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リアクション
一階、廊下。
何とか奥様の写真と次女の写真、礼拝堂で長男の写真を手に入れた剛太郎と望美は、宝物の手掛かりについて話し合いながら歩いていた。写真も三枚集まれば手掛かりも少しは見えて来る。
「お兄ちゃん、宝物について何か分かった?」
「……この写真が手掛かりだろうとは思うんだが」
「それで?」
「写真の背景が中庭になっている。館の前や中ではなく。アトラクションが用意されていない場所が背景というのが少し気になる」
「……中庭。お兄ちゃん、ここにお墓らしき石が写ってる」
中庭を背景に撮った家族写真。望美の指摘通り、中庭のコテージの横にひっそりと墓石が見える。ちらっとしか写っていないのでらしいとしか言えないが。
「あぁ、確か墓は地下室にあると言っていたはずだが、これだけここにあるというのが」
「気になるね」
「確かめてもいいかもしれないな。何も無ければ無いで構わないが」
宝物の居場所の推測結果は、おそらく中庭だろうという事になった。
「うん。それぞれの部屋にはこの写真に写っている指輪があったりドレスがあるぐらいかな……きゃっ」
望美が各部屋を見た時の事を報告するも首筋にヌメっとした感触を感じ、軽く悲鳴を上げた。
「望美?」
「何かヌメヌメしたよ。不気味な感じがする」
首をさすりながら自分を心配する剛太郎に答えた。
「……何かいるな。おわっ」
周囲を警戒する剛太郎の背中を押すのは透過飴で姿を消した吹雪。
その間にナノマシン拡散をして望美にまとわりついたイングラハムが望美の耳元でささやく。
「我の餌食になるがよい」
「ひゃっ」
驚き、剛太郎に抱き付く望美。
「ふははは、我の前にひれ伏すのだ」
「その調子であります」
『優れた指揮官』を持つ吹雪との事前の指示により望美の背後にいるイングラハムがゆっくりと不気味な姿を現し、前方に透過飴の効果が切れた吹雪が姿を現し、逃げ道を塞ぐ。
吹雪はノクトビジョン、イングラハムは『ダークビジョン』で視界は良好。
とどめにイングラハムの『ヒプノシス』で相手を眠らそうとするが、剛太郎の『エイミング』がイングラハムの足元を襲い、その隙に望美が『ヒプノシス』でイングラハムを眠らせた。
「望美、行くぞ!!」
剛太郎は望美の腕を掴み、急いでこの場を去り、狩猟好き主人のコレクション部屋に向かった。
吹雪は追うような事はせず、イングラハムを揺り動かし始めた。
「起きるでありますよ!」
揺らしてもすぐには起きないイングラハム。
「……うむ」
何度か体を揺すられてようやく目覚めた。
「目覚めたでありますか。仕事に戻るでありますよ」
「……承知した」
吹雪は安心し、イングラハムは起き上がった。
再び二人は仕事に戻った。
一階、音楽家を目指す次女の練習部屋。
「……あとはお願い」
「……あぁ」
演奏を終えたアメリはカンナにバトンタッチした。
「……雰囲気あるな。本当に何か出そう」
独りになったカンナは改めて部屋を見回した。薄暗い部屋に遠くから聞こえる悲鳴。何かが出てもおかしくなかったりする。
「あたしがソロ最後だから下手な演奏は出来ないな。残るのは全員での演奏だけ」
カンナはふぅと息を吐き、演奏前に心を落ち着けてから透過飴を口に放り込んだ。
飴はあっという間に消え、体全体が透き通って見えなくなった。
「……お客が来る前に始めようか」
すっかり透明になったカンナはゆっくりとチェロを弾き始めた。
音量は大き過ぎず、部屋が近付いたら微かに聞こえる程度の客が思わず入りたくなるような惹かれてしまうような安らかな音楽、『ドビュッシーの月の光』を演奏。
「……」
客が入ったのを察知したら一度演奏を停止し、嵐の前の静けさを客に与えてから一気に激しい音楽、ショパンの幻想即興曲などを奏で上げる。『演奏』を持つカンナの独奏は完璧だった。
突然、曲調が変わり、背筋をびくっとさせる客。音色に急かさせるように写真を無我夢中で探し、何かが出る前にと慌てて出て行く客もいた。
訪れた客の中には、エース、メシエ、リリアもいた。
「安らかな音楽がしたと思ったらチェロがひとりでに演奏をしているわ」
そう言ってメシエにくっついた。
「……ホラーだからね」
興味なさげに適当に答えるメシエ。
「……写真は」
エースは、二人を見守りながら激しい音楽に急かされつつピアノ付近に隠されていた写真を見つけ、三人は出て行った。
