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【じゃじゃ馬代王】飛空艇の墓場掃除!?

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【じゃじゃ馬代王】飛空艇の墓場掃除!?

リアクション


第7章 エラーコード


 機晶石のある部屋は、黒い合金で造られていた。
 エネルギーは機晶石から生み出され、いったんその下に集められた後、全体へと送られる。
 その中心に、ぼんやりと赤く輝いているのは、信じられない程の大きさの機晶石であった。
 機晶姫の動力源である宝石と、原理は同じなのであろうが、規模が違う。
 何より、これほどの要塞を動かせる【機晶石】なのだから、当然であろう。

【気流コントロールセンター】

 タシガン空峡に存在する【それは】、そのような名称で呼ばれていた。
 元々は、タシガン空峡の気流を人工的にコントロールして、飛行艇や飛行船を安全に往来させるための施設。
 カチャ、カチャ、カチャ、カチャ……。
 暴走した今でも、センターは動き続ける。

『天候……OK 安全……OK 本日モ良好……。 ワタシハ、タシガンヲ守ル、気流コントロールセンター……。』

 飛行艇や飛行船を、安全に往来させるための施設が『魔の空域』と呼ばれるのは皮肉であろうか。



 ☆     ☆     ☆



「すごいわ……。」

 高根沢 理子(たかねざわ・りこ)は、その様子を見て言葉を漏らした。
 他の生徒らも、同じ感想を持ったに違いない。
 この部屋は、ガードロボらにとっても神聖なのか、敵の姿はなかった。

「じゃあ、破壊しますか?」

 ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)は、拳を握り締めてツカツカと歩いていく。

「動力源の機晶石を止めるには、何らかの手順が必要ですわ!」
「えーっ、めんどい。アンバー・コフィンに興味ないあたしには、これしかないのに……。」

 和泉 真奈(いずみ・まな)の声で、ミルディアは進むのを止めて、不服そうに言った。

「彼女の言うとおりよ。ここは、焦らずに解決策を探しましょう。縁さん、斎藤君。手伝って。」

 天達 優雨(あまたつ・ゆう)は、他の生徒らをなだめるように言うと、センターの解析を始める。
 斎藤 和馬(さいとう・かずま)は動力源や装置の状態を調べ、佐々良 縁(ささら・よすが)は物を運んだり、動かすのを頑張った。

「だって、私より優雨ちゃんの方が、がっつり解析とかできるから。」

 縁の言葉通り、優雨は真剣な表情で、真奈ら他の生徒とともに解析作業を進めていく。
 クリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)も、プログラムの修正が出来ないかコードを調べていった。
 出来れば、機能を回復させてやりたいと考えているようだ。

「…………?」

 コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)はハッキング中、エラーコードの一つに、奇妙なループコードを発見した。
 『ループ』
 即ち、繰り返しの行動である。

「これ、何だと思う?」

 コルセアはコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)に聞いてみた。
 コハクは静かにそれを眺めると、回答をさける。
 もしかしたら、とんでもない何かが隠れているかもしれないからだ。
 だが、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が後ろからやってきて、実行キーを押してしまう。

「迷ったときは実行だよ!」
「な、なんて事を!!?」

 コハクは、美羽の行動に言葉を荒くする。
 この行動でとんでもない事が起きたら……どうするんだと。
 ――しかし、何も起きない。

「なぁんだ、肩透かしもいいとこね。」

 美羽は腕を腰に当てながら笑ったが、空ではとんでもない事が起きていた。



 ☆     ☆     ☆



「見えた……。」
「何っ?」

 不自然な風の動きの中、空を眺めていた南臣 光一郎(みなみおみ・こういちろう)は立ち上がった。
 その先にあるものは何かと、オットー・ハーマン(おっとー・はーまん)も神の目を光らせる。
 確かに一度、見えた。
 可視、不可視と、その姿を点灯させる一台の小型飛空艇。
 次元の狭間に引っかかるが如く、ゆらめく影が……。

「やはり、俺様の感が当たったようじゃん!」

 【雲海の地図】を使用し、様々な情報を埋めていくと、その内側に見える円形に開き。
 光一郎は喜ぶと、オットーに命令を下す。

「鯉君! 【パラミタジャンボジェットハナアルキ】だ!!」
「おうよ!!」

 オットーは高揚していた。
 まさか、あの光一郎に、このような理知的な素顔が隠れていたとは……。

(今回ばかりはそれがしの負けか? 光一郎よ。)

