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【じゃじゃ馬代王】飛空艇の墓場掃除!?

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【じゃじゃ馬代王】飛空艇の墓場掃除!?

リアクション


第6章 気流コントロールセンター


 空域での、戦闘終了の数刻前の事だが――。
 気流コントロールセンター内では、高根沢 理子(たかねざわ・りこ)らが奥へ奥へと進んでいた。

「はぁぁッ!!」

 ミニスカートの裾が舞い上がるのも気にせずに、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は蹴りを繰り出す。
 狭い通路内に集まってきた、機晶ガードロボを遠くへ弾き飛ばすのが、彼女の役目である。
 高根沢 理子(たかねざわ・りこ)は、美羽と背中合わせになると、美羽から借りた【ブレード・オブ・リコ】を振り回していた。

「敵陣に乗り込むのに、武器は必要でしょ?」
「ありがと。」

 光輝属性を持つその剣は、周囲の敵をなぎ倒す。
 『認証コードを答えよ』と言われても、誰もそれに答えることは出来ない。
 クリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)のコードも、機晶ガードロボには無効だった。
 すると、次々と放たれる機晶キャノンから逃れる方法は……。

「金剛力!!」

 美羽は一時的に筋力を上昇させると、敵との間合いを一気に詰め、高く飛んだ。

『認証コー……。』
「空の星になれッ!!」

 竜巻を思わせるような大きな蹴りに、機晶ガードロボは弾き飛ばさせる。
 蒼い光の走る廊下の上、ロボは遥か先まで吹き飛ぶと、その動きを止めた。

「私より目立つなんて許さないんだからね!」

 美羽が目立つ中、コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)は気流コントロールセンター内を探索していた。

(トレジャーセンスで機晶石を確かめようと思ったけど、このエネルギーはすごいや。)

 まるで、生き物の体内にいるかのように、エネルギーが血のように通っている。
 黒色の金属状の床に触れると、特にそれがよくわかり、その力がコントロールセンター全体を包み込んでいるようであった。
 それはつまり、内部に入ってしまえば、機晶石の位置はわかりやすいと言うことである。

「美羽ーっ! あっちのほうから何か感じるよ。」

 コハクは美羽に手を振る。
 だが、美羽は彼に気づかずに暴れ続ける。
 仕方がないので、コハクは一歩足を踏み出した。

『認証コードを答えよ』
「しまった……?」

 すると、機晶ガードロボは彼に狙いをつけてくる。
 戦闘は主義に反するので、参加しないと決めたコハク。
 そんな彼に、機晶キャノンの照準が合った。



 ☆     ☆     ☆



 ドンッ!! ドンッ!!!
 周囲に二発の銃声が響き渡り、人影が倒れた。
 やられた……目を瞑ったコハクはそう思ったが、身体に痛みはなく、通路の向こうより声が聞こえてくる。

「大丈夫でありますか?」

 そこには二本の拳銃を携えた葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)が立っていた。
 施設に被害を与えないように急所を狙った、銃撃センス。
 常に周囲を警戒し、姿勢を正したその動き。
 シャンバラ教導団の指揮官と見受けられる。

「ありがとう。助けられたね。」
「仕事であります!」

 礼を言うコハクに、吹雪は敬礼しながら答えた。

「もーう、そんな事はいいから、データを取るのを手伝ってよ。」

 後ろから、コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)がやってきた。
 彼女は地面に座り、【銃型HC】へマッピングを繰り返している。

「とりあえず、中枢に機晶石があるのはわかったけど、まるで迷路のように中が入り組んでいるわ。」
「確かにそうだね。いいよ、手伝うよ。」

 コルセアは眼鏡を動かしながら、コンピューターにデータを入力する。
 コハクは彼女の隣に座ると、データの交換を行う。

「……あっ、ルートが出た?」

 すると、コルセアは声を上げた。
 色々な情報がかみ合わさり、一本の道が開いたようだ。

「みんなぁー、中枢に向かうルートが出たわよ!」
「本当!?」

 コルセアの声に、理子は振り向いた。
 同時に機晶ガードロボも慌しく動き出す。
 ドンッ!!!
 一発の銃弾が、ガードロボの行く手を塞ぐように放たれた。

「ここは自分に任せて、早く向かうであります!!」

 吹雪は拳銃を構えると、敵を威嚇する。



 ☆     ☆     ☆



「さぁ、ルートがわかれば、後は向かうだけよ!」

 酒杜 陽一(さかもり・よういち)は、理子への攻撃に対しての警戒を、強めるように足を進める。
 人工的に造られた道には、いくつものドアがついており、開けてみたい衝動に駆られるが、今はそれどころでないだろう。
 機晶ガードロボの攻撃は中枢に近づけば近づくほど、強まっている。