「……もうそろそろ来るかな」
客が減り、カンナは弓を動かす手を止め、もうそろそろ来る他の演奏者達と全員での演奏に思いを馳せていた。
「これはお嬢さん、君は驚かし役かい?」
次女の練習部屋から出て一階に移動するなりエースはリリアに確実なるきっかけを与えるため再び驚かし役と交渉をしていた。
「花をありがとうであります。自分は驚かし役であります」
百合を一輪貰った吹雪は礼を言ってびしっと役目を教えた。
「もう少ししたらリリアとメシエが来るから二人を驚かせてくれないかい。特にリリアを」
エースは再び驚かせる依頼を頼んだ。レディの相談とあらば、協力を惜しまないエースは本当に頑張っていた。
「我らに依頼か」
「構わないでありますよ。連携をしている仲間にも連絡するであります」
イングラハムは不思議に思うも吹雪は快く引き受けた。
「ありがとう、頼むよ」
エースは礼を言い、メシエとリリアの元に戻った。
「もしもし、もう少ししたら連携をお願いするであります」
吹雪は急いでエッツェルに連絡し、連携を依頼し承諾して貰った。
「……なかなか盛況ですね」
エッツェルはゆっくり歩きながらもきっちりと仕事をこなしていた。時々、連絡が入って吹雪達と連携をしたりもしたが。
そんな時、
「……電話ですね」
エッツェルはゆっくりと電話に出た。
「連携ですか? すぐ近くにいますから構いませんよ」
エースから依頼を受けた吹雪からの連携依頼の電話。
「……仕事を始めましょうか」
エッツェルはゆっくりと待機場所へと移動した。
エッツェルへの連絡を終え、
「まずは腕をそのヌメヌメで触るであります」
「了解したのだ」
吹雪はイングラハムに第一撃の内容を指示した。
ターゲットが現れるのを確認し、吹雪は透過飴でイングラハムはナノマシン拡散で瞬時に姿を消した。
「今であります。腕に触れるであります」
吹雪は『優れた指揮官』を使用し、素早くイングラハムにタイミングを指示した。
「腕が気持ち悪いわ」
ヌメヌメした腕を見ながら辺りを見回すリリア。
「……これで拭けばいい」
メシエがハンカチを取り出し、リリアに差し出した。
「ありがとう」
リリアは嬉しそうにハンカチを受け取り、腕を拭いた。彼なりの気遣いに嬉しくてたまらない。
そのリリアを後ろから吹雪が背中を押した。
「ひゃ」
「メシエ、怖いわ。早く行きましょう」
そう言ってさりげなくメシエの腕を取って急ごうとするリリアにまとわりつくイングラハム。
「……我に恐れるがよい」
リリアをメシエから引き離し、イングラハムは最後の仕上げに姿を現した。
「……そ、その姿というか邪魔しないでよ!」
イングラハムの姿に対しての驚きとメシエとべったりだった所を邪魔された事にリリアは思わずソード・オブ・リリアで攻撃をしかけてしまった。
「ぎゃふぁぁぁぁ」
攻撃を受けたイングラハムは派手な断末魔と共にぱたりと死んだふりをした。
「きゃぁ」
リリアはいい雰囲気を取り戻そうと断末魔に驚き、メシエにくっつく。
「……無事で何より」
メシエは適当に言うも心内は心配していた。
「……悪かったね」
エースはこっそり『命のうねり』でイングラハムの傷を癒した。
「大丈夫でありますよ。この先には連携を頼んだ者が待っているであります」
姿を現した吹雪はイングラハムに代わってエースに礼を言い、エッツェルの事を話した。
「そうか。では」
やる事を終えたエースは二人の元に急いだ。
前方から連絡を受けたエッツェルが現れた。何とか連携は出来ていた。
「……あなたもお客?」
リリアは驚かし役だろうと見た目から考え、あえて声をかけた。
「いえ、驚かし役ですよ」
そう言ってエッツェルはフードをどけ、異形となった顔を現した。
「きゃぁぁ」
さすがにこれには素で驚き、メシエにべったりとくっついた。
この後、二階の長女の部屋に行き、リリアはのっぺらぼう少女に驚いてメシエにくっついてからエースが東方妖怪伝奇録に薔薇を差し出し、
「可愛いお嬢さん、薔薇をどうぞ。家族写真の場所を知らないかい?」
挨拶をして場所を訊ねると
「アハハハ、面白いね。あげるよ」
リリアを驚かして楽しくなっていた気まぐれな東方妖怪伝記録はエースに長女の写真を渡した。とにかく写真探しを本気で頑張るエース。何せリリアの目的はメシエにべったりなので。残り二枚もたっぷりと時間をかけて回収した。
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