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寂れたホラーハウスを盛り上げよう!!

リアクション公開中!

寂れたホラーハウスを盛り上げよう!!
寂れたホラーハウスを盛り上げよう!! 寂れたホラーハウスを盛り上げよう!!

リアクション

 一階、読書好きの長男の書庫。

 静かな本で溢れる部屋。

「……暇な時はすごく暇だね」
 ルカルカは周囲を見回しながら言葉を洩らした。
「……そうですね」
 真一郎も同じように頷いた。
「……でも邪魔がいないからいいかな。ねぇ、真一郎さん」
「あぁ」
 ほのかに頬を染めてルカルカはそっと真一郎の胸に抱き付き、甘える。
 甘えられた真一郎はそんなルカルカを拒む事なく、屈んでキスをした。
 何度か唇での口づけを交わした後、真一郎の唇が首筋へ移動した。
 そしてさらに続くだろうと思われた時、客としてやって来た者がいた。

「さてここで二枚目の写真を手に入れるか」
 九十九はゆっくりと書庫のドアを開け、中に入った。
 心なしか他の部屋より冷たい空気を感じる。
 本独特の匂いもし、雰囲気を盛り上げている。

「……ここは誰もいないのか」
 他の部屋のようにスタッフがいないのかと思い始める。隠れているにしても気配は感じるはずなので。
「ん? 声」
 声を辿り、九十九が辿り着いたのは、純白プリンセスドレスを着たルカルカとゾンビ風メイクをした真一郎とのいちゃつき現場だった。
 写真を探しに来た九十九は思わず、ルカルカの首筋に口づけをしている真一郎と目が合ってしまった。

「あ」
「……」
 軽く声を上げる九十九に凄まじい圧力を込めた一睨み。その一睨みから邪魔をしないで下さい、という言葉を受けた九十九は静かに来た道を逆に戻った。

「……」
 部屋を出て静かにドアを閉める九十九。先ほどより二人の仲睦まじい声が聞こえる。

「何なんだ。無言に追い出されたし、何気に怖ぇし」
 何とも言えない状況に思わず言葉を洩らしてしまう。ホラーな衣装を着ていたためか何気に怖かったりもした。
「……ここは後回しだ」
 今入っても再び追い返されるだけなので後回しにする事にした。

 ベルが奏でる不気味音楽が流れる二階廊下。

「……きゃぁ、今誰かに押されたわ。やっぱりホラーハウスね、受付も怖かったし」
「ただ目玉が飛び出ただけだろう。そもそもこんな所に来なくても普段の生活の方が危険に満ち溢れていると思うのだが」
 誰かに押されたリリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)が隣を歩くメシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)に寄りかかるも素っ気無い様子。
「……本当に相性が悪いな。一緒にゴールをしたら仲良くなれる、か」
 エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)は二人の後ろからホラーハウスと冷静で理知的なメシエの相性の悪さを呟いていた。
 リリアからメシエと仲良くなりたいとそのためにこのハウスのジンクスを利用したいと相談を受け、エースがセッティングした。そのため今日のエースの任務は完全に二人の裏方である。
「頑張って写真を探しましょう」
 リリアは寄りかかったついでに腕に抱き付きながら楽しそうに言う。ジンクスについてはメシエに鼻で笑われる事が目に見えているので黙っている。
「君がどうしてもって言うから来てみれば、ホラーっぽい館での写真探しゲーム」
 楽しんでいる様子が全く無いメシエ。それでもリリアに誘われて来た辺り、リリアのメシエと仲良く計画は少しは成功している。
「メシエ、衣装部屋よ」
「さっさと探して終わらせるとしようか」
「……俺が頑張るしかないな」
 それぞれの思いを抱え、リリア、メシエ、エースは衣装部屋に入った。
 その様子を姿を消したニコが静かに眺めていた。
「……楽しくなりそうだね」
 リリアを押したのはニコが連れて来た子供の幽霊だったのだ。

 二階、舞踏会好きの奥様の衣装部屋。

「来ました来ました!」
 クローゼットに『隠れ身』で潜んでいたアンドロマリウスはドアの向こうから足音を確認し、客が入って来るのと同時に勢いよく飛び出した。

「はーい! アンちゃん&スウェルの間借りの衣装屋さんへようこそー!」
 明るく挨拶。チェシャ猫風のシマシマ顔に執事風の衣装のアンドロマリウス。

「メシエ、衣装屋さんですって、素敵ね」
「……ここはホラーハウスのはずだろう」
 楽しそうなリリアと明るい挨拶に呆れるメシエ。
「……大丈夫か」
 ここでリリアが仲良くなれるきっかけがあるかと心配になるエース。
「……」
 『隠形の術』でクローゼットの中で座って待っていた白猫風のメイクにメイド風の衣装を着た西洋風猫娘のスウェルが無言でつかつかとアンドロマリウスの所にやって来て、違うとチョップでツッコミを入れた。
「痛いですっ!」
 アンドロマリウスはチョップが命中した脇腹をさすった。
 その間、リリアは数多くあるドレスに興味を注いでいた。

