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封印された機晶姫と暴走する機晶石

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封印された機晶姫と暴走する機晶石

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■幕間:街の守人

 街を目指し地を駆ける獣の姿を見つめながらソーマ・アルジェント(そーま・あるじぇんと)は言う。
「それ踏むと危ないぜ」
 言葉が通じるはずもなく、獣は彼の見ている場所に踏み入った。
 瞬間、獣が宙に吹き飛んだ。トラップが仕掛けられていたのである。
 その様子を眺めながら御凪 真人(みなぎ・まこと)が彼の隣に歩み寄った。
「獣相手には効果絶大ですね」
「ああ、まったくだな」
 彼らの頭上を飛んでいく鳥型の機晶姫を見る。
 ソーマは氷の嵐を起こし、鳥たちの翼を凍らせ地へ落とした。
 同じように御凪は稲妻を奔らせ空の敵に対処する。
「上空の敵は俺たちが対応します。これで道なりにやってきた獣を足止めしますから、トーマとアイシスは地上の敵をお願いしますね」
 言うと呪文を呟き、鋼鉄の軍勢を召喚した。
 彼らは次々と数を増していく獣たちを押し止める壁となった。
「へへ、了解。指示はにいちゃんに任せるよ!」
「私は遠距離からの狙撃でトーマの取りこぼしを倒せば良いのね?」
 自分たちの仕事を確認するトーマ・サイオン(とーま・さいおん)アイシス・ウォーベック(あいしす・うぉーべっく)に彼は頷いて見せた。そして疑問が思い浮かんだのか、アイシスが言う。
「道から外れた敵はどうするのかしら?」
「そちらは佐野君たちが対処してくれています。さっきから定時報告が送られてきてますから、特に問題はないようですよ」
 告げる先、トーマが颯爽と駆け出し獣たちと交戦していた。
 咬みつきを躱しざまに剣で切り捨てていく。少し距離のある相手には銃を使ったりとその戦いぶりに不安は見えない。
「それなら安心ね」
 アイシスは言うと銃を獣たちに向ける。
 放たれたのは稲妻であった。轟音が鳴り響く。
 雷に触れた獣は感電し、あるいはその身を焦がしてその場に倒れ伏す。
「それにしても生身と機械の部分があるだなんて、ただの魔物というより誰かに作られたって感じよね。まったく趣味が悪いとしか言えないわ」
「それは俺も感じていましたよ……全てが片付けば真相も分かるでしょう」

                                   ■

 御凪たちが遺跡と街を結ぶ道で獣を退治していた頃、道から外れた場所で同様に獣を退治している者たちがいた。彼女たちは獣を見つけては一体ずつ確実に処理していく。
「さて、予想通りというべきか面倒事が発生したな」
 彼女、佐野 和輝(さの・かずき)は言うと後ろをついて歩くアニス・パラス(あにす・ぱらす)の様子を覗った。どことなく落ち着かない様子で遺跡の方を何度か振り向いている。
「気になるのか?」
「うん。近づくの怖くて嫌なんだけど……それだけじゃなくて――」
 だがその先の言葉はない。本人にもどう表現すればいいのか分からないのだろう。それは彼女の周りでわさわさと葉を揺らしている野菜たちも同様のようだ。
「キュイアアアアッ!!」
 などと叫び声をあげている。
 何が言いたいのかは当然ながら分かるはずもない。
「それにしても敵の数が少ないわ」
 そう告げたのは魔鎧として佐野を守っているスノー・クライム(すのー・くらいむ)だ。
「今回の異常でかなりの人数が駆り出されたようだから、ほとんど討伐されているのかもしれないな。御凪たちの方にはそこそこいるかもしれないが……」
 佐野の言葉にスノーはどこか安心したような吐息をもらした。
 彼女は後に続くルナ・クリスタリア(るな・くりすたりあ)に話しかける。
「ルナは何か思い出さないの?」
「遺跡ですか〜……前に別の場所で似たようなのを見た気がするんですけどねぇ〜」
 賢狼の頭の上に座ったままルナは思い出そうと身体を揺らす。
 しばらく歩くと獣の群れが見えてきた。
「考えるのは後だな。アニス頼むぞ」
「うん。任せて、和輝」
 和輝が獣たちへ向かい駆け出す。
 接敵するや否や回し蹴りを獣の一匹に入れた。こちらを警戒した獣たちに銃弾を放つ。攻防を続け、敵を一か所に集めるとアニスが吹雪を巻き起こし敵の足を止めた。
「さあ、皆さん! 懲らしめてやりなさい!!……ですぅ〜♪」
 ルナの声に呼応してペットたちが一斉に獣たちへ襲い掛かった。
 野菜たちも同様に向かっていく。
 乱戦の様相を呈している光景を見ながら佐野は言った。
「こちらは特に問題なし。このまま反対側の魔物たちを退治して回る」
 定時報告を御凪へ送る。
 まだ戦いは終わりそうになかった。