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蒼空ヒーロー大戦・魔法少女DX!!

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蒼空ヒーロー大戦・魔法少女DX!!
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リアクション



〜 STEP 2 ヒーロー・セッティング 〜


 イベント1週間前・イベント会場前(設営中) 


 「へぇ……これが台本ね。どれどれ、これにニャンコが出るのね」

参加者のそれぞれの役割が決まり、本番に向けて動き始める事7日後
先に設営の大半が終わっている観客席エリアにて霧島 春美(きりしま・はるみ)はスタッフ用に配布されたショー台本を
ペラペラと捲って眺めていた

 「ふむ一度ピンチがあって正義の勝利…王道ね
  良い子の情操教育はこういうとこからだよね、ニャンコがんばるのよ〜」
 「……で、春美さん、キャラグッズ売るのは、どのような情操教育になるのですか?」
 「もちろん!登場人物に愛着を持ってもらうためだよ?」
 「成る程!社会勉強になります!」

台本と販売物を両手に持って意気揚々と語る春美の言葉を真剣に聞くのはフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)
忍者ゆえ目立つのが苦手ということで、言葉の通り社会勉強という目的で裏方に参加したフレンディスと相反し
春美の目的の中には、しっかりヒーロー側参加のパートナー超 娘子(うるとら・にゃんこ)のキャラクターグッズ販売があり
目の前の箱の中には空京百貨店のショー用に作った大量のグッスには何かしら娘子ことニャンコの姿が描かれ
それ以外にもお面やぬいぐるみがギッシリ詰まっていた

 「愛着まではわかるけど、ここまで勢揃いってのも商魂逞しいよなぁ
  まぁ……配布のお菓子と被らないのは助かるけどな」

それを呆れたように手に取りながらカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)が呟く
その言葉を聞き逃さず、春美が口を尖らせて抗議をする

 「それでも使い易いようにちゃんと色々考えてるんだから!
  少なくともあそこの写真屋さんよかずっとマシだと思いますよ〜だ」

そう言って指差した彼女の指の向こうには、出店ブースを組み、カメラのチェックをしている青年がいた
突然指を指され、ビクッと驚く彼の名はコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)という

 「だ、だって写真が一番手元に持てるじゃないか!
  それにヒーローも悪役も選ばず用意できるから、公平に揃える事もできるし!」
 「あれ?でも美羽さんの写真を多く用意するんだってさっき張り切ってましたよね?」
 「あ、アルジェンシア!聞いてたの!?」
 「わしも聞こえてたぞ。主人想いだと随分感心していたのじゃが……違うのか?」

彼の猛抗議に、傍らで観客用のお菓子の箱を運んでいたアルジェンシア・レーリエル(あるじぇんしあ・れーりえる)が声をかける
続けてのルファン・グルーガ(るふぁん・ぐるーが)の生真面目な質問にうろたえるしかないコハクである
そんな彼の背中をバンバン叩きながらウォーレン・シュトロン(うぉーれん・しゅとろん)がフォローを入れるのだった

 「ま、司会のねーちゃんだってショーの看板だしな!親御さんにも楽しみがねぇといけねぇや!な!!」
 「そんな限定のニーズ目当てじゃないけど……」

あっはっはと笑いながらのウォーレンの言葉にやや不満気味でありながら
コハクはMCを喜び勇んでやる気になってるパートナー小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)
【不思議の国のエプロンドレス】と【鉄壁のスカート】の衣装の組み合わせで見えそうで見えないギリギリをPRする
事に意気揚々としている事実をそっと胸にしまうのだった


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一方そんな客席エリアの様子を見ながら
風森 巽(かぜもり・たつみ)高天原 鈿女(たかまがはら・うずめ)の二人が設営中のステージに向っていく