「これどうかしら? 似合う? これも素敵ね」
「これも良いですよ!」
「あら、本当」
 ドレスをとっかえひっかえ姿見の前で見繕っているリリアの接客をするアンドロマリウス。アンドロマリウスに差し出されたドレスを見て嬉しそうにするリリア。笑顔で立って様子を見守っているスウェル。

「……君は何がしたいんだ。写真探しなのかね自分に似合うドレス探しなのかね」
 全く写真を探す様子のないリリアに呆れるメシエ。
「……とりあえず、写真は」
 こっそりと写真探しに勤しむエース。なかなか見つからない。探しているのは一人なので効率が悪いが仕方が無い。
「これが一番似合うと思うんだけど、メシエはどう思う?」
 リリアは、清楚なドレスを手に感想を訊ねる。
「……君が気に入ってるのなら人に聞く必要は無いだろう」
「もう」
 冷たい言葉に不満そうにするリリア。
「……そんなにドレスが欲しいなら今度作ってあげるよ、古王国風の物を」
 不満そうな顔のままドレスを片付けるリリアにほんの少し親しげな言葉がかけられた。
「本当に!? 嬉しい」
 途端に嬉しそうな表情になった。

「……ここにあったぞ。ん、いい感じだな」
 エースは、クローゼットの床に転がっている美人な奥様が写った写真の切れ端を発見し、少しいい感じのリリアとメシエの様子にうまくいったと感じた。

「写真が見つかったのならこの部屋には用はないだろう」
 メシエはすぐにエースが写真を発見した事を知り、さっさと部屋を出て行った。
「……メシエ」
 残念そうに後を追うリリア。
「……手強いな」
 振り出しに戻った二人の様子にため息のエースも追った。

「いってらっしゃいませ」

 とスウェルのホラー声での一言。

「……メシエ、誰もいなくなっているわ」
 声に驚き、振り向いたリリアはメシエの腕に抱き付きながら散らかったドレスだけの部屋を見てから止めていた足を動かした。抱き付かれたメシエは全く相手にしていなかった。
 エースは二人の様子を見守っていた。

「アンちゃん、行った」
「スウェル、成功ですねっ!」

 振り向く前に『隠形の術』で隠れていたスウェルと『隠れ身』で姿を消していたアンドロマリウスは客がいなくなってから姿を現し、成功を喜んだ。最後の一言は、スウェルがクローゼットに隠れていた間に声変わり飴で用意したものだ。

 今の流れでさらに何か起きないかとサポート役のエースはリリアとメシエの後ろを歩きながら考えていた。
「ここで何か起きれば。それなら……」
 何かきっかけを作らなければと考えたエースはこっそり二人から離れ、驚かし役を捜し始めた。

「では、マスター早速お化けをしてきます」
 幽霊定番の格好、白装束姿に青ざめたメイクをしたフレンディスが元気よく言った。ちなみにベルクは『紅の魔眼』と『冥府の瘴気』を発動させ、禍々しい姿となっている。
「……大丈夫か?」
 元気良さに心配するベルク。
「大丈夫です。見ていて下さい」
 心配無用とさらに言葉に力を入れる。
 その時、驚かし役を探していたエースに声をかけられる事に。

「そこの君達、驚かし役かな?」
 エースは見つけた驚かし役のフレンディスとベルクに声をかけた。

「そうですよ」
「……そうだが」

 頷くフレンディスとベルク。

「悪いんだが、もう少しすればメシエとリリアが来るから二人を驚かしてくれないか。出来れば、リリアの方を」
 エースが頼むのは当然二人の事。

「……リクエストか」
 ベルクはまさかリクエストが来るとは思っていなかったので思わず言葉を洩らした。
「そうだ。二人が少しでも仲良くなればとね」
 エースはもう少しだけ詳しい事情を話した。
「それなら私に任せて下さい。私が震え上がらせますよ」
 ぐっと両拳を作り、やる気を見せるフレンディス。
「ありがとう。素敵な驚かせを期待するよ」
 エースは遅れた挨拶にと一輪の薔薇を差し出した。
「うわぁ、素敵な薔薇ありがとうございます。用意します」
 薔薇を嬉しそうに受け取り、フレンディスは急いでスタンバイを始めた。
「俺は二人の所に戻るよ」
 メシエに気付かれる前にエースは戻る事にした。