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リアクション
〜 蒼空ヒーロー大戦 Siene 5 ちょっと幕間編 〜
「会場のみんな!大丈夫だった?」
ステージ上から役者がいなくなり、後半までの幕のつなぎに流れが切り替わる
色々ありつつ前半の司会担当だった鍵谷 七海(かぎや・ななみ)とリーブラ・オルタナティヴ(りーぶら・おるたなてぃぶ)に代わり
リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)がステージに立って子ども達に話しかけている
何だかんだと共に担当する者達の故意の打ち合わせ不足に頭を抱えていたようだが
一人で出来るところはその分抑えていたのか、その口調と佇まいは落ち着いて見事なものである
「【天空騎士リネン】さん達が頑張って戦ってくれたけど……やぱり【秘密結社オリュンポス】って手ごわいね
特にあの【暗黒騎士ルカ】……リネンさんが負けちゃうくらい取っても強かったよね?
これからもっと強い相手が出てきても、大丈夫なのか心配になっちゃうよね?」
うん……とリカインの言葉に頷く子ども達、それを見て微笑みながら彼女は話を続ける
「でも大丈夫、パラミタを守ろうという気持ちがある限り、ヒーローさん達は負けないと思う
だからそんな彼らが頑張れるように応え……」
「ふははははははははは、何を暢気に話しているのだ女よ!」
そんな会話の刹那に舞台袖から聞こえてきた聞き覚えのある声に、彼女の笑みがそのままで凍りつく
聞き間違いだ聞き間違いに違いない……と嫌がる首に力を入れ声の方を向いたリカインの眼前には天狗の面があった
「●☆凹■※◇◎△@◇っっっ!?」
「一度の失敗に屈するほど、俺達の組織も甘くは無いのだぜ!」
絶句して声にならない声をあげる彼女の前で、声の主禁書写本 河馬吸虎(きんしょしゃほん・かうますうとら)が口を開く
その姿は天狗の面以外はありのままである……当然それは精神的な事ではなく外見的な意味だと伝えておく
(もちろん、天狗の面がどこについているのかはそれぞれの想像力に判断してもらう方向で)
一部良心的に幻術を駆使したモザイクがかけられているが、それが尚更けしからん効果を生み出している
「だが俺は先程の連中のように野蛮な事はしない!
この世をせいふくで満たすのに必要なのは恐怖や暴力ではなく………愛、愛なのだ!!」
超・刺激的な様相で両手を広げ宣言する天狗の面に、なにやら先程以上に盛り上がる一部のお母さん達
以外に子ども達も生来のシモネタ好き男子&カゲキな少女マンガで情操教育を受けているのか否定的な声がない
それに調子づき、ますます傍らで口をパクパクさせている司会を差し置いて天狗の面の言葉は続く
「今こそこの俺が暴力に代わり、独りよがりで一方的な行為で泣かせるのではなく
愛をもってなかせてみせよう!子供相手でも容赦はしない!さぁ俺の愛を受け入れる奴はどこだ!」
『そうはいかない!お前のような輩は僕が相手だ!』
そんな愛の暴走特急の宣言を阻止するかのように、舞台セット最上段から高らかに声が響く声
残念なのはその声の主が、リカインにとって行方がつかまらず
散々探していた、目の前の天狗面と同じ存在だった事だったという事
そんなことは意に介さず、3人目の登場人物フィーア・四条(ふぃーあ・しじょう)が高らかに名乗りを上げる
「お子達のヒーロー【キャプテン・ニューシャンバラ】登場!子ども達には手を触れさせはしない!
むしろ私が手を触れるのだ!一緒に戦うためにな!………とうっ!」
高らかにジャンプし、空中をクルクルと回転しながら降り立つ【キャプテン・ニューシャンバラ】
そのままびしっと目の前の天狗面に指を突きつける
「今日は私と一緒に悪い怪人たちをやっつけてくれる仲間を探しに来たんだ!
なのにお前のような悪辣な愛の伝道者が現れるなんて……悪用される愛など所詮紛い物だ!
