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リアクション
【第二章】22
それから少しもしない内に、雅羅、アリサ、美緒のグループと合流したジゼル達一行。
取り敢えず場所を変えようとショッピングモール内を歩いている間、雅羅は後ろから柚に手を引かれながらとぼとぼ歩いてくるジゼルを見て、不審そうに加夜に耳打ちした。
「ジゼル、どうしたの?」
「それが……うーん……」
加夜が何か言い掛けた時だった。
「美羽!!」
やってきたのはコハク・ソーロッドだ。
美羽を助けるため、モール内に居た強盗団を槍の柄で殴り倒して片っ端から気絶させながら探し回り、灯台もと暗しで戻ってきた一階で、やっと美羽の元へ辿り着いたのだ。
それにしても皆見れば見るほど奇妙な姿だった。
戦いによって上着はボロボロ、その下に着ているのは下着なのだから。
真面目な純情少年のコハクは、少し顔を赤くして横を向いた。
余り見るのは失礼だと反射的に思ったのだ。
そこで雅羅は気が付いた。
コハクがきたことで更にもじもじし始めジゼルに。
「ジゼル……そう言う事だったの」
ジゼルが思春期の感情に目覚めた頃、雅羅は何故か親心に目覚めていた。
そんな感じで軽〜いやり取りをしながら、一行は非常階段のドアの前に辿り着いていた。
「ここの扉を開けば外へ出る事は出来ますわね。でも……」
「皆そんな格好のまま外に出るなんて出来ないよね」
彩は下着やそれにコートを羽織っただけの姿の友人達を見て溜息をつく。
「と、取り敢えず服を着ている私達が助けを呼ぶのはどうでしょう」
と、リースは提案してみたがそれよりも最善の策があるような気がした。
それ即ち、「先に強盗団をどうにかしてしまおう」というコウの提案である。
確か少女達もこんな状態にされて腹が立っていない訳ではないから、強盗団をやっつけてしまいたい気持ちはあった。
「あの方達は皆屋上で合流するようですわ。そこを一網打尽にしてしまえば……」
美緒も頭にきていたらしい。
「でも皆、一体そんな事してどうするのよ?」
雅羅が疑問を口にした所で、ぽんと手を叩く音を氷藍が立てた。
「それいーんじゃないか?」
「それって?」
「つまりさ、奴らの服をはぎ取って、皆でそれを着ちゃうんだよ。
そしたら雅羅達みたいな下着のコも服が手に入って万々歳! 躊躇無く外に出られるだろ?」
合点の行った少女達は目をぱっと輝かせて、少しして急にげんなりした表情になった。
「でもさー正直きもい人の服とか無理だよね」
「ねー」
「臭いとか気になるよね」
「あー脇汗とか!? やじゃない?」
「やだー! ぜったいじっとりするもん」
「きゃははきもーい!!」
女性の本性を目にした所で、雫澄と三月とコハクは同時に遠くを見つめて思った。
――正直居辛ぇ。
と。
という訳で一行は強盗団から服を奪うべく屋上を目指し走り出し、
ばいんっと跳ね返った。
「なっなんですの?」
「何? 今の」
雅羅と美緒が当たったのはセフィー・グローリィア(せふぃー・ぐろーりぃあ)とオルフィナ・ランディ(おるふぃな・らんでぃ)の素晴らしい胸だった。
本当に素晴らしかった!!
「下着姿にコートで人の胸にぶつかってくるなんて……
雅羅って、やっぱり変態癖あったのね……」
「おい、襲ってくれるのは嬉しいけどよ。いくら俺でも不意打ちは卑怯だぞ、美緒!」
「違うわよ」
「誤解ですわ」
そうハモりながら慌てている雅羅と美緒の姿を見ながら、エリザベータ・ブリュメール(えりざべーた・ぶりゅめーる)はくすくすと笑っている。
「あ……」
雅羅は顔を赤くした。
どうやらお姉様方にからかわれてしまったらしい。
「もう……でも丁度いいわ。
ね、お願いセフィー、力を貸して」
「いいわよ、依頼料は今夜の食事と夜の相手だからねっ!」
「ええっ!?」
またもからかわれた雅羅が驚いて、それからすぐに気付いて憮然としていると、そこへ聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「さあこちらへ、お嬢さん方」
エース・ラグランツがパートナーと多数の人間を率いながらこちらへやってきていたのだ。
「どうやら皆腹の虫が収まらないようでね、少しばかり手を貸してあげようとしていたところさ」
ウィンクするエースの後ろに集うのは、皆今回の事件の被害者である女性達だったのだ。
女性群団と共に階段を上がって行く一行の目の前に、屋上の扉が現れた。
「さぁ変態強盗団……最終決戦よ!!」
雅羅は叫ぶと、扉を勢いよく開いた。