「おおっ! なんだこれはっ!?」

 途中、夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)のパートナーである、草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)が扉を開けまわって中を見学していたが、気にしている状況ではないようだ。

【メンタルアサルト!!】

 予測できない行動――で、隙を作り、理子ら仲間に攻撃を頼もうと画策する陽一。
 だが、酒杜 美由子(さかもり・みゆこ)の動きの方が、もっと予測できないようだった。

「行け! 特戦隊!! 私の恨みを戦いで晴らすのよ!!!」

 目を三角に尖らせた美由子の放つ【特戦隊】は、次々と敵を撃破し、自らも弓矢を放つ。
 ドカドカ! ドカドカ!!
 敵も味方もないような、容赦のない怒涛の攻撃である。
 女の恨みは恐ろしい。

「もーう、美由子さん。何をしているのよ! 行きましょ、理子っち。」
「う、うん……。」

 危険を感じた陽一は、理子の手を引っ張ると、彼女を庇うように先を急ぐ。



 ☆     ☆     ☆



 それにしても、理子っちはよく動き、よく戦う。

「遊び人という割には良い仕事するじゃないか。」

 源 鉄心(みなもと・てっしん)は腕組しながら、彼女を褒めた。
 もちろん、理子がここまで自由に動けるのは、周りのフォローがあるからこそなのだが。
 鉄心は、オートマッピングで経路の確認をしながら、魔道銃で敵を打ち倒す。
 その裏方的な行動があってこそ、理子は光り輝く。

「それにしても、敵の数は増える一方だな。そろそろ中枢に着く頃だが。おっと……!?」

 右手より、機晶キャノンが襲い掛かってきた。
 鉄心は通路に隠れると、魔道銃のエネルギーを調整しつつ、ガードロボを狙う。

「力の配分を考えないと、最後まで持たないからな。」

 あくまで弾幕程度の銃撃が、確実に敵の頭を襲う。
 だが、二発、三発と撃つと、機晶キャノンの反撃は何倍もの数になって返ってくる。
 壁は抉れ、兆弾は仲間らを傷つけていく。

「チッ……、じゃじゃ馬さんの面倒だけを、見ているだけじゃ済まないな。」

 鉄心は周りを確認した。

「お下がりくださいませ旦那様。」
「ちょっとどいて!!」
「はわわっ……。」

 イコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)は、理子の身を護るように身体を盾にしようとしたが、理子は下がるところか、イコナを飛び越えながら先を急ぐ。
 ティー・ティー(てぃー・てぃー)もそれに続いて、理子と走っていた。
 重要設備の近くは、防衛がかなり厚い。
 みんなの余裕が、段々となくなっているのがわかる。
 ここまで、ほとんど休憩らしい休憩をとってはいない。

「イコナちゃん、どうした?」

 イコナは周りを見渡すと、鉄心を見つけ、彼の近くにやってきた。
 鉄心が、涙目のイコナに声をかけると、彼女は不機嫌そうに答える。

「べ、別に何でもありません。わたくしは鉄心の側にいたいのです。」
「そうか。」

 鉄心は笑いたくなるのを堪えて、イコナの頭を撫ぜてやった。
 そして、佐野 和輝(さの・かずき)を見つけると声をかける。
 目的は一緒だし、ここは共同戦線を張ろうと言うのだ。
 和輝も、敵の数にうんざりしていたようで、彼の申し出を受ける。



 ☆     ☆     ☆



「俺の邪魔をするな。」

 機晶キャノンの飛び交う中、まずは佐野 和輝(さの・かずき)が飛び出した。
 通路をスライディングするように滑りながら、二丁拳銃を構えると、【曙光銃エルドリッジ】をぶっ放す。
 一体、二体、三体、四体、、、倒した敵の数を数えるのも面倒だ。

「……身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ。」

 源 鉄心(みなもと・てっしん)も姿を見せると、魔道銃にありったけの魔力を込めた。
 ここで、敵を叩いておかないと、そう感じたのだ。
 失われた体力も、イコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)の【命のうねり】が回復させる。
 鉄心は後ろ手で礼を言い、通路を滑る和輝の姿が消えるのを見計った後、目を見開いた。

「行くぜ!! 魔道銃プラス追加射撃!!!」

 込められた魔力の弾が複数に分裂すると、敵と言う敵を狙撃する。
 さらにその後ろに影の如く、付き添う銃弾があった。
 バシュッ!! バッシュッ!!! バシュッ!!
 和輝の倒し損ねたガードロボ達が、次々と倒れていく。