そんなやつは許さない……ぜったいにだ!」
「ふ……口では何とでも言える!この俺を倒せるものなら倒してみろ!
だがそこまで愛を説教する貴様だ……当然暴力なんて野蛮なものは使わないんだろうな!」
天狗の問いに当然だ!……と胸を張る【キャプテン・ニューシャンバラ】
なにやら不穏な空気を感じ取り、今までフリーズしていたリカインの思考が戻っていく
だがそんな時間差などお構い無しに二人の会話は続くのだった
「無論!愛には愛だ!この僕が子ども達との愛でお前を倒す!」
宣言し、とうっ!……と舞台に下りる自称【愛のヒーロー】
そのまま子ども達の前に足を進める……正義を語る真顔であるが、その目は完全に喜びで目がキラキラしていた
「さぁみんな!僕と一緒にあの悪人を倒すんだ!協力してくれる子には僕が手取り足取り戦い方を教えてあげよう
………さぁて、誰にしようかなぁ〜?………はうっ!?」
後半完全にマジキチな笑顔で悪役風に子ども達ににじり寄っていた【キャプテン・ニューシャンバラ】の動きが止まる
その表情は苦悶に目が見開かれ、ボディーに何者かの拳がめり込んでいた
顔に段々と脂汗を浮かべていく愛のヒーローの後ろで、拳の主…戸次 道雪(べつき・どうせつ)が小声で囁く
(「……舞台監督命令じゃ、どんな手を使っても回収せよといわれたのでな。悪いが命令には逆らえん」)
子ども達に聞こえない言葉が終わるや否や【魔獣の皮手袋】に溜めた魔力を暴発させ
天高く【キャプテン・ニューシャンバラ】もといフィーアの体が中に舞う
刹那、子ども達の目の前に一瞬だけ見えていた道雪の姿が消え、気がついたときには空中で彼女の頭を鷲掴み
乱暴に人形を回収するように、華麗に暴力的に舞台袖に消えていった
「…………人に隠れて二人で何たくらんでいるかと思えば、こういうことだったの?ふ〜ん?」
一瞬の嵐にさすがの河馬吸虎が固まっていると、背後から地獄の底から聞こえる優しげな声に話しかけられた
ビックゥ!……と振り向くのと、言葉の主のリカインが天狗の面の鼻を握るのが同時
そのまま徐々に河馬吸虎の体が浮いていく
その怪力とは裏腹に笑顔やさしく語りかけるリカイン……当然マイクのスイッチはオフである
「念の為【レゾナント・アームズ】を装着しておいて良かったわぁ〜
ねぇ知ってる?前半の司会のお陰でお姉さんが戦っても違和感ないって・こ・と?……ん?」
「……や、野蛮な事は正義もやめるべきだろう?ここは愛ある話し合いでだな……
や、やっぱり隠さぬ真なる己の姿でぶつかりあうのが一番だ!【アシッドミス……】」
「まだほざくか!このカバがぁぁぁぁぁぁぁ!」
咆哮と共に、リカインが鼻を握っていた手の握力を最大開放する
その声が響き渡るのと、天狗の面の花が粉々に粉砕されるのと、一部のお父さんが悲鳴をあげるのが一緒だった
「そんなに愛を語りたいなら、このリカインお姉さんが嫌って言うほど付き合ってあげる………わっ」
そのまま河馬吸虎の足が地面に着く前に、その顔面をベアクローで鷲掴みにし、引きずりながらリカインが消えていく
展開の是非や内容は把握されていないはずなのに、何故か観客の盛り上がりは素晴らしく
盛大な拍手と共に退場するリカインなのであった
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「問題児達は無事回収できたみたいだが……どうするんだ?巽」
道雪からの連絡報告を受け
コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)が観客の様子をのぞきながら後ろの風森 巽(かぜもり・たつみ)に声をかける
頭を抱えてうずくまると言う滅多に無い格好で巽が呟いた
「………もう普通の休憩でいいんじゃないかな?」
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