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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 8

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 8

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第1章 幸せが妬ましいッ Story1

 生徒たちの情報収集により、人々を不幸にする呪術を使う魔性の正体が判明した。
 どうやら海に入りたくとも入れないニクシーの仕業らしい。
 水の魔性は海の近辺に現れ、海に入れる者を憎み、呪いをかけて不幸にしている。
 宿屋の前で生徒たちは、どのエリアを担当するべきか相談する。



「おねーちゃん、どのエリアに行ったほうがいいかな?」
「使い魔を扱える者が、一箇所に集中してはいけませんわ。わたくしたちは、海の方を担当しましょう。そのためにも、ニクシーの呪い対策をしておきませんとね」
 エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)は木の聖杯を掲げ、ビバーチェを召喚する。
「ビバーチェ、呪術除けの香水を用意しなさい」
「あまり仲間の方々を待たせるわけにはいかないから、3本くらいがいいかしらね」
「えぇ、頼みますわ」
 香水を生成するために、エリシアは透明な小瓶を床に並べた。
「ルルディちゃんも、香水を作って」
 ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)に召喚されたルルディは、静かに頷き白い花を咲かせる。
「ちょっとずつ出来ていくね」
 白く透き通った水滴が、瓶に落ちていく様子を眺める。
「俺たちは香水が出来るまで待機だな」
 ベンチにどっかりと座り、ラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)は香水の完成を待つ。
「陣、グラッジの可視化を頼みたいんだけどいい?オメガさんの中から祓っても、他の悪霊が憑こうと狙ってくるかもしれないの」
「確か、憑かれっぱなしやったりすると…、毒の進行が酷くなっていくんやったね。オレらは可視化に集中しなきゃいかんから、祓ったりするほうはルカルカさんたちに任せることになるんやけど…」
 オメガの命に関わることならと、七枷 陣(ななかせ・じん)は不可視の看破役を引き受けた。
「うん、おっけー♪綾瀬のほうは今回も毒の治療をお願いね」
「分かりましたわ」
「それと青色の髪の魔女…、オメガさんを発見したらすぐ解毒薬を飲ませてあげて」
「オメガ殿は俺にとって特別に大切な人なのだ。頼む力を貸してくれ」
 グラッジによって酷く変わり果てた魔女を、一刻も早く救ってやりたい。
 彼女を救ってくれと夏侯 淵(かこう・えん)も綾瀬に頼む。
「オメガ様とおっしゃるんですね…。成程、皆様に愛されているようで」
 魔女を懸命に守ろうとする様子を見て、中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)は彼らのチームとして参加する。
「とはいえ発見する前に、魔性と対峙することになるでしょう。リトルフロイラインはマヌグスエクソシストの形態にしておきますわ」
「そうね、浜辺に着いたらすぐ召喚しよう。皆、今は1秒でも時間が惜しいわ、急ぐわよ!」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)はハイリヒ・バイベルを抱え、チームメンバーと共に海の方へ駆ける。



「何人か海側を担当するみたいだし、私は屋外を担当しようかな」
「五月葉。建物内の被害者を発見次第、そちらに連絡するがいいか?」
 予め了解をとっておこうと、佐野 和輝(さの・かずき)五月葉 終夏(さつきば・おりが)に声をかけた。
「そっちにクローリスを呼び出せる人はいなさそうだね。分かった、テレパシーで場所を教えてくれたら行くよ」
「では、何かあれば随時こちらから連絡する。…アニス、リオン」
「はーい!お仕事、お仕事〜」
 宿の前で待機していたアニス・パラス(あにす・ぱらす)は、禁書 『ダンタリオンの書』(きしょ・だんたりおんのしょ)と一緒に箒に乗った。
「和輝、私たち3人だけか?」
「いや…、さすがにリオンだけに負担をかけるわけにはな。…高峰。俺たちと共に、屋内エリアでグラッジの対処を頼めるか?」
「は…はい!?…私ですか?が…、頑張ります…っ」
 突然声をかけられて驚いた拍子に、高峰 結和(たかみね・ゆうわ)はやや声を裏返させてしまう。
「北都、私たちはどうしましょうか」
「うーん…、屋外エリアにしない?祓う人が少ないと困ると思うから」
「そうですね」
「あ、ソーマが来た。こっちだよ!」
 ソーマ・アルジェント(そーま・あるじぇんと)の姿を発見し、片手を大きく振る。
「超特急で来たぞ!ご褒美の血を…」
「そんな場合じゃないから」
「言ってみただけだって」
「…冗談はともかく、アークソウルの使い方を教えるから、ちゃんと覚えてね。宝石はそのペンダントに入れておかないと使えないから、銀色の蓋みたいなのを開けて」
「これか?」
「うん。で…それを入れて蓋を閉めて」
「閉めたぞ」
「焦りや怒りとかの感情のまま使うと、反応が弱くなったりするから気をつけてね。魔性とかが憑依していない生物に反応があるけど、憑依されていたら反応がないんだ」
 清泉 北都(いずみ・ほくと)はソーマに宝石とペンダントの扱い方や効力について説明する。
「闇黒属性に抵抗力も持つバリアーとかで、仲間を守ったりすることも出来るけど。石化は自分だけだから、すぐ近くにいる人をかばう感じで使うといいかも」
「へー、なるほどな」
「不可視の相手を見ることが出来るのはエアロソウル。ソーマが使っている宝石は、気配は分かるけど目で見えるわけじゃないんだ。…ざっくり説明したけど、理解出来た?」
「あぁ、なんとなくな」
 現場で聞き返さえないように、説明してもらったことをメモする。
「ソーマに探知役してもらうとして…、後は腐敗毒の対処かな。海側の前まで運ぶのも、誘導するのも大変そうだし…。クリストファーさん、さっきの救護エリアにいてくれると助かるんだけど」
「いいよ。湧き水場だったかな?」
「うん、そうだね。毒に侵食された人を発見したら、連れて行くね」
「了解、俺たちはそこで待機しているよ」
 クリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)は北都たちと一旦別れ、パピルス草が茂る湧き水場へ向かった。
「判ったわ。つまりニクシーは不幸にして、グラッジから皆を救おうとしてたのね?ニクシーは放置してグラッジを祓えば良いのよね?」
「真宵、聞いていましたか?ニクシーは人々を不幸にしているのですよ」
 日堂 真宵(にちどう・まよい)の適当すぎる予想に、ベリート・エロヒム・ザ・テスタメント(べりーとえろひむ・ざてすためんと)はすかさずつっこみを入れる。
「だからグラッジを祓えば問題ないんでしょ?」
「えー…っと。もう一度説明したほうが…」
「ねぇ、アイデア術を使うメンツが行っちゃったわよ?」
「はっ!?置いていかないでほしいのですーー!」
 パートナーが纏めた内容を正そうとしている間に、他の者たちはすでに海へ行ってしまったようだ。
 一刻も早く合流しようと、テスタメントはスペルブックを抱えて走ってた。