「待て! 待てぇ!!」

 和輝は頭を抱えて、その蜂の巣のような攻撃から逃れ、脇道にそれた。
 もしも、鉄心のコントロールが悪かったと思うと、恐ろしい。

『上!! 敵一体!!』

 休むまもなく、和輝の脳に声が聞こえる。
 アニス・パラス(あにす・ぱらす)の殺気看破が、精神感応により和輝に伝わったのだ。
 和輝は起き上がると、一気に飛んで天井部の換気口をぶち破る。

「見つけた……。陽炎蟲!!」

 敵はそこに隠れていた。
 暗闇で機晶キャノンが放たれ、和輝の頬が切れる。
 だが、蟲により、信じられないほど加速した和輝の跳躍が、ロボの視界からその姿を失わせた。
 同時に彼の膝が、ガードロボの顔面を破壊する。

「ふぅ……、敵はどれくらい減ったんだ?」

 和輝は額の汗を拭いながら天井部に手を付こうとすると、床からビリビリッと電気が流れてきた。

「な、何だぁ?」

 天井から首を覗かせる和輝。
 すると、そこには【稲妻の札】を使用した後の、アニスとティー・ティー(てぃー・てぃー)の姿があった。

「ちゅど〜ん! 落雷注意だよ〜♪」
「やりましたね。」

 顔を見合わせて喜ぶ二人。
 和輝はそんな二人を見ながら、声を出した。

「お前ら、ちょっとやりすぎだぞ。」

 和輝が注意すると、アニスは舌をペロリと出して、「和輝、次どうする?」と笑う。
 和むような場所ではないが、和輝の疲れが僅かに癒された。

「もうすぐ、コントロールセンター中枢よ。」

 その時、高根沢 理子(たかねざわ・りこ)こと、理子っちは声を上げ、中枢に近づいた事を伝える。



 ☆     ☆     ☆



「ようやく着いたぜぇ!!」

 その刹那、密かに隠れながらついてきていたゲブー・オブイン(げぶー・おぶいん)が、己の筋肉を誇るように立ち上がった。
 ピンク色のモヒカン。
 顔を見つけた理子は思わず、顔を引きつらせた。

「推定Aおっぱいちゃん。改め、分かってるぜBって事にしといてやるぜ。理子っちっぱい。略して、ワカBぱいちゃん!」
「ゲブー、生きていたの?」
「がはは、アルバイトに来ていたら、おっぱいちゃんを見つけたんでな。隠れてついてきたのさ!!」

 一人、ガーゴイルと言う悪役っぽい乗り物に乗り、拳聖パワーで翼竜たちを蹴散らしてきたゲブー。
 隠れれる訳がない。
 わかっていたが、理子は無視してきていたのだ。

「そ、その呼び方は止めなさい! ていうか、貴方も進歩のない男ね!!」
「いやいや、俺は進歩しているぜぇ。ほれ、このとおり。」

 ゲブーは指をクネクネと動かした。
 そのいやらしい動き。
 理子の背筋は、ゾクゾクとしてしまう。

「【武医同術】の人体知識で、リンパの流れを良くする揉みほぐしや触診を行うと、身体の調子が良くなるのだ。チチは俺に任せて先に行けぇ!」

 ゲブーは周りの仲間に対して、先に行くように諭す。
 だが、周りの視線は冷たかった。
 どうして、こんな重要な場所に、この男が現れたのだろうかと……。

「皆、耳を塞いで! 理子っちにセクハラしてくる人が居たらタイホです!!」

 第六感か!?
 予め、セクハラの準備をしていたティー・ティー(てぃー・てぃー)は、【咆哮】を発した。
 ヴォンッ!!!
 みんなは耳を手で覆うと、その威力で通路が震える。

「また、おおおっ!? 別おっぱいちゃんかぁぁぁ、あ、あ、あべしぃっ!!」

 ゲブーは、その威力で死んだ。

「みんな、行くわよ。」

 理子は屍を乗り越えるようにして、先へ進んでいく。
 気流コントロールセンターの中枢はもう目の前だ。
 ここで立ち止まっている暇はない。
 中枢の目の前には大きな扉があり、理子らはそれを開き、中へ入った後、扉を閉めた。

「ピクッ……。」

 だが、奴は動いていた。
 そう簡単には死なない。
 やられても、やられても、彼はパワーアップして蘇る。

「がはは、効かぬ、効かぬのだぁぁ!!」

 そして、立ち上がった。
 不死鳥の如く、蘇ったのだ。

『認証コードを答えよ』
「なぬッ!!?」

 しかし、彼は機晶ガードロボに囲まれていた。
 認証コードなど――もちろん知らない。