演を控える必要性が出た事態にしょんぼりしているアリッサ
「ヒトを口先八丁で働かせた罰だっての、自業自得だ」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
その様子をいい気味だと呟くベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)
そのまま悔し紛れに丸めたバンソウコウの紙くずをアリッサが投げつけるのをひょいひょいとかわす
理由はどうあれ、出番が消えた事は事実なので無念なことには変わりない
「残りの出番は少しだけだから影響もないし、私がなんとかするから
頑張ったところはちゃんと出来たんだもん。後は任せて?ね?」
心中を案じ共に出番が同じだった綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)の言葉に頷くアリッサ
そんな中、舞台補修を終えた新谷 衛(しんたに・まもる)が様子を見に部屋に入ってきた
「舞台補修は終わったぜ。大きな損傷は無いけどやっぱり所々の負担が大きいや
まったく、やっぱりリハーサルと本番は違うよな。アドリブも加減も変わるし大変だぜ」
夜月の机にあるお菓子を無断でボリボリ食べながらぼやく衛の言葉に、いっそう小さくなる桜
戦闘員役の面々にテーピングをしていた夜月が後半の開始予定時間を確認しながら衛に質問する
「舞台監督さんの方はどう?さっきから見かけてないけど」
「……やんちゃやらかした連中の雁首並べてお説教中、やってる事は普段本人も大差ないんだけどな
中心に立つのと動くのはやっぱり別なんだろうなぁ」
答えながら締め切られた資材倉庫から聞こえてきた巽の怒声を思い出す衛
なんか別の部屋では動揺の怒声と悲鳴の他に雷鳴と電撃とおぼしき光も見えた気がしたが
……確かアレはリカイン・フェルマータ、悲鳴は河馬吸虎とフィーアだった気がする
「はい、終了ですわ。表立った怪我はありませんけど、疲労は蓄積しますからくれぐれも気をつけてくださいね」
「ありがとよ、まだまだ後半も出番あるから肝に銘じておくぜ」
夜月のテーピングが終了し、再び衣装を着ながら礼を言う戦闘員のアンタル・アタテュルク(あんたる・あたてゅるく)
その傍らで同じ役の芦原 郁乃(あはら・いくの)と蒼天の書 マビノギオン(そうてんのしょ・まびのぎおん)も準備を始める
「なんか戦闘員って控えめのつもりでいたけど、一番仕事と出番が多いとは思わなかったよ」
「そうですね。まだあたしは動けますけど……郁乃は大丈夫ですか?」
「もちろん!だからって後半手を抜くつもりはないし!次は色々能力解禁だから暴れるわよ!ね?アンタル」
「あったりまえだぜ、手ェ抜いてどっぴかれたヒーローショーなんてしょっぱくていけねぇや」
自分のぼやきに心配げに声をかけたマビノギオンにガッツポーズつきで気合をアピールする郁乃
仲間のアンタルもそれに同意する。その様子にひと安心な夜月であった
そこに林田 樹(はやしだ・いつき)がやって来て開始時間の確認を告げる
「間もなく後半戦だ。何かみんなで集まって気合入れるらしいから舞台袖に集まれってさ」
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「いよいよ残りの後半戦です、色々トラブルもありましたがとにかく怪我の無いようにお願いします」
後半参戦の面々を中心に集まる中、円状に囲んだ出演者全員が火村 加夜(ひむら・かや)の会話に耳を澄ましている
「とにかくお客さんが楽しんでいるのは事実です、このままテンションを落とさずに頑張りましょう!
今日一日が終わったら、夜は慰労会の用意があります」
「それでは最後に気合入れ、やってみるよ!」
彼女の言葉に歓声が沸き起こる、その温まった熱に火をつけるべく
ルカルカ・ルー(るかるか・るー)が言葉ともに右手を円の中心に出し、他の手が次々にそれに重なっていく
しん……と静まる中、彼女の元気な声が響き渡る
「残り30分!ありったけをぶつけて盛り上げるよっ!お楽しみはぁぁぁぁっ」
「「「これからだぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」」」
全員の声が舞台袖に響き渡ると共に後半戦がついに幕を開けた
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