骨組みが終わり、土台をくみ上がりつつある舞台の上
設計担当の大道具係新谷 衛(しんたに・まもる)の傍で林田 コタロー(はやしだ・こたろう)が奔走しているのが見える
向こうも気がついたのか、作業をやめて巽達の方に向ってきた

 「よう!お二人さん、予算の方どうだった?」

衛の言葉に巽はVサインで返答する

 「俺の【財産管理】のスキルを甘く見てもらっては困るよ
  元々出来る限り低予算で出来る様に組んでいた予算だからね、安全面のために必要だと言ったらOKしてくれた」
 「というか、山葉校長より後押しが強いのは百合園の桜井校長ね
  学園と街との交流でもあるし、街側からも多少の支援があるから予算は思った程気を使わなくていいみたい
  必要な所に予算を使うのは、むしろ得だと判断したんでしょうね」

鈿女の言葉に、いよっしゃぁとガッツポーズと共に衛がやる気満々の声を出す

 「ありがとよ!いちおー、オレ様の【土木建築】スキルで強度とか舞台装置の配置計算とかしてみてるんだけどさぁ
  どうにも心許無くてな、もう少し素材を吟味して補強を加えるにはもう少し予算が必要だったんだ
  これでひと安心だけど……くれぐれもやり過ぎ注意って言っておいてくれよな」
 「おやおや、珍しく念を入れているじゃないか、衛らしくもない」
 「そうは言うけどさ、いっちー。今回のヒーローショーの演出一覧ってある?」

彼の様子に、別件で巽のもとにやってきた林田 樹(はやしだ・いつき)が衛にからかうように声をかけてくる
そんな彼女から演出一覧を受け取り、捲りながら衛も言葉を返す

 「ホラ見ろよ!簡単にアクション内容だけ言っても、魔法やプロレスやロボとか様々なんだぜ?
  かかる衝撃も違うし、それに対応しながら観客の安全も考慮するって、結構な無茶振りだと思うぜ」
 「そう言いながら目は楽しくてたまらないって風だけどな?ジーナもいいステージを宜しくって言っていたぞ」

樹から仲間のジーナ・フロイライン(じいな・ふろいらいん)の伝言を聞き
衛は手にしたハンマーをくるくる回しながら頭のタオルを締めなおす

 「ま、何だかんだ言っても、オレ様は、じなぽんが楽しくショーが出来るように
  少々頑丈に舞台装置を作っておくことが、役目だわな!……やってやろうじゃねぇか!
  くーっ!!この姿になってン十年!やっとオレ様の出番が来たぜぃ!飛び出る登場の仕掛けも、任せとけって!」

見てろよ〜という声と共に再び、むき出しの鉄骨に向っていく衛を見ながら、巽は樹にメモリーを渡す

 「ステージは問題なさそうだな。あとこれ、言われていた【音楽データ】だ
  効果音やBGM、思い浮かぶもの全部ダウンロードしておいた、何か必要なら言っておいてくれ」
 「ありがと、巽。とりあえず今用意できるのはこの分で十分だと思う
  コタロー、このメモリーをあそこにいるリーシャに渡してくれないか」
 「あい!こた、ねーたんのおてつらいがんばるれすぅ!」

メモリーを両手でしっかり抱えながら、コタローが客席後ろの音響エリアに大急ぎで走っていく
遠くに見えるミキサーの近くでメモリーを受け取ったリーシャ・メテオホルン(りーしゃ・めておほるん)がこっちを見て
OKサインを出すのが見えた

一通りの様子を見ながら巽が安心したように口を開いた

 「……どうやら設営は問題ないようだな、あとは……芝居の方だな」
 「そうだな、だがそっちは頼もしい演出補助が見てくれているんだろう?
  台本は見せて貰ったけど、いい感じじゃないか?後はそれに基づいてみんながいい芝居をすればいいだけだ」
 「まぁ……基づいてくれればいいんだけどな」

樹の言葉にそう答えながら、巽は昨日から行われている稽古を案じるのだった