 オットーは微かに笑みを浮かべると、大きく息を吸い込んだ。
 その背中には光一郎が乗る。

「行くぜ。鯉君!! 年上のおねいさんが待ってるぜぇ!!!」

 オットーの体内に溜まったガスが一気に噴出して、光一郎らは唸りをあげて飛空艇に迫っていく。
 もちろん、それを見つけたのは、光一郎らだけではない。
 皆、待っていたのだ――。



 ☆     ☆     ☆



「あったぁ!! 見つかったよぉ!!」

 ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)らも、現場に急行する。
 もちろん、キロス・コンモドゥス(きろす・こんもどぅす)
 瀬乃 和深(せの・かずみ)ら、アンバー・コフィンに魅入られた者たちだ。
 だが、そこには……。

「フハハハ、待っていたぞ。キロス! はぁはぁ……。」

 待っていた。
 本当にここまで待っていた。
 ドクター・ハデス(どくたー・はです)は、今か、今かと待っていたのだ。
 そして、ハデスが手を振り上げると、壊滅したと思われていたバンディッツの小隊が姿を現す。

「そろそろ、いい加減にして欲しいな。」

 キロスは怒っていた。
 この上、さらに戦闘をさせようなどと考える悪の親玉にだ。
 だが、ハデスだって、決して平坦な道を進んできたわけではない……。

「ククク、バンディッツよ! 我らオリュンポスと共に、琥珀の眠り姫を探そうではないか! 諸君も、キロスや理子に対抗できる戦力が欲しかろう? 手に入れた財宝は山分けという条件でいかがかな?」

 空域に辿り着いたハデスは【根回し】という、緻密な交渉戦術に出た。
 バンディッツの小隊は、『お主も悪よのう。』と笑いながら、彼の手を握る。
 交渉は成功であった。
 しかし、その後が苦難の道のりであった。

「あんまん・マフィンが見つからないよぉ!!?」
「な、何故だぁぁぁぁっ!!!」

 デメテール・テスモポリス(でめてーる・てすもぽりす)の【トレジャーセンス】では、他の契約者と同じ様にアンバー・コフィンが見つからなかったのだ。
 ハデスも必死に探したが見つからない。
 そして、彼は――途方に暮れた。
 ぼーっと、海を見て、釣りをして帰ろうかと思ったその時。

【奇跡が起こった。】

 何と!? 上空に突然、小型飛空艇が出現したのだ。
 まるで、牌を開いたら、全部揃っていたかのような強運。
 豪腕である。

「バンディッツよ! 待たせたな! あれが、アンバー・コフィンだ!」

 必死に飛んだ。
 誰よりも早く、キロスよりも早く辿り着かねばならない。
 登場シーンで、息が切れていたのはそのせいだ。
 だが、その甲斐があって、彼は真っ先にこの船に辿り着き、生徒らの前に立ち塞がった。

「ククク、キロスよ、よく来たな。どうだ、お前も我らオリュンポスに入らぬか? そうすれば、共に眠り姫に会わせてやろう! 今なら、おまけで天才科学者の白衣(レプリカ)を付けてもよいぞ。」

 以前より、彼の腕を買っていたハデスは勧誘を開始するが、当然の事ながらキロスはウンとは言わない。
 それどころか、キロスは拳を握り、骨をポキポキと鳴らし始めたではないか。

「やはり、一筋縄ではいかんか。出でよ、アルテミス!」
「了解しました、ハデス様。バンディッツの皆さんと共に、探索隊の妨害をします!」

 ハデスの暗黒面(ダークサイド)が牙を剥いた。
 アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)はバンディッツと共に、キロスらの目の前に整列する。

「やるのか貴様。オレは女でも容赦しないぞ。」

 すると、キロスはギロリとガンを飛ばした。
 思わずたじろぐ、アルテミス。
 実はアルテミスは密かに【キロスが気になっており】、戦いたくはなかったのだ。

「キ、キロスさん……、剣を引いて下さい! わ、私、貴方とは戦いたくないんですっ! こ、こんな気持ち初めてなので、どうしてなのか分からないのですが……。」

 戸惑うアルテミス。
 だが、待っていたのは、ハデスらだけではなかったのだ。



 ☆     ☆     ☆



「フフッ、じゃあ、私が叩きのめしてあげる。」
「誰だ!!?」

 ドクター・ハデス(どくたー・はです)が振り向いた、その方角にリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)はいた。

「待っていたわ。本当に……。」

 リカインは目を閉じた。
 彼女はアンバー・コフィンへのルートを切り開こうと、虎視眈々と狙っていた。
 だが、このクライマックスまで、待つことになるとは意外だったであろう。

「罪作りな、私への天罰かしら?」

 リカインは少し前、図らずも女王殺害犯に協力するという、とんでもない事をしでかしていた。
 勿論、未遂に終わったが、恐ろしい女(ひと)である。
 しかし、そんなリカインを、時の代王(高根沢 理子(たかねざわ・りこ))は咎めなかった。
 彼女は、理子っち=高根沢 理子(たかねざわ・りこ)だと知っており、その恩返しと罪滅ぼしを行っていたのだ。

「それにしても……。」

 リカインは【翼の靴】で飛翔すると、ハデスの前に立つ。

「貴方がボス? じゃあ、戦って……み……?」

 リカインは話している最中に、殺気を感じて後ろに飛びのいた。
 そこには剣を構えた、アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)の姿があった。

「ハデス様には、指一本触れさせません。」
「そう? 面白いわね。私も色々と考えたけど、何だかんだ言っても暴れたいだけなのね! 出番よ。二人とも!」

 シルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)と、またたび 明日風(またたび・あすか)が左右から飛び出した。
 すると、飛空艇上で乱戦となる。

「どんな呼び名だろうが空賊は全て敵、殲滅あるのみ!」

 シルフィスティは腕時計の加速装置のボタンを押すと、一気に加速してバンディッツらに飛び蹴りを食らわした。
 そして、そのまま、動きながら【怯懦のカーマイン】を撃ちまくる。
 自分の撃った弾に当たらないかが、心配になるくらいシルフィスティは動き続けた。

「この女!!」

 バンディッツらは、シルフィスティを捕まえようと手を伸ばすが、彼女は捕まらない。
 まるで、誘うようにシルフィスティは、敵を誘い込む。
 そう、誘っているのだ。
 トラップへと――。

「明日は明日の風が吹く、ってねぇ。」

 その先には、明日風が待っていた。
 釣り糸を濡らし、サイコキネシスで操って、蜘蛛の巣のように張り巡らせおく。
 そして、バンディッツらが集まってきた所で、スキルを使用するのだ。

【グレイシャルハザード!】

 明日風の言葉で、釣り糸に冷気が走り、敵に絡みつく。
 その間にも、温度はどんどんと下がっていくと、バンディッツらは身動き不能になってしまった。
 そして、明日風は、更なる必殺技を準備していた。
 コンタクトレンズを目に装着して、ポーズを取る。

「ま、待て、正気か!!?」

 バンディッツらは、明日風を止めようとした。
 だが、明日風は止まらない。
 まるで気流コントロールセンター跡の如く、暴走して叫んだのだ。

【またたビーム!】

 よかった……。
 たぶん、誰も聞いていないし、聞いていた連中は気絶した。
 明日風は静かに胸を撫ぜ下ろす。



 ☆     ☆     ☆



「えっ、こっちに来るつもり?」

 戦いには加わらず見物していた、リリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)にバンディッツが迫ってきた。

「クククッ、その細腕で俺たちが倒せるかぁッ!!」

 三人の賊は短剣を抜くと、一気に間合いを詰めてくる。
 そして、次々と切りかかった。
 リリアは反射的に、横へ飛んだが完全にかわしきれた訳ではない。
 スカートは膝下の辺りまで、ザックリと裂ける。

「いいわよね。もう我慢しなくとも! これは正当防衛だもの!」

 やる気満々で襲い掛かってきたからには、リリアは容赦しない。
 細身の騎士剣を抜くと、一歩、二歩と歩みを進めて、下に振り下ろした。
 ブシャアアアァァッ!
 裂けた。敵の腕が、裂けた後で音が聞こえた。

「なっ!?」
「ソニックブレード……音速の剣よ。」

 リリアはもう一本の剣を抜くと、二刀を構える。
 そして、透き通るような白い肌の下、笑みを浮かべて挑発を行った。

「あらあら、どうしたのん?」
「舐めやがって!」

 強そうには見えないリリアの挑発に、賊らは激高した。
 だが、その怒りを遮るかのように、フワリと浮き上がったエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)は彼女の前に降り立ち、飛龍の槍を鞭のように自由自在に操ると、彼らの鼻先に近づける。

「レディを襲うとは、さすがにそれは看過できないよ。」
「何だと! この若造がっ!」

 エースの赤い髪がなびく中、賊の一人は飛び掛った。
 刹那、槍の石突が、敵の鳩尾に突き刺さる。

「がはぁっ!」

 信じられないような激痛に悶えるように、敵は船の上をのた打ち回った。
 殺されなかっただけマシであるが、この痛みは想像を遥かに絶する。

「まだ、やる?」

 端正な顔立ちの裏に、野獣でも潜んでいるのだろうか?
 そう思えるほど、彼は疾く、強かった。

「な、何て事だ。」

 残った賊らが、じりじりと後ずさっていくと、トンと誰かにぶつかった。
 メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)である。

「うわあぁぁぁっ! なんでい、てめぇは!?」

 驚いた賊は短剣を振り回す。
 メシエはヒョイヒョイとかわすと、敵の短剣の先を指で掴んだ。

「地球人ってのは、気忙しいうえに騒々しくて困るね。」

 パリパリと指先から青白い電気が発生する。
 静電気で、メシエの髪の毛が逆立つと、電気の糸は彼らの短剣を伝わり、彼らの身体に絡みついた。

「サンダークラップ。」
「ぎええええぇぇええぇッ!!」

 敵全体を包み込むような電撃のショックで、賊らは床に沈んだ。
 メシエは乱れた髪を整えると、エースに声をかけた。

「戦いも終わりだな。エース……。」
「どうした、メシエ?」

 言葉が途中で止まり、床にしゃがみこんだメシエ。
 エースは何かと思い、彼の元に近づく。
 すると、メシエは一枚のコインを手にしていた。

「見てください、エース。シャンバラ古王国時代の金貨です。」
「えっ?」

 エースの目には、黒く薄汚れたコインにしか見えないが、メシエは興味深そうに周囲を探索している。
 リリアは向こうで、首飾りを見つけたようだ。

「かなり古ぼけているな。どうなんだろう? 価値的には?」

 エースはメシエに尋ねる。
 すると、メシエは表情を変えずに言った。

「こういった物に金銭的価値を求めてはいけませんよ。まったく……。」
「はいはい……(本当に懐古趣味だねぇ。)」

 エースは思わず、口に出そうになった言葉を飲み込むと、その場から移動する。



 ☆     ☆     ☆




 戦闘は圧倒的だった――。
 キロス率いる契約者らが、今更バンディッツに負けるはずもなく、ハデスは追い詰められていく。

「終わりだな。」
「ううぐ……。」

 キロスはハデスに伝えるが、デメテール・テスモポリス(でめてーる・てすもぽりす)は諦めてなかった。
 【疾風迅雷】を使用するとジャンプして、【ブラインドナイブス】で奇襲を行う。

「あんまん・マフィン! お菓子は誰にも渡さない!」
「甘い!」

 しかし、そこに立ち塞がったのが、リカインだった。
 彼女は【レゾナント・アームズ】で強化された声帯で、【咆哮】を喰らわす。

『ヴォンッ!!!』

 その威力足るや――バンディッツと共にハデスらを吹き飛ばすには充分すぎた。

「ち、ちくしょうぅぅッ! 覚えてろぉぉぉー! おおおおぉぉぉっ!」

 ハデスは捨て台詞と共に消えていき、静寂だけが残った。



 ☆     ☆     ☆



 そして、その時だった――。
 理子っちから、連絡があったのは。

「キロス、今から言うクラスの者をこちらによこして。」
「んっ? どんなクラスだ?」

 理子っちの話では、動力源の機晶石を止めることが出来るのは、次の各クラスらしい。
 アーティフィサー系。

  アーティフィサー
  テクノクラート
  トランスヒューマン
  スカイレイダー
  コマンダー

 以上、5つのクラスである。
 ちょうど、何人かの契約者らがそれに該当しており、該当者らは理子っちの元へ